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2014年10月に「月刊コロコロコミック」の増刊号として発売された「コロコロアニキ」第一号。”小学生お断り!コロコロ卒業生に贈る大の大人のコロコロコミック”をテーマに発刊されたという本誌には『爆走兄弟レッツ&ゴー!! 』(こしたてつひろさん)、『かっとばせ!キヨハラくん』(河合じゅんじさん)、等の人気作の続編、『つるピカハゲ丸』ののむらしんぼさんによる『コロコロ創刊伝説』、『ヒャッハーだよ!ふなっしー』(まえだくん)等バラエティ豊かな作品がラインナップ、発売以降売り切れが続出し重版もかかるという人気ぶりを博しています。

その中で注目の漫画が『シャーマンキング』『ユンボル-JUMBOR-』『機巧童子 ULTIMO』等の代表作を持つ漫画家、武井宏之さんによる読み切り漫画『拝啓 徳田ザウルス先生』です。

1987年から1992年迄月刊コロコロコミック誌上にて連載され大ブームを起こした徳田ザウルスさん原作のミニ四駆漫画『ダッシュ!四駆郎』。この漫画の中で主人公、日ノ丸四駆郎とメインキャラクター4人が操作するのがミニ四駆”ダッシュ号”、この中の一つ「ダッシュ3号・流星(シューティング・スター)」のデザイン原案が「ダッシュ1号デザインコンテスト」で優秀賞を受賞した中学時代の武井宏之さんだった、というエピソードを中心に描かれているのが『拝啓 徳田ザウルス先生』。

徳田ザウルスさんは急性心不全のため2006年に逝去、漫画の中で武井さんは徳田さんの奥さんと出会い、対話の末に『ダッシュ!四駆郎』の新作漫画を自ら描く決意をします。自分のデザインしたミニ四駆のデザインが徳田ザウルスさんに採用された事が後に漫画家を目指すきっかけとなったという武井宏之さん。

MangaStyle木瀬谷と「赤鮫が行く!」ライター近藤氏、そしてコロコロコミック編集部石井さんを交えて、新たに『ダッシュ!四駆郎』を描く心境を武井さんに伺いました。

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木瀬谷: コロコロアニキ1号掲載の『拝啓 徳田ザウルス先生』は武井先生ご自身を主人公にした武井版『ダッシュ!四駆郎』の作品制作の前日譚と言った内容の読切りでした。実際にこれから『ダッシュ!四駆郎』描いていく所だと思うのですが、『ダッシュ!四駆郎』を描く事になった経緯を教えていただけますか?

武井: 当初、原稿依頼が来た時は自分が中学時代にデザインをしたミニ四駆「シューティングスター」の想い出だけで、短いページ数の読みきりというお話だったんです。でも雑誌のコンセプトが”大の大人のコロコロコミック”という事だったので、それで『ダッシュ!四駆郎』が復活しないと寂しいなという思いで漫画も描く事にしました。

木瀬谷: 『拝啓 徳田ザウルス先生』の中では、徳田先生の奥様にお会いした武井先生が急に「・・・オレが『ダッシュ!四駆郎』描く事になったから。」という展開になっていましたが、漫画の中で省かれている部分で作品制作を決意させるきっかけとなった出来事があったのでしょうか?

武井: 漫画制作を持ちかけられた際に編集者の方から「新しいシューティングスターを作りましょう」と言われて、それを聞いて乗った!と思いました。現在の自分の作風で新しくデザインをしてみたいという思いもあったので、自分のモチベーションではそこが一番大きいですね。

石井: 漫画に登場する新しいシューティングスターとエンペラーは昨日デザインが完成しました。 進化したシューティングスターとエンペラーがコロコロアニキの第2号(3月14日頃発売)に載る予定です。数十年の時を経て、武井先生完全監修のミニ四駆が世に出ます。

武井: 復活させましょう!

木瀬谷: 楽しみですね。

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武井さんが中学生時代にデザインの原案をした「ダッシュ3号・流星(シューティング・スター)」


木瀬谷: 武井先生が「ダッシュ1号デザインコンテスト」に応募されたきっかけというのは何かあったのでしょうか?

