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「マルドゥック・スクランブル」の原画から見る魅力

GoFaの担当者もこの作品の世界に魅了された人のひとり。展示する原画を選ぶとき自分だけの意見にならないように配慮しようと、インターネットを通じてファンから展示してほしい原画を募った。会場には、寄せられた声を元に選んだ原画がいくつか並んでいた。

展示してほしい原画を募る原画展は珍しい(写真下)

展示してほしい原画を募る原画展は珍しい(写真下)


この巧みな絵の表現は、作品によって使い分けられているようにも思える。会場には、大今氏がコミカライズを手がけた『マルドゥック・スクランブル』の原画の一部も展示されていた。

大今氏はマンガ表現のひとつとして、連続または近いコマに微妙な変化をつけたキャラクターの顔を並べることで、キャラクターの感情を表現することが多い。『マルドゥック・スクランブル』というSF小説を原作とし、アクションシーンが多い作品ではこの表現は少なかった。学校という日常を舞台とする『聲の形』では、この表現がより多くのシーンで使われ、それぞれのキャラクターがシーンごとにどんなことを考えているのか読者に考えさせようとしているように思える。

「マルドゥック・スクランブル」はアクションシーンも魅力のひとつ

「マルドゥック・スクランブル」はアクションシーンも魅力のひとつ


「マルドゥック・スクランブル」の原画。口元の角度や目の大きさ、顔の角度を少し変えるだけで、同じキャラクターの感情や考えが変わったのでは?と思わせる。この手法は「聲の形」にも引き継がれている

「マルドゥック・スクランブル」の原画。口元の角度や目の大きさ、顔の角度を少し変えるだけで、同じキャラクターの感情や考えが変わったのでは?と思わせる。この手法は「聲の形」にも引き継がれている


日常を描いた『聲の形』では、リアリティを出すための工夫が多かった。キャラクターらが訪れる場所を撮影した写真を元に、背景などを描いているのもそのひとつ。教室などもきちんとパースをとって描かれている。

実際の背景と写真を見比べてみるのもおもしろい

実際の背景と写真を見比べてみるのもおもしろい


細かくパースがとられた設定画。大今氏は、アシスタントの方の働きも見てほしいと、この設定画の展示を提案されたという

細かくパースがとられた設定画。大今氏は、アシスタントの方の働きも見てほしいと、この設定画の展示を提案されたという


「マルドゥック・スクランブル」のカラーイラスト。グラデーションなどを多用し、デジタルで色づけしたとは思えないほど自然に見えた

「マルドゥック・スクランブル」のカラーイラスト。グラデーションなどを多用し、デジタルで色づけしたとは思えないほど自然に見えた


大今氏はデジタル機器で色づけするため、カラー原画は少ない。数少ないアナログで彩色した原画の展示も

大今氏はデジタル機器で色づけするため、カラー原画は少ない。数少ないアナログで彩色した原画の展示も


マンガは書く道具と紙(今ならデジタル機器か)さえあれば、いかようにも顔を作ったり表情をアップにしたり、作者が自由に動かすことができる。『聲の形』では、あえてキャラクターの顔の上にバツ印をのせたり、振り向いたキャラクターの顔をアップにしたり、この自由さを十二分に活用していた。キャラクターの表情だけでなく、セリフ部分も同様で、視点を西宮硝子に置いたエピソードでは、セリフ部分の文字の右側をあえて削り「右耳の聞こえがよくない」という西宮の状態を絵と文字だけで見事に表現した。改めて、マンガという表現手法の可能性を実感させられる展示である。


▼展覧会情報
GoFaの「―聲の形―完結記念展 大今良時原画展」特設ページ
http://www.gofa.co.jp/art/150207_koe/index.shtml

■ 会期 2015年2月7日(土)~2015年3月8日(日)
※毎週月曜日 定休(祝日除く)
1st stage:2月7日~2月22日 2nd stage:2月24日~3月8日
■ 営業時間 12:00~18:00
■ 会場 GoFa 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル2F
表参道駅(銀座線・千代田線・半蔵門線) B2出口より徒歩3分
■ 主催 GoFa(Gallery of Fantastic art)
■ 協賛 株式会社MAT
■ 協力 株式会社講談社、全日本ろうあ連盟、岐阜県大垣市
■ 企画制作 MATエンタープライズ
■ 入場料 500円(コーヒーチケット付)

[取材・文=bookish(マンガナイト)]
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