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「ぶっちゃけいちユーザーとしてみたとき、マンガの媒体が紙である必要ってあると思います?」
「ないです。全然ないです」
 堀江貴文さんの問いに、マンガ家のうめさんは1秒と空けずに即答した。「東京トイボックス」など紙媒体で数々のヒット作を生み出してきたうめさんが紙の存在をばっさり否定している姿は刺激的だ。堀江さんはうなずき返す。
「少なくともマンガは紙である必要ないですよね。鞄の中にいれて持ち歩きたいのに、はっきりいってかさばるんですよ。ぼくはAmazonの端末を何種類か、ほかにもPCとiPhone、iPad Airも持っているんですけど、Kindleストアで買ったマンガはすべての端末で見られる。iPhoneしかないときなど、いろんなシチュエーションで読めてすっごい便利なんですよね」
左から菊池健さん、うめさん、鈴木みそさん、堀江貴文さん

左から菊池健さん、うめさん、鈴木みそさん、堀江貴文さん


 マンガにおける電子書籍の未来について語るトークイベント「春の電子書籍祭り with マンガHONZ」が、4月22日に新宿ロフトプラスワンで開催された。マンガのキュレーションサービス「マンガHONZ」の編集長である堀江さんが、電子書籍による個人出版の経験が豊富なマンガ家・うめさんと鈴木みそさんをゲストに迎え、マンガの電子出版のメリットを次々と挙げていく。司会はトキワ荘プロジェクトの菊池健さんだ。
会場のみんなで乾杯し、トークはスタート

会場のみんなで乾杯し、トークはスタート

「ぼくは前にみそさんに、井上雄彦先生の本を自炊(電子書籍化)したものを見せていただいたことがあったんです」とうめさん。従来の紙媒体の場合はノド(本を開いた時に中央にある、本の綴じ目部分)あたりが曲がって見えていた原稿を、電子書籍として平らにして見たとき、これまで気づけなかった絵の透明感に驚いたという。「そもそも井上先生の絵を曲げてみている方が失礼なんですよ!」という指摘には、ごもっとも言わんばかりに会場に笑いが起こった。
「そういう意味で、ぼくはクオリティが高いのは電子だと思います。作家の視点で描いた絵により近い。紙で読んだ時にまっすぐ見えるようあらかじめ歪めておくとか、そういうふうには描かないんです」

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 電子書籍が読み手にもたらすメリットのほか、作家が個人出版で食べていくツールとしてもトークは盛り上がった。鈴木さんはAmazonで個人出版した電子書籍(KDP)による収入が2013年度は1000万円を突破。「すごいよね、これ!」と堀江さんが声を弾ませると、会場に拍手が沸き起こる。

 鈴木さんが自身の電子出版の体験をネタにしたマンガ「ナナのリテラシー」は紙と電子どちらも1月に出版しているが、すでに印税収入は電子の方が上なのだという。紙は700円のコミックを2万部刷って印税は10%、まだ増刷がかからないところから収入は140万円いかないあたり。電子は400円で6000部を超え、印税が70%のためすでに168万円以上の収入個人出版による印税の大きさがよく分かるデータだ。ちなみに鈴木さんはAmazon以外では同書を配信しない契約を交わしたため、印税収入は70%。ほかでも配信する場合は30%になるとのこと。

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 それでも「電子による収入はボーナスの枠をまだ抜け出ていないよね」といううめさんの言葉に、鈴木さんも同意を示す。電子だけで食べていくには不安定で、紙の原稿料と単行本の印税すべてをまかなうのはできないという。「ただ電子の収入は着実に増えてはいますよね。最初電子を始めた2010年は年収に対して1%くらいしかなかった。今はだいたい2、3割くらい。逆にボーナスがなかったら困るくらいにはなってます」

 堀江さんは電子書籍の課題の1つとして「継続して売っていくにはどうしたらいいか」と掲げる。何人の読者を抱えるかが大事と鈴木さんは回答。「すごく売れている人は何十万人というファンを抱えてその中で回している。これがぼくが今立っているような1000~5000人くらいのちっちゃいムラになると、食っていけるかどうかというところ」

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 そもそも電子でマンガを読む人、買う人もまだ限られているようだ。支払いにクレジット決済を要することなどから、「電子書籍を買っている人っていい大人なんですよね」とうめさん。鈴木さんも大きくうなずく。
 電子書籍の広がりが遅いことに、「デジタル化することを宗教的に拒絶している人たちが多いのはなぜなんだろう」と堀江さん。うめさんは伝統的な人間が持っているデジタルラッダイト的なものだと分析する。
「文字ができた時、アリストテレスがそんなのものは偽りの賢者作るだけだと否定したそうです。この言葉が文字で残っちゃっているだけでだめなんですけど、そういった形で常に新しいテクノロジーは基本的に批判されることが多い。あんまりそこに固執している人は気にしていないです。どうせ変わるだろうと思っていますから」
 正直、後に古本屋などに売ることを考えてマンガはもっぱら紙で買っていた筆者。後日に思い切ってあるマンガの電子書籍を一挙に買ってみたところ、読みたいものがすぐ読める快感、持ち運びのしやすさなど、ストレスのなさに気分がせいせいした。メリットや明るい可能性の詰まっている電子に、大きく足を踏み切りたくなるイベントだった。

[執筆=黒木貴啓(マンガナイト)]

【イベント概要】
「ホリエモン・トークライブSESSION SEASON2 vol.10 『春の電子書籍祭り with マンガHONZ』」
開催日:2014年4月22日(火)
出演者:堀江貴文
ゲスト:鈴木みそ、うめ(小沢高広)
進行:菊池健(トキワ荘PJ・マンガHONZ)
URL http://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/22902

【次回イベント情報】
「ホリエモン・トークライブSESSION SEASON2 vol.11」
開催日時:2014年5月20日(火)OPEN 18:00/START 19:00(END 21:00予定)
出演者:堀江貴文、ゲストあり ※詳細近日発表
URL http://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/date/2014/05/20

関連リンク
■マンガHONZ:http://honz.jp/manga
■ホリエモンドットコム|堀江貴文:http://horiemon.com/
■難民チャンプ(うめ公式サイト):http://www.chabudai.com/
■CHINGE 鈴木みそ オフィシャルブログ 「ちんげ教」:http://www.misokichi.com/
■トキワ荘プロジェクト:http://tokiwasou.dreamblog.jp/

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