武井: 中学三年生の頃なので、あまり当時の事ははっきりと覚えていないのですが、なんとなくふんわり出してみようと思ったんですかね。好きな事ばかりやっていて、当時はメカばかり描いていましたね。漫画家になるといった時まで人物を描いた事なかったですから。18歳で上京して、そこから人物を描き始めました。本当は人物が好きじゃない。(笑)

石井: 普通じゃないルーツから入っているのが、武井先生のキャラクター造形の独特さに繋がっているんじゃないかと思います。

木瀬谷: 週刊少年ジャンプ連載の『仏ゾーン』や『シャーマンキング』のメカ描写のデザインや描き込み等、週刊ペースで良く描けるなと思って見てました。メカを描くのは大変ではないですか?

武井: 人物を描いていて調子悪い時よりかは全然楽ですよ。人物はその時の気分にすごく左右されて作画が不安定なんですよね。でもメカは裏切らないので描いてて良いですよ、だからきっと描くのが好きなんだなぁ。

木瀬谷: メカの作画自体はどうやって描いていらっしゃいますか?

武井: すべてフリーハンドですね。週刊では時間的に定規を使って描いていられないので。今は作画のスタッフが描いてくれてます。自分がアタリまでしっかり描いて、あとは任せています。本当は自分で描きたいんですけどね。

石井: 武井さんが下絵を完全にとった上でスタッフに渡すといった形で、スタッフに真っ白な状態で描かせるという事はないですね。

武井: 渡して形が変わってしまうのが嫌なので凄くしっかり下絵は描きますね。拾う線で全然違いますから。修正もかなりしますし、ペンが入った絵でもパースが違ったら変えたりとか普通にあります。

石井: 単行本にするたびにリマスターしてます。雑誌と単行本では紙の比率が違うのでトンボとかも取り直してますよね。

武井: セリフのふきだしも単行本向けにレイアウトを変えたりしていましたね。

木瀬谷: デジタルだったらそれが出来るんですね。

武井: 出来てしまうんですよ。まずいですよね。(笑)バランス崩れるのが嫌なんですよね。週刊はそれを言ってられないですけれどね。

木瀬谷: 今回はシューティングスターを実際にデザインされた武井先生にしか描けない漫画だと思いますし、純粋に読んでみたいです。

武井: ひたすらマシンを描いてやる!と思ってます。(笑)

木瀬谷: 当時徳田先生から直接電話で武井先生のデザインがコンテストに通ったお話をされたんですよね。

武井: 徳田先生から電話あっても”ふわっ”としてました。電話だけの話で現実味がなかったので。当時、自分も中学生の子供で、漫画を現実の人間が描いているという実感なかったですからね。

木瀬谷: 当時ミニ四駆の原案として採用されるとなった時、周囲の反応はどうでしたか?

武井: ない……と思う。友達がいないので。(笑)
地元に本屋さんが無かったんですよ。お母さんに仕事帰りにジャンプ買ってきてもらったり、コロコロは間違って別冊買ってきちゃったりして。だから、周りは誰も漫画読んでなかったんですよ。漫画とかの話する友人が二人居たくらいで、全然漫画を読んでいる子がいなかった。自分が一番”ふわっ”としていたからか、人との付き合いは希薄でしたね。

木瀬谷: でも商品が出た事は絵を描く上で自信になったのではないでしょうか?

武井: そうですね。シューティングスターはラジコンにもなって結構人気あるほうだったんですよね。それで自分にも出来るんだと自信に繋がりましたね。それまで本当に自信がなかったので。

石井: 主人公のライバル機なので、ずっと作中に出てましたからね。ミニ四駆の実物を買ったりもされていたんですよね。

武井: そうですね。ラジコンは買えませんでしたけど。

近藤: 選ばれた事が、人生が変わった瞬間だったんですか?

武井: そうですね。そこから漫画家になりたい欲が”ふわっ”とでてきて、上京しても”ふわっ”としていましたが。プラモばかり作っていました。

石井: それで桜玉吉先生のアシスタントしていたのが20歳の頃ですよね。

武井: 20歳の頃ですね。その時、先生は『しあわせのかたち』とか描かれていた。桜先生は仕事場に行っても居ないんですよ。書き置きと原稿だけあって、「色塗っておいて」と。何色とか指定無いので、自分で考えて一晩で色を塗ってコピーして帰るという。桜先生に最初に「つげ義春全巻読みなさい」と言われて、渡されて少年漫画志望なのに、狂いますよね。結果的には良かったですけど、王道からはずれた感がありましたね。

木瀬谷: 最初のアシスタントは影響大きいですからね。

武井: まず「ジャンプを目指すのはやめろ」と言われましたね。(笑)でも自分の中ではやるんだったら少年誌の方がいいかなと思っていて、やっぱりジャンプだと思っていました。それにデビューしやすいですしね。入口としていいと思います。

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木瀬谷: 徳田先生のデザインの魅力というのはどこらへんに感じていましたか?

