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音楽、ファッション、会話……日常を作品に落としこむ力

ファッション誌に連載したり、自身も渋谷系の音楽を好んだりと、当時のファッションアイコンとしての存在感も大きかった岡崎さん。イベントではその趣味趣向についても話が盛り上がった。服の話をするお三方は、まさに『くちびるから散弾銃』がごとく。

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しまお「2人でお買い物とかよく一緒に行っていたんですか? どんな洋服が好きだとか」

桜沢「行ったねぇ、古着屋さんとか。京子ちゃんよくベレー帽をかぶってた」

安野「たぶん『マンガ基礎テクニック講座』(※しまおさんが小学生のころに読み、初めて岡崎さんを知った本)に出ているときの京子さんのTシャツは、フォーティーファイブ(ファッションブランド「45rpm」)で買ったのだと思う(笑)」

桜沢「私たち世代は『Olive』とか『mc Sister』とかよく読んでいたから、フォーティーファイブよく着ていたかなー」

安野「あとアニエス(ファッションブランド「agnes b」)」

桜沢「アニエスは、スウェット生地でしましまのジャケットをよく着ていたの、覚えている」

しまお「岡崎さんの作品って、出てくる女の子の着ている服がいちいちかわいかったんです。ご本人もおしゃれで、マンガとひっくるめて岡崎さんのファンになるっていう人は多かったと思います」

岡崎さんには、自分が日常で触れたものを作品に落としこむ高いセンスもうかがえる。短期間で多くの作品を生み出すネーム力について、次のような話が飛び出た。

桜沢「ネームは『三題噺』みたいな感じで作っていると思う。今日は1本8ページを作ろうとしたとき、3つくらいぽんぽんってテーマを出して考えて。こんな感じでやっていかないと作れない感じもするなぁ」

安野「よく遊んでいる若い女の子がしゃべっているところをピュッピュってとって、三題噺みたいなエピソードを混ぜて、パって作品に出すのが本当にうまい」

桜沢「お店やクラブで聞いた誰かの話をピックアップするみたいな。出かけ先で入ってくるものをちゃんと記憶しているのがすごかった。記憶力すごくいいんだよね、京子ちゃん」

安野「気になるものもすごく見るの。目が大きいから、何を見ているかすぐわかる」

佐渡島「そういった話には岡崎さんの主張はあるんでしょうか?」

桜沢「説教臭いものはないですね。入ってきたものを自分のフィルターを通して出すって感じなんじゃないかな。あれだけの量やっていて全部自分の思いをこめてなんてやってたら、くどくて読めない」

安野「うん。でもそんな風に意図していないのに、何か意図に残るっていうのがすごいところだよね。伝えようと思っていないのに、勝手に読者も感じてしまう」

しまお「重くないですよね。読み手にのしかかってこない。アップもダウンもなく、いつもフラットな感じがします」

世間から察知したものを作品の中で見事にフラットに並べるという意味では、桜沢さんの次の一言は印象的だった。

桜沢「ピチカート・ファイブみたいな日本の音楽とかイギリスの曲とか、京子ちゃんはいろんな音楽聴いていたからね。『pink』で男の子がたくさんの小説を切り貼りして1つの本を作るっていうのも、ヒップホップの手法じゃないですか。そういう音楽のようなマンガを描きたいんだろうなって思いました」

根底にある人情味と奔放性

岡崎さんは流行に敏感である一方、マンガでは昔からの王道的作家を敬愛していたそうだ。「仕事場の机の下には『ポーの一族』(著:萩尾望都)や『まことちゃん』(著:楳図かずお)を置いていた」と安野さん。月刊誌「CUTiE」で連載していた『ROCK』で岡崎さんは、ロック、アトム、ピノコなど、登場人物の名前を手塚治虫作品から拝借していた。

『ROCK』(宝島社)

『ROCK』(宝島社)


安野「京子さんって、マンガのアイコンとしても尊敬の念としても、手塚治虫を愛していたんです。『ROCK』では手塚キャラをああいう風に描いていいって誰も思っていなかったところを、軽々とやってみせたのがかっこよかった。大御所をいじっちゃいけないあまり、その人が放置されることってあるじゃないですか。そこを吹き出しとかで遊んでみたりして、放置しない愛情深さ。自分たち同じ時代にいる漫画家の1人みたいにいじれてしまうのはすごい」

こうした作風に「マンガって楽しいなって思えた」と安野さんは感銘を受けたという。しまおさんも岡崎さんから次のような共感を抱いたそうだ。

しまお「作家ってここまで素直でいいんだって刺激を受けていました。作品というものはもっと外面を気にするものだと思っていたので、岡崎さんの作品から作者が外にはみでているところが好きでした。女の子ってこうあるべきというものがなくて、思春期に読んでいて楽になれた」

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 世間への鋭い洞察力と、そこから拾い上げた価値観を、作品にフラットに並べる作家性。なおかつ根底に人情味と自由さをもつからこそ、岡崎さんの生み出す作品は多くの共感を得るのかもしれない。本イベントの150の聴講席に対し1200以上の応募が集まったという、ファンからの厚い支持にもうなずける。

 「岡崎京子展」は同館で、2015年1月24日から3月31日まで開催。岡崎さんを単独で取り上げた展示会は今回が初となる。本トークでますます魅了された岡崎京子という人間を、さらに知ることができるその日が待ち遠しい。

[取材・文=黒木貴啓(マンガナイト)]


▼企画展情報
「岡崎京子展」
開催期間:2015年1月24日(土)~3月31日(火)
開催場所:世田谷文学館
※詳細は世田谷文学館公式サイトで公開予定

▼関連リンク
http://www.setabun.or.jp/
世田谷文学館
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