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舞台は1970年代後半。サエない・モテない中学校生活を送るニゴシら3人の人間模様や友情、そして性への暴走を描いた『昭和の中坊』新装版が2014年4月19日に発売される。これを記念し書店員と原作の末田雄一郎先生に「僕らが中坊だった頃」を振り返ってもらった。それぞれの青春はどんなものだったのか、赤裸々トークがスタートです![ 取材・構成=川俣綾加(マンガナイト)]

【原作者紹介】 末田雄一郎先生

末田雄一郎(すえだゆういちろう)。東京都出身。1998年に『つれづれなるがパンク』がアフタヌーン四季賞佳作を受賞しデビュー。『昭和の中坊』(双葉社)、『駅員ジョニー』(講談社)、『蒼太の包丁』(実業之日本社)など数々のマンガ原作も手掛けている。「漫画ゴラク」で『ハルの肴』を連載中。

【対談】書店員さん3名

杉山陽一さん
(COMIC ZIN)
金田健太郎さん
(文教堂)
長谷見賢一さん
(書泉ブックマート)


今日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、みなさんの『