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10月19日に横浜市民ギャラリー(神奈川県横浜市)にて「漫画家親子対談 ヒサクニヒコ×久正人」が開催された。開館50周年を迎える横浜市民ギャラリーは、2013年まで横浜市教育文化センター内にあったが、同センターが閉館するに伴い移転。約1年半の休止期間の後、場所を新たにオープンした。

今回の親子対談は、10月29日まで催されている横浜市民ギャラリーの開館記念展「横浜市民ギャラリークロニクル 1964-2014」の関連イベントとして行われたもの。漫画家・イラストレーターそして恐竜研究家のヒサクニヒコさん、『ジャバウォッキー』『ノブナガン』などで知られる漫画家・久正人さんを迎え、1コママンガとストーリーマンガの違いや互いの作品の振り返り、そして父・クニヒコさんと息子・正人さんによるお互いへの質問交換などを行った。聞き手はマンガナイト代表・山内康裕。

1コママンガは風土や風俗をうつしだす

ヒサクニヒコさんと久正人さん。このツーショットは今回だけ!?

ヒサクニヒコさんと久正人さん。このツーショットは今回だけ!?


会場は満席。対談企画者の一人・山内さんは、マンガファンにはなじみのない場所であることに加え事前予約制ではなかったため「どれくらい人が来るだろう」とドキドキしていたという

会場は満席。対談企画者の一人・山内さんは、マンガファンにはなじみのない場所であることに加え事前予約制ではなかったため「どれくらい人が来るだろう」とドキドキしていたという


同ギャラリーの3階にはヨコハマ漫画フェスティバルの作品が展示されており、当時の1コママンガをじっくり見ることができる

同ギャラリーの3階にはヨコハマ漫画フェスティバルの作品が展示されており、当時の1コママンガをじっくり見ることができる


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作家の名前を知らずとも確実に楽しめるのが今回の展示。どれも有名作家ばかりなので商品パッケージや広告でなじみのある絵ばかり

作家の名前を知らずとも確実に楽しめるのが今回の展示。どれも有名作家ばかりなので商品パッケージや広告でなじみのある絵ばかり



トークの最初の話題は、1978年に大通り公園完成を記念し行われた「ヨコハマ漫画フェスティバル」について。ヒサさんは柳原良平さんとともに作家陣のとりまとめ役として携わっていた。横浜に関する歴史上のテーマ、事始め、観光地、歌、現代及び未来の横浜に関する作品が展示された。

このイベントが開かれた当時は、1コママンガがまだ身近に残っていた時代。ヒサさんによると、1コママンガは主に社会風刺や日常について取り上げた大人向けのもので、「カートゥーン」とも呼ばれていた。戦後の出版ブームのなか独自の世界を築き上げていたようだ。

ヨコハマ漫画フェスティバルのチラシ。左側のイラストはヒサクニヒコさんのものだ

ヨコハマ漫画フェスティバルのチラシ。左側のイラストはヒサクニヒコさんのものだ


その1コママンガであらゆる角度から横浜を見つめる「ヨコハマ漫画フェスティバル」では、やなせたかし、赤塚不二夫、柳原良平、富永一朗など32名の俊英作家たちが参戦。ヒサさんは当時をこう振り返る。

ヒサクニヒコ:漫画家ってみんな〆切を守らないんですよ、当時は(笑)。〆切の催促を受けて初めて描き始めるみたいな感じですね。みんな絶対に〆切を守らないだろうなと思ったので、パネルを用意しみんなを市民ギャラリーのワンフロアに集めて朝から描く。そして「描き終わったらみんなで飲みに行きましょう!」としたんです。

現在展示されている作品40点は作家が集まってその場で描いたものだと考えると、発想の豊さに感嘆する。

昭和41-47年の横浜市電廃止について描いた1コママンガ

昭和41-47年の横浜市電廃止について描いた1コママンガ


SL開通について描いたこちらは、クスッと笑えるので、ぜひ絵の細部まで見て欲しい

SL開通について描いたこちらは、クスッと笑えるので、ぜひ絵の細部まで見て欲しい


ヒサクニヒコ: 1コママンガはその時代の風土や風俗を描いています。だから1年経過しただけでそれが何のネタだったかわからなくなることもある。ましてや10年経つとさっぱりなこともあるんです。時事問題を即興的な絵で表現しているため後から歴史的な事件を振り返ることもできるんですが、1コママンガは単行本にもならずまともに残っていないことが多いです。現代で1コママンガで食べていけている人は30人もいないでしょう。まさに生きた化石です。

コントラストの強い絵で目を引くように

次に、久正人さんによるトークへ。久さんは自身が描くマンガについて「設定が普通じゃない」という。

久さんは今年で漫画家11周年を迎える。こうして並べてみると、どれも一度目にすると忘れられなくなる絵のインパクトがある

久さんは今年で漫画家11周年を迎える。こうして並べてみると、どれも一度目にすると忘れられなくなる絵のインパクトがある


久正人: スポーツで青春するとか、少年の成長とか、そういうもののほうが一般的にはウケるのかもしれません。けど、なんだか描けないんですよね、家庭環境に問題があったんですかね?(笑)ひねった設定があってそこからどう物語を展開していくかを考えるんです。

たとえば『エリア51』の場合、ある街の中に妖怪・宇宙人・神様などが存在する夢の競演ができる街を想定して話を進めている。このように、物語を形作る大枠をまずは想像してそこから細かい設定を決めていく。街ならバーもある、娼婦もきっといるはず、モンスターが住んでいるから娼婦もきっと人間の形をしていない……など、つまりは外側から埋めていく物語づくりなのだ。

『エリア51』の1ページ。このページにはガネーシャ、宇宙人、アヌビス神、サイクロプス、ケンタウロスなどが描かれている。うしろの看板には「for HUMAN and NOT HUMAN」の文字

『エリア51』の1ページ。このページにはガネーシャ、宇宙人、アヌビス神、サイクロプス、ケンタウロスなどが描かれている。うしろの看板には「for HUMAN and NOT HUMAN」の文字


こちらが『ジャバウォッキー』。白黒のコントラストがより鮮明に。主線も省いて光と影だけの世界のように見える

こちらが『ジャバウォッキー』。白黒のコントラストがより鮮明に。主線も省いて光と影だけの世界のように見える


久正人: 作画についてはコントラストがキツい絵ですよね、我ながら(笑)。ディテールを描き込むよりは白黒ハッキリなグラフィカルな絵にして、パッと見て目を引くような絵にしようかと思って。『グレイトフルデッド』の時は絵がやぼったく見にくかったので、もっとクールで見やすい絵にしましょうと担当さんに言われて、色々と試行錯誤しているうちにコントラストの強い絵に落ち着きました。

『ジャバウォッキー』は恐竜が絶滅することなく存在する19世紀末が舞台。歴史的な建造物や恐竜が登場することから、狙い通り白黒のコントラストをはっきりさせ陰影が映える画面にできるだろう、という判断もあったそうだ。久さんの漫画に描かれるさまざまな生き物は、現実にありそうで無い。これについても久さんは「最初にシルエットが浮かんで、そこからディテールを考えていく」という。一貫して、外殻から作り上げる漫画家なのだ。

=>1コママンガとストーリーマンガ、違いは?
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