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ビジネス書だけじゃない!PHP研究所のユニークな取り組み

 経営の神様・松下幸之助が晩年に創設したPHP研究所は、2010年にボーカロイド楽曲を小説化した書籍を発刊して、お堅いイメージとのギャップに世間を驚かせた。
 初作品となった『悪ノ娘』シリーズをはじめとする悪ノP氏のノベルシリーズは、累計100万部を超える大ヒットとなり、それを見た他社は追従する形となった。
 「ボーカロイド楽曲の小説化・漫画化」という新たなジャンルに続きPHP研究所はその後もフリーゲームを題材にするなどユニークな施策を打ち出した。
 そんな時代の一歩先を走ってきたPHP研究所で、PHP-COMIXを担当する編集長の伊丹祐喜さんと編集部の小野くるみさんにこの4年間の取組みを聞いた。
PHP研究所が発刊しているエンターテイメント作品

PHP研究所が発刊しているエンターテイメント作品

シリーズ累計100万部を超える大ヒットとなった『悪ノ娘』

シリーズ累計100万部を超える大ヒットとなった『悪ノ娘』


-はじめにボーカロイドやフリーゲームに目を付けたきっかけをお聞かせ下さい。
 以前からお付き合いのあった編集プロダクションのスタジオハードさん(スタジオ・ハードデラックス株式会社)とお話しをしていた際
「初音ミクなどのボーカロイドが今キテいる。これらボーカロイド楽曲を小説化してみてはどうか?」
 という企画のご提案を受けたのが始まりです。

-取り組むにあたって不安だった事はありましたか?
 幸いな事にスタジオハードさんはボーカロイド初期の頃からボーカロイド関連の出版に携わっていらしたので、割とスムーズに事が運びました。
 ただ、社内に説明するのには結構苦労しました。
 まずボーカロイドとは何なのかから説明し、ボーカロイド楽曲の小説化について説明するのですが
「え?ボーカロイドキャラクターの小説化じゃないの?」「ボーカロイド楽曲の小説化???」
 という反応が返ってきました。
 そこはきっちり説明し「楽曲には世界観がありそれを基に小説を作る」という事を理解してもらいました。

-フリーゲームの方はどのような経緯で企画が立ち上がったのでしょうか?
 こちらは編集部内から企画があがってきました。
 ボーカロイドのネタ探しにニコニコ動画を見ていたのですが、ゲーム実況動画の盛り上がりが目につきました。
 中でもフリーゲーム実況を楽しんでいるユーザーが非常に多い事に気付き、そこから人気のフリーゲーム『青鬼』などの小説化企画が進行していきました。
フリーゲームを小説化、10万部を超えるヒットとなった『青鬼』

フリーゲームを小説化、10万部を超えるヒットとなった『青鬼』


-ボーカロイドやフリーゲームを小説化・漫画化するにあたって、執筆者はどのように決まるのでしょうか?
 ボーカロイドもフリーゲームも基本的には原作者さんの意向が第一です。
 ボーカロイド小説の場合は特に楽曲を製作したボカロPさん自ら手を上げてくださる事が多いですね。
 ただ小説の執筆経験が無い方がほとんどですので小説を仕上げるのは大変です。そこはスタジオハードさんが頑張ってくださいました。
 本当にスタジオハードさんには助けられています。

-絵の方はどのように?
 これも基本的には原作者さんの意向を優先させます。
 ボーカロイド楽曲はPVとセットの場合が多いので、原曲のPVイラストを手掛けた絵師さんにお願いする事が多いです。
 ユーザーもそれを望んでいますので、そこは外さないように気をつけています。
 
 フリーゲームの方は、きちんとした絵がはじめから付いていないものもありますので、ゲームのコミカライズやノベライズ版のイラスト制作経験のある方にお願いする場合が多いです。
 『青鬼』はホラーゲームでしたので、ホラーゲームの金字塔である『ひぐらしのなく頃に』のコミカライズを手掛けた「鈴羅木かりん」さんにお願いすべく突撃しました!
大ヒット『悪ノ娘』シリーズを漫画化