武井: 力強さと美学ですかね。この間、徳田先生の奥さんにお会いして色々聞いたんですが、徳田先生もすごくアメ車が好きで、それでデザインが力強くて可愛いんだと納得しました。

木瀬谷: 徳田先生の絵の模写などもされていたんでしょうか?

武井: 僕は模写しないのですが、影響はありましたね。昔はロボットばっかり描いていました。モビルスーツ等は今でも初期の物は何も見ないでも、ちゃちゃちゃと3分くらいで描けますよ。

近藤: 『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』も見られていたんですか?

武井: 『マクロス』が一番でしたね。

近藤: あの時のロボットアニメはリアル系のデザインが流行で、アニメ作品の数も多かったですもんね。

武井: 顔が無いロボットはバルキリーが最初ですね。人型ロボット形態の時に股の部分が尖ってるデザインがカッコよくて。おもちゃの都合に合わせないで、リアルに拘って作られているのがすごく格好良かったですね。徳田先生のマシンも車の理論に基づいてデザインされている部分が共通していると思います。当時、アメ車のブームがあってトランザムとかスティンガー等が流行っていました。70年代のデザインは丸くて流線型で、今見ると昔の車のデザインっていいなと思います。

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玩具屋の様に陳列された沢山のコレクション。


木瀬谷: 徳田先生の『ダッシュ!四駆郎』の漫画の中で印象的なシーンはどこでしょうか?

武井: 日常シーンのリアルな描写が記憶に残っています。廃墟だったり、農民だったりホームレスだったりとか。そのあたり気になって見ちゃいましたね。後はリアルなタッチで実在の車の描写が随所に出てくる辺りとか。

近藤: 好きじゃないと描けない絵ですよね。子供向けとは思えない程描き込み凄いですよね。

武井: それが良かったのかもしれませんね。先生が良いと思ったものをやっているから。

木瀬谷: 密度の高い絵が出てきたりすると、絵の好きなお子さんとか、なんだこれはと興味を持って見てしまうと思います。
武井先生はこれまで少年誌での作品発表が中心だったわけですが、児童誌での作品制作は意識的に変化をつけられるんでしょうか?

武井: はい。わかりやすく、絵をはっきりと描く。ややこしい事しないようにしようと思います。

木瀬谷: 今回改めて『ダッシュ!四駆郎』を読ませていただのですが、児童誌と少年誌は文法が違うなと思いました。意識的にストーリーを省いている演出もあって、でもその分勢いがあるからテンポで読めるのですね。

武井: 確かに。文法まで違いましたか。

木瀬谷: 少年誌の方がより理屈で説明している部分が多い気がします。

武井: 端折り方も大事かもしれないですね。キャラクターの喜怒哀楽がはっきりしているから、ストーリーとして繋がるんですよ。

石井: 児童誌の作家さんは月刊ペースでの発刊という事もあり、先月までのストーリーを覚えていなくてもわかるように描いていくので読めるんだと思います。半年前に登場したキャラクターがストーリーの最後に助けに来た・・・とかだと月刊誌なので「誰?」 となってしまうので。週刊少年誌の人気作品は長期連載が多いので、必然的に群像劇が多くなってしまうのですが、児童誌ではちゃんと一話でドラマを作り上げていく事を作家さんは意識して大切にされていますね。

武井: 理屈くさいのは多いですね。面白かったら設定変えてもいいじゃない。『キン肉マン』くらいに。

石井: 中高生はそこにツッコミを入れるんですが、更に大人になるとそれもありかなと思え始める。

武井: 大人になったほうが児童誌向けの作品が描けるのかもしれない。40歳を越えてコロコロで描くというのは丁度良いバランスのような気もします。漫画を表現する上で、子ども向けにやるのが漫画を純粋に楽しめる。

木瀬谷: 少年漫画を執筆してこられた先生が、児童漫画を描くという事で、とても楽しみです。

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仕事場に飾られたモデルガンの数々。


木瀬谷: 浦沢直樹先生著作の『PLUTO』など既存の漫画の続編やスピンオフを描いた作品がこれまでにも例がありますが、今回の『ダッシュ!四駆郎』制作に当たって最も留意されている点はどこでしょうか?

