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2014年9月20日から23日、イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)にてフラワーコミックス40周年記念企画「空前絶後のトークショー&サイン会&複製原画展」が開催された。1974年に『ポーの一族』(著・萩尾望都)第1巻が発売されたことでフラワーコミックスが誕生し、そこからちょうど40年。その歴史を振り返ることができる24作家96点の複製原画展と、9月20日に行われた田村由美先生のトークショーのレポートをお届けしたい。

キャリア31年の漫画家・田村由美を振り返る

トークは田村先生の漫画家人生を振り返るところからスタートした。聞き手は先生ご指名だという編集者・ライターの茨田由紀(桜雲社)さん。
田村由美先生(左)と茨田由紀さん(右)

田村由美先生(左)と茨田由紀さん(右)


「アクション、サスペンスはNG。アクションを描くならスポーツもの」と、田村先生がデビューした頃の『別冊少女コミック』は現在よりも制約が多かった。デビュー後半年ほどネームを出したり直しを入れたりを繰り返しているうち、何が描きたかったか、どうマンガを描けばいいのか自分でもわからなくなってしまったという田村先生。そのスランプをどう脱したのだろうか?

——田村由美先生(以下、田村)
一度リセットの意味でも好きなものを好きに描いてみようと、200ページの同人誌を描いたんです。それで自分でもようやく描き方がわかった、思い出したんですよ。すると仕事のネームも通るようになって。当時の編集さんには「何があってよくなったんだろうね?」といまだに言われます(笑)。編集さんにいまだにネタにされることといえばもう一つ。『巴がゆく!』では連載第1回目で60ページの原稿を仕上げたのですが、納得いかなくて結局全部描き直したんです。だから『巴がゆく!』では幻の第1話があって、氷室上総は最初の原稿では存在しませんでした。もし最初の原稿でそのまま通していたらもっと軽めのお話になっていたと思うし、『BASARA』は生まれなかったかもしれません。

会場には田村作品の原画が展示されていた。写真右側、赤色の印象的な『BASARA』のカラーイラストには、紐で通したビーズがイラストのパーツとして組み込まれていた
 会場には田村作品の原画が展示されていた。写真右側、赤色の印象的な『BASARA』のカラーイラストには、紐で通したビーズがイラストのパーツとして組み込まれていた

会場には田村作品の原画が展示されていた。写真右側、赤色の印象的な『BASARA』のカラーイラストには、紐で通したビーズがイラストのパーツとして組み込まれていた


田村先生を語るには外せない『BASARA』についても話は及んだ。1990年から8年連載された同作は、文明崩壊後の日本を舞台に、日本を救うといわれている運命の子供「タタラ」をめぐり、「タタラ」の身代わりとなった双子の妹・更紗を描いた超大作だ。作品はどのように着想を得たのだろうか。

——田村
エジプト旅行に行った際、女性のファラオが男装していた話を聞いて「いいな」と思ったのが『BASARA』のきっかけです。アイデアを思いつくのは作品によって違って、『7SEEDS』の場合は島に漂着するシーンだけが頭にあって、そこがスタート。『猫mix幻奇譚とらじ』はある映画を見ていて不満に思うところがあったので、そこを解消したいなと思ったのがきっかけで、猫から始まった物語ではないんです。大抵は、とっかかりの部分やイントロ、キャラクターだけ、ワンシーンだけが頭に浮かんでそこから膨らませていきます。連載はあまり先まで考えずに始めて、読み切りの場合はカチッと決めて。いつもあまりテーマなどは設定していないかもしれません。

さらに、キャラクター作りについてはこう話してくれた。

——田村
キャラクターは最初、あまり作り込まないんです。キャラクター表も作っていません。成り行き……ではないんですが(笑)、私自身が彼らと付き合って、彼らを知っていくという感じです。描きながら「この人、こういう人だったんだ」と発見したりと、キャラクター本人たちにまかせていきます。ただ人によっては困ることもあって、『BASARA』の浅葱は複雑で掴みどころが無く、私がこの子をどうしたらいいか最初は結構わからかったんです。でも描いているうちに存在が大きくなり、最後には愛されるキャラクターになったのでよかったと思います。キャラクター本人が自分でもどうしたいのかわかっていなかったり、複雑だったりすると難しいですね。