大ヒット『悪ノ娘』シリーズを漫画化


-ボカロPである囚人さんが執筆した『FINALφFICTION 喜歌劇』では大変豪華なキャストでドラマCDを作られていますが、こちらはどのように作られたのでしょうか?
 このキャストは囚人Pさんの妥協のないキャスティングによるものです。かなり豪華になりましたが、それだけにキャラクターの声にマッチした良い作品になりました。
 ドラマCDを聞いてから小説を読むと、頭の中でその声で再生されるのでより楽しんでいただけます。
豪華声優陣で送るドラマCD付ボカロ小説『FINAL FICTION喜歌劇』

豪華声優陣で送るドラマCD付ボカロ小説『FINAL FICTION喜歌劇』


-2010年からエンターテイメントコンテンツの制作に取り組んできて、この4年間の手ごたえはどうでしょうか?
 ユーザーからも好評で発売前に増刷が決まった事もありました。大変ありがたいです。
 
 それと同時に数値(部数)の期待も上がり、良いプレッシャーになっています。
 ボーカロイド以外にもビジネス書の漫画化やネットで話題になった話の漫画化も行っていますが、こちらもおおむね好評をいただいています。

-ユーザーはどのような層が多いのでしょうか?
 ビジネス書を漫画化したものや、元素記号の擬人化などは元々20代から40代くらいの男性を想定し、狙い通りの層にウケていました。
 さらに、元素記号を擬人化した書籍は学習参考書として若年層からも支持をいただきました。
 ボーカロイド小説に関しても購買層は中高生がメインで、当初想定していた年齢層よりも若いなといった印象です。
学習参考書として若年層にもウケた「元素周期-萌えて覚える化学の基本」

学習参考書として若年層にもウケた「元素周期-萌えて覚える化学の基本」


-社内から「若年層をもっと開拓しないといけない」というようなミッションはあったのでしょうか?
 実はそれは全くありませんでした。始めは元素記号の擬人化などから入ったので、若年層というより当時流行していた「萌え」にフォーカスを当てていました。
 発刊してみたら意外にも若年層から支持を受けたといった形です。

-他社の追従はどのように感じていらっしゃいますか?
 盛り上がりを感じる反面、市場のパイはそれほど大きく変わっていないと感じています。
 そこへ供給数が増えるわけですので、競争は激しくなっています。
 うちは人数が多い方ではないので少数精鋭にならざるをえない。ゲリラ戦ですね。

-市場のパイがあまり大きくなっていないというのは若年層中心と言うのが関係しているのでしょうか?
 そうですね。社会人と違って自由に使えるお金があまり多くなく、お小遣いをやりくりして買っていただいていると思います。
 年末年始に良く売れたりすると、お年玉で買ってくれたんだなと大変ありがたく思います。

-これからの取り組みについてお聞かせ下さい
 まずはユーザーへ情報をしっかり伝える事が大切だと考えています。
 現在メールマガジンの配信や公式Twitterを開設していますので、そこから徐々に発信できればと思います。
 また、今年からニコニコ動画に公式チャンネル『PHP-COMIXチャンネル』を開設しました。
 こちらでは著者さんのインタビューなどを盛り込んでいきたいと思います。これから充実させていく予定ですのでご期待下さい。
 リアルイベントの方もサイン会などでユーザーとの交流を深めていければと思っています。
 書籍に関しても新たな面白ジャンルを開拓できるようがんばります。

-最後に読者へのメッセージをお願いします
 今ボーカロイドを楽しんでいる方はもちろん、以前聴いていたけど最近聴かなくなってしまった方、ちょっと興味がわいた方にも一度ボーカロイド小説に触れてみていただけるとありがたいです。
 また今後はお堅いビジネスの話題をエンターテイメント風味で気軽に楽しんでいただけるような作品も創っていきたいと思っています。

-本日はありがとうございました


関連リンク:

[PHP研究所]
http://www.php.co.jp/
[PHP-COMIX 公式HP]
http://www.php.co.jp/comix/
[PHP-COMIX 公式Twitter]
https://twitter.com/PHPcomix
[ニコニコ動画「PHP-COMIXチャンネル」]
http://ch.nicovideo.jp/phpcomix

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