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上条淳士展「1983」 『TO-Y』『SEX』などで知られるマンガ家、上條淳士氏。彼の展覧会が開かれると知り足を運んでみた。会場では、生原稿ならではの息づかいや躍動感といった、原画の展示ならではの絵そのものの魅力にふれることができた。

会場は地下鉄九段下駅近くにある「成山画廊」。ビルの一角にある画廊に入ると、正面の壁に展示された上條氏の絵が目に飛び込んでくる。
上条淳士展「1983」 「画廊に並ぶマンガ家の絵」とは、一体どんなものだろうか。行くまでは想像しにくかったが、真っ白な壁にモノトーンの絵がよく映え、画廊そのものが一つの世界を形成していた。昔からの生粋のファンなら見逃せない、『TO-Y』『SEX』の原画を中心に、10作品以上が並んでいた。画廊には、上條氏も時間の許す限り滞在しており、訪れたファンの方々と気軽に言葉を交していた。今回はファンイベントなどは予定されていないものの、逆にじっくりと絵の魅力を味わうことができた。
上条淳士展「1983」 マンガファンの中には、ストーリーから絵だけを取り出し、画廊でみることに意味があるのか?……と思われる人がいるかもしれない。だが少なくともこの「1983」に関しては、答えは確実に「YES」だ。直に絵を見るからこそ、そこから感じ取れる何かがある。その何かは、足を運んだ者だけがわかるのだ。

実際に見て思ったのは、印刷すると隠れてしまう、繊細な線の動き、スクリーントーンはどう貼られ、ベタはどう塗られているかが、演劇の舞台裏をのぞくようにわかる。マンガ雑誌1ページ大の原画の第一印象は「モノトーンが美しい、整った絵」。さらに近づいて見てみると、黒いペンで描かれた線の動きはなめらかで、ホワイトやベタははみ出すことなく塗られる緻密さがあった。絵柄と貼りつける配置を考え抜かれたスクリーントーンの使い方にも圧倒された。普段、読者の立場からは知り得ることのない原稿の上の作者の息吹は、「こう描かれていたのか」と感動をもたらすものだった。もちろん実際にマンガを描いている人やアート分野の人は、より得るものが多いのではないだろうか。

上条淳士展「1983」 会場は画廊ということもあり、実際に展示されている作品の販売も行っていた。お邪魔した14日(土)には、展示されている作品のうちいくつかはすでに売却済み。この展示や上條氏の作品に対する期待度の高さが伺える。


今回の展示会は12月下旬に発売予定の画集「1983」(飛鳥新社)を記念してのものだ。デビュー30周年にして初めての画集になる。

上条淳士展「1983」 今でこそ、マンガのキャラクターが広告に使われるのは一般的になっている。だが、マンガ家が広告にイラストを提供するという道が開けたのは、実は1980年代だったのだ。マンガ家、江口寿史氏が先鞭を着け、上條氏もそれに続いた。また上條氏の場合『TO-Y』という若者のバンドをテーマにした作品を描いていたことから、さまざまなミュージシャンのCDジャケットデザインも手がけた。今回の画集は、これら上條氏の活躍をまとめて目にすることができる絶好のチャンスでもある。

展覧会「1983」開催について、上條氏はこう話してくれた。

「気がつけばデビューして30周年。これまで何もやっていなかったし、たまには何かやってもいいかなと思うようになり、懇意にしていた編集者の方に相談して、年内に画集を出そうということに。そんな時、画廊の方に声をかけていただき、『1983』の開催になりました。会場が画廊ということもあり、絵を見ることに集中できる展示にしています。江口寿史さんとの活動を通じて知り合ったギャラリーの方々に原画を見ていただくと、意外に感動してもらえたので、人にお見せしてもいいのかな、と思いました」

「画集も夏ごろから準備して、年内の出版を目指したのでスケジュールはかなりタイトでした。ただこれまでの絵をズラッと並べるだけではなく、マンガ・広告・ジャケットデザインなどこれまでの作品から、映画を編集するような気持ちで掲載するものを選びました。画集として、一冊の本として、きっと楽しんでもらえると思います」(上條氏)


画集には、マンガのコマや寄せられたコメントを挟み込む、といった工夫が凝らされ、ただ眺めるだけのカタログではない、上條氏のこれまでが詰まった記念すべき1冊に仕上がっている。

最終日の21日には、画集の先行販売とサイン会も予定されている。いち早く画集を目にしたい方は、足を運んでみてはどうだろうか。
※サイン会の詳細についての問い合わせ先:成山画廊(03-3264-4871)


上條淳士展「1983」概要
会場:成山画廊(東京都千代田区九段南2-2-8 松岡九段ビル205号室)
会期:2013年12月9日(月)〜21日(土)※水、日、祝祭日は休廊
開場時間:13:00から19:00

[マンガナイト・bookish]
上條淳士作品

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