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児童福祉司 一貫田逸子

児童福祉司 一貫田逸子

社会現象となっている感もある「児童福祉司 一貫田逸子」。

児童虐待を扱う同タイトルは、原作:穂実(おみ)あゆこ、作画:さかたのり子で、あおば出版より2006年に刊行されたが、同社の倒産により絶版。その後電子コミック配信サイト大手の『まんが王国』で電子コミックとして配信再開、2014年11月からの約3か月で単行本にして約15万冊相当も販売され、子供を持つ主婦を中心に大きな反響を呼んでいる。

まんが王国のレビュー欄「みんなのまんがレポ」には、主婦を中心にしたユーザーから「虐待の実態が分かった」「たくさんの方々の目に触れてほしい」「虐待家族が孤立しないような環境を」等切実なコメントが寄せられる。

なぜ今電子コミックとして配信されブームとなっているのか、原作の穂実あゆこ先生、作画のさかたのり子先生に話をうかがった。(M:Manga Style、お:穂実あゆこ先生、さ:さかたのり子先生)

M:一貫田逸子制作のきっかけを教えてください。

さ:私がアシスタントをしていた森園みるく先生と穂実先生が同級生で、私も穂実先生とは仲良くさせていただいていました。ちょうど2006年ころ紙媒体が衰退して中々新規の連載を始めるのも難しくなっていくところで、そんな状況だからこそ何か2人で新しいものを発表したいねと話す中で出て来ました。ふたりでやれば何とかなると思っていましたね。

お:私としては、ちょっと社会派みたいなものをやりたいと考えていて、色々興味のあるものを見渡したときに、以前から児童虐待が気になっていたので取り上げました。あまり虐待自体を扱う作品というのは多くなかったので、虐待を扱いつつ、それでいて単なる取材報告ではない物語を作りたいと考えました。

M:原作・作画とありますが、それぞれの役割分担は?

お:まんが家2人なので普通の原作・作画とは違いますね。普通だと原作の人が話の流れを書いて、それを渡すだけで、絵を描く方がそれを画面にしていくみたいなことをやっていきます。けれども、私とさかたさんの場合は、打ち合わせから一緒にやっていました。ですからラフを描く前に、だいたいこういうものを描きたいんだけどというのをさかたさんと相談して、そのためにどうすればいいか、この虐待に対してはどう考えればいいかなどを二人でやっていって、話の枠組みを私が考えて、横に必ずさかたさんにいてもらって、その場で場面場面の絵を入れていってもらうということをやっていました。

さ:作曲家と作詞家が同時並行で曲を作っているようなイメージだと思います。セリフや人の配置とかもその場で話しあいながらやりました。穂実先生も漫画家ですので文章だけで脚本を作れというのも酷な話なので、一応これこれこんな感じと言われたことを私が絵にしている間に、次の展開を穂実先生が一生けん命考えるっていうことを(笑)やっていました。まんが家二人ならではのライブな(笑)作り方でしたね。

M:すごいですね。

お:さかたさんには一番大変なところを任せてしまっていました…。

さ:私は体力面担当でした(笑)。

M:一貫田逸子というキャラはいつどのように生まれたのでしょうか。

お:主人公には、ちゃんと客観的に見る視線も持たせたいと思っていました。完全にどっぷり入りすぎてもいけないし、本人が虐待されていたとなると重すぎるので、もっと仕事として見られる人、友達のことで傷を負っているくらいのそういう立ち位置の人が必要でした。そうして「小夜ちゃんのパン」という最初の話ができました。

さ:穂実先生が最初に「小夜ちゃんのパン」ってタイトルを言ったんですよ。私はその段階で、「あ、できる」って思ったんですよ。小夜ちゃんのパンというだけで、パンを持って必死に走っている女の子が目に浮かんで、「あ、いけるな」と思っちゃいました。

お:話全体が重いので、本人自体は少女性のある明るいキャラにしたかったです。さかたさんに描いてもらうことでさらにキャラが明るくなると思っていました。

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M:具体的なテーマ設定はどのように決められていたのでしょうか。

さ:虐待というテーマは決まったのですが、その虐待のテーマの中にある両親とか子供のテーマを見つけることが結構大変でしたね。

お:児童相談所に取材に行ったり、学術書を読みあさったりしていました。

M:まんが王国の「みんなのまんがレポ」何百個ものレポが寄せられています。電子で再度読まれている点については如何ですか。

さ:中には実際に体験された人のコメントがあって、そういうのを見ると少し申し訳なくなりますね。どうしても避けたいという方がおられるのも分かりますし、すまない気持ちもあります。ただ、連載開始の頃も、読者の方の反応がよかったことに驚きました。読み手の方がすごかった話なんだと思います。「こんなもの載せて」というクレームはいくらでも言えたはずなんですよ。でも、こういう問題になると、すくなくとも日本の女性はこれだけ真面目に考えてくれているんだなっていうことがすごくよく分かったっていうこともあって、じゃあ、続けてもいいのかなとなりました。多少インパクトがある絵でも、一貫田が何と戦っているのかが目に見えないと、話にならないと思っていましたので、絵はギリギリのラインで描くという方針を変えるつもりはありませんでした。

お:当時は本当に必死になって描きました。読者からの反応・反響を色々聞いて答えを見つけたいなと思っていました。それなのに出版社があんなことになってしまい(編集部注:出版元のあおば出版は2007年に倒産。一貫田逸子の単行本も絶版)、一番聞きたかった結果が聞けていなかったので、最近また皆さんに見ていただけるのは本当にありがたいですね。タブレットで見やすくなってきたりして、子育て中の主婦の方なんかも読みやすくなったのではないかと思います。

さ:一貫田を描いている時点でも、私と穂実先生は現実に負けていたんですよ。事件を聞くたびに、「そんな虐待の方法をよくも思いつくものだな」と改めて虐待の恐ろしさを感じていました。完全に後追いまんがになってしまっていて。読者のみなさんも、「ニュース聞くたびに虐待っていつかはなくなるのかなと思っていたけどどうやらそうでもないぞ」と思っていたんじゃないでしょうか。それでネットのほうで見つけて、(一貫田を)読んでくださったのかなと思っています。だから、問題意識が受け手側にあったと思います。

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M:読者の方に一言お願いします。

お:一生懸命読んでくださっているなと思います。本当にこんな多くの方に読んでいただき、熱いメッセージをいただけるとは思わずびっくりしています。ただただありがたいです。

さ:本当にありがとうございます。受け取ってくださる皆様がいてこその作品です。まだ日本で真剣に受け取ってくださる方がいるということで、安心できる部分なのだと思います。これで何か運動を起こそうとかそういうのではないですが、受け取ってくださる人がこれだけいるだけで、救われている人がいるのではないかなと思っています。本当に読者の方にはありがとうございますという言葉しかありません。

--ありがとうございました。

まんが王国担当者玉置氏は、電子での売れ行きに関して次のように述べる。

出版社が倒産し絶版となっていた作品が3カ月15万部売れるのは異例中の異例です。虐待という社会問題が注目されているなか、それを分かりやすく伝えるものとしてひろく読まれたのではないでしょうか。是非多くの方に読んで頂きたいです。

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児童福祉司一貫田逸子はまんが王国にて配信中(無料試し読みあり)。

http://sps.k-manga.jp/top.php?d=dl&m=dl000&book_id=6191&b=fv

まんが王国で配信中!

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(取材・記事:hirota)


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