• このエントリーをはてなブックマークに追加

荒川弘原画展 『アルスラーン戦記』コミカライズ記念展

開催前から問い合わせが殺到し、会期を延長した

開催前から問い合わせが殺到し、7月21日まで会期を延長した

5月に最新刊が発売された、小説家・田中芳樹氏の『アルスラーン戦記』。マンガ家・荒川弘氏によるコミカライズを記念して、東京・青山のギャラリー「GoFa」で「荒川弘原画展 『アルスラーン戦記』コミカライズ記念展」が開催中だ。(7月21日まで)荒川氏の生原画に加え、田中氏の直筆原稿や原作の小説版で使った装画が並び、『アルスラーン戦記』に携わる人々の仕事を一挙に楽しめる贅沢な空間が広がっている。

■技術が光る生原画
壁一面に原画がずらり

壁一面に原画がずらり

『アルスラーン戦記』の原作は田中芳樹氏による長編ファンタジー小説。荒川氏によるコミカライズ版は、現在単行本で2巻まで発売されている。

展示の中心は荒川氏の生原画だ。40平方メートル程度のスペースに、カラー・モノクロあわせて70枚ほどの原画が並ぶ。荒川氏の原画は、通常使われるB4サイズのマンガ原稿に比べ、やや大きめ。この企画を立ち上げたGoFaキュレーターによると「マンガ原稿用紙ではなく、白い紙に自分で線をひいてコマ割りをしているよう」とのことだ。
集中線、トーン、ベタ塗りの組み合わせで迫力あるシーンに。つらいシーンでも目が離せない

集中線、トーン、ベタ塗りの組み合わせで迫力あるシーンに。つらいシーンでも目が離せない

手描きのふきだし、ベタ塗りやカケアミ、スピード感を表す集中線……荒川氏の巧みな技術の一端が垣間見える。通常こうした原稿は、描き間違いの修正跡や指示書きなど生々しいやりとりが残されているが、展示されている原画からは、修正の痕跡はほとんど見あたらない。美しい一枚絵だ。
ほとんど迷いのない線で描かれる荒川氏の絵。一体どうすればここまで研ぎすますことができるのかと感動をおぼえる

ほとんど迷いのない線で描かれる荒川氏の絵。一体どうすればここまで研ぎすますことができるのかと感動をおぼえる


原画をストーリー順に見ていくと、荒川氏の制作工程も見えてくる。序盤はネームと完成原稿が並んで展示されているが、途中から完成原稿のみに。「下絵段階でのチェックがなくなったときいている」(GoFaキュレーター)。話が進むにつれ、荒川氏の筆がのり、ページ内の書き込み量が増加。キャラクターの表情も豊かになっているのがよくわかる。大軍のぶつかる戦場シーン、名将ダリューンが一騎で戦場を駆け抜けるシーンと、原作『アルスラーン戦記』序盤の名場面が、荒川氏の迫力ある筆で再現されており、絵を見ているだけで、戦場の音が聞こえてくるようだ。
下絵と原画を見比べられるシーンも。ほとんど変更点がない

下絵と原画を見比べられるシーンも。ほとんど変更点がない

セリフが貼り付けられる前の生原稿。愛読者ならどんなセリフがはいるかわかるだろう

セリフが貼り付けられる前の生原稿。愛読者ならどんなセリフがはいるかわかるだろう


■荒川氏の仕事机、公開
今回の原画展では、この原稿を生み出す荒川氏の仕事机も再現されている。
荒川氏愛用の仕事道具も並ぶ

荒川氏愛用の仕事道具も並ぶ

原稿を置いて作業に使う木製の画板は、なんと荒川氏のお手製とか。荒川氏のヒット作のひとつ、『鋼の錬金術師』の連載が決まったときに作られたという。台の隅には連載中の作品の進捗状況を管理するメモ書きもそのままで、複数の連載を抱える荒川氏の仕事への姿勢や管理方法が透けて見える。
ページが終わるごとに隅のメモに書かれたページの数字を塗りつぶしていく

ページが終わるごとに隅のメモに書かれたページの数字を塗りつぶしていく


■元祖『アルスラーン戦記』の世界
原作を手がける田中芳樹氏のコーナー

原作を手がける田中芳樹氏のコーナー

コミカライズ版の原作となった小説『アルスラーン戦記』の世界も見逃せない。
こちらは小説の生原稿。修正の跡が生々しい

こちらは小説の生原稿。修正の跡が生々しい

今回は、最新刊14巻の生原稿が展示されている。田中氏はいまも原稿用紙に手書きで小説を書いている。白い用紙を埋める黒い文字は非常に美しい。田中氏といえば、なかなか新刊が出ずファンをやきもきさせるが、作品に丁寧かつ几帳面に向かう姿勢が感じられる。

丹野忍氏によるカッパ・ノベルズ用の装画

丹野忍氏によるカッパ・ノベルズ用の装画

山田章博氏による文庫版用の装画

山田章博氏による文庫版用の装画

その原作小説を飾るのが、イラストレーター・丹野忍氏と、マンガ家兼イラストレーター・山田章博氏の装画だ。丹野氏はカッパ・ノベルズ(光文社)で、山田氏は光文社文庫版でそれぞれ表紙の装画などを描いた。
もちろん荒川氏コミカライズ版とは異なる絵柄だ。どれも小説から連想されるイメージとイラストが融合し、同じキャラクターについて複数の「絵」を見せられても違和感がないのだ。みなさんはどの絵柄が、自分のイメージに合うだろうか。

■広がるファン層
会場におかれたファンの寄せ書きを見ると、小説のファンだけでなく、マンガからファンになって小説を読み始めたという人も訪れているよう。実力者の連携でファンが広がっているようだ。
ファンが自由に書き込める感想ノート。小説から、マンガからと作品を知る入り口は様々

ファンが自由に書き込める感想ノート。小説から、マンガからと作品を知る入り口は様々

『アルスラーン戦記』の描く世界は果てしなく広く深い。だからこそ、それぞれの作り手が、この世界にどう立ち向かっているのか気になる。原画展でマンガ家や作家ら作り手側の場所に触れれば、より深くその世界を満喫できるだろう。
来場者特典は、荒川氏と田中氏による特製ペーパー

来場者特典は、荒川氏と田中氏による特製ペーパー

1階のカフェでは、キャラクターのラテアートを楽しめるカプチーノも

1階のカフェでは、キャラクターのラテアートを楽しめるカプチーノも


[執筆=bookish(マンガナイト)]

■原画展情報■
会期:6月14日(土)~7月21日(日)※毎週月・火定休、
開場:12:00~18:00 ※毎週木は12:00~19:00
イベント:7月8日(日)じゃんけん大会(優勝者にはポスターを贈呈)
     7月13日(日)田中芳樹先生トークショー
     毎週水曜日 来場者にポスター絵を使ったDMをプレゼント
会場:ギャラリー「GoFa」
   東京都渋谷区神宮前5丁目52番2号 青山オーバルビル
入場料:500円(1階カフェで使えるコーヒーチケット付)
サイト:http://www.gofa.co.jp/


関連記事:

関連ニュース

関連まんが