武井: 徳田先生の奥様とのお話の中で「徳田の名に恥じぬものを」と言われて、プレッシャーを感じました。本当にその通りで、今回の挑戦は”自分を出さない”ようにする事です。結果的には作品に横溢してしまうんでしょうけど、なるべく自分を消すように描くつもりです。『ダッシュ!四駆郎』の世界観とキャラクターの雰囲気は、絶対崩してはいけないと思っているので、自分にとっても新しい試みですね。どの程度バランスとるかが、描いてないので分からないですけれど、どこかでは武井版を楽しみにしている人もいると思うし……描いてみたら、落ち着くと思いますけどね。

近藤: 描くのがご自身でも楽しみなんじゃないですか?

武井: 楽しみですね。それで、お話作りは億劫なんですよ。(笑) あれも描きたいこれも描きたいと思っていて、詰め込めないから、そっちが難しいですね。

木瀬谷: マシンはリニューアルされるという事なんですが、キャラクターはどうされるんですか?

武井: キャラクターはそのまま引き継ぎます。現代の四駆郎たちを描いていきます。

石井: 四駆郎や進駆郎がでてくるストーリーになると思います。

武井: 原作通りに四駆郎の”鉢巻のうえに眉毛”を描けるかかどうか。(笑)勇気がいりますね。自分の絵に落とし込めるかどうか。キャラの顔はまだ絵として触ってないんですよ。マシンばっかり描いてて。

主人公の日ノ丸 四駆郎。鉢巻きの上に眉毛のあるキャラクターデザイン。

主人公の日ノ丸 四駆郎。鉢巻きの上に眉毛のあるキャラクターデザイン。


新たにリニューアルデザインされた”エンペラー”と”シューティングスター”の一部分

新たにリニューアルデザインされた”エンペラー”と”シューティングスター”の一部分。

武井: リニューアルに関して、シューティングスターは自分の原案だったので良かったのですが、エンペラーは手を入れるのが難しかったですね。

木瀬谷: シャープな感じですね。リニューアルデザインのテーマは?

武井: 現代版を意識して、ただオリジナルの元気な感じも壊しづらくて、あんまカッコつけ過ぎてもなぁと思いました。

木瀬谷: 昔のガンダムと現代版ガンダムみたいなイメージですね。

武井: 僕はガンダムとかも頭でっかい方が好きでしたね。今は十頭身以上ですからね。

木瀬谷: タイヤが大きいのは、現代を意識されたのですか?

武井: 車体が低く小さいので、タイヤが大きく見えますね。テーマを変えずに、その時代のシューティングスターと言えるものを描こうとしました。

木瀬谷: 漫画の中で描くの大変そうですけど。

武井: そうでもないですよ。マシンの模型をタミヤさんに作ってもらうので。この仕事が楽しいですね。ここからがいろいろと、四駆郎の鉢巻の上に眉毛を描くのかとか(笑)

木瀬谷: 武井先生は意外にもこういったメカデザインのお仕事は初めてなんですよね。センスの良い漫画家さんがデザインされたプロダクトが増えていったら素敵なんじゃないかなと思います。

武井: そうですね。これからこういった依頼が増えたら嬉しいです。

近藤: 石井さんは、今回武井先生になぜお願いしようと思ったのですか?

石井: 武井先生デザインのシューティングスターの採用がされたのは知っていて、先生の作品を見ていてもコロコロの読者につながるものがあると思ったので、ぜひお願いしたいなと。メカに対する情熱は、読んだ人に伝わっていたと思います。

木瀬谷: 新しくリニューアルされたミニ四駆のデザインと、四駆郎の鉢巻の上の眉毛を武井先生がどう描くのか注目です。(笑) 本日はお忙しい所有難うございました。


武井宏之さんが描く、新たな『ダッシュ!四駆郎』が掲載される『コロコロアニキ』第二号は2015年3月14日頃発売です。お楽しみに!

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ガレージの中にある”フェラーリ・テスタロッサ”。

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同じくガレージにある”デロリアン”。

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武井さんの仕事机。ここから新たな『ダッシュ!四駆郎』が生み出される。


・Twitter @take_pro

・コロコロ公式サイト|コロコロアニキ http://www.corocoro.tv/aniki/


[執筆・撮影 木瀬谷カチエ]


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