またキャラクターが数多く登場する田村作品では、主人公だけでなく周囲の人物にも設定が丹念に掘り下げられているのが特徴の1つだ。そこには次のようなキャラクターへの想いがあった。

——田村
例えば会場にいる私たち一人一人が主人公として生きてるわけで、漫画でも主人公だけではなく、その周囲のキャラクターも描きたいです。本来は視点が飛んだりするのはあまり良く無いとされていますが、主人公のために配置されるキャラクター、というのは好きではないです。

このほか、描きやすいキャラクターや会場で公開された原画のセレクトについてなど、ファン必聴のトークが交わされた。『月刊フラワーズ』で連載中の『7SEEDS』最新話についても「ぜひ本誌を読んで楽しんで欲しい」と話した。

およそ130席ほどある会場は満員だった。長年にわたってファンを魅了し続ける背景には、「このキャラクターはどんな人物かな」「こうあったら面白いのに」と作家自身も探りながら物語を展開していく一種のスリリングな感覚が田村作品の中にあったからではないかと、このトークショーからは思えた。そして読み手はページを閉じても興奮が冷めやらぬまま、「次のお話は?」「次の作品は?」と後を追い続けることになるのだ。

複製原画展は、お嬢さんも、お姉さんも、お母さんも一緒に

ここからは複製原画展のレポート。写真撮影OKという太っ腹な複製原画展では次の24作家の複製原画が展示されていた。

複製原画展参加作家
相原実貴、青木琴美、赤石路代、秋里和国、芦原妃名子、あだち充、池山田剛、おのえりこ、小畑友紀、北川みゆき、さいとうちほ、篠原千絵、高田りえ、田村由美、西炯子、萩尾望都、穂積、水城せとな、水波風南、宮坂香帆、やぶうち優、吉田秋生、渡瀬悠宇、渡辺多恵子(敬称略)。

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展示は1人につき4点。こちらは渡瀬悠宇先生の『ふしぎ遊戯』の複製原画

展示は1人につき4点。こちらは渡瀬悠宇先生の『ふしぎ遊戯』の複製原画


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さいとうちほ先生がコミカライズを手掛けた『少女革命ウテナ』

さいとうちほ先生がコミカライズを手掛けた『少女革命ウテナ』


連載中の『とりかえ・ばや』。優美な着物の柄まで堪能を

連載中の『とりかえ・ばや』。優美な着物の柄まで堪能を


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田村由美先生『BASARA』カラーイラスト。力強さがみなぎっている

田村由美先生『BASARA』カラーイラスト。力強さがみなぎっている


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篠原千絵先生の絵は、どれも構図に遊び心が

篠原千絵先生の絵は、どれも構図に遊び心が


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やぶうち優先生の絵柄の変化に驚かされた

やぶうち優先生の絵柄の変化に驚かされた


20
あだち充先生のやさしいタッチの絵はいつ見てもホッとできる

あだち充先生のやさしいタッチの絵はいつ見てもホッとできる


この展示目当ての人もいれば、たまたま訪れた買い物客など幅広い年齢層の人が展示を楽しんでいた。小学生くらいの女の子が好きな漫画家の複製原画を見つけて、嬉しそうに駆け寄ったかと思えば、そのお母さんが「なつかしい!」と言いながら別の複製原画を眺める。そんな風景の広がりに、作品とともに、漫画家とともに一緒に年を経る喜びを感じられる企画だった。

[川俣綾加(マンガナイト)]

フラワーコミックス40周年記念企画「空前絶後のトークショー&サイン会&複製原画展」
http://fc40.jp/event/
コミスン
http://comic-soon.shogakukan.co.jp/
小学館
http://www.shogakukan.co.jp/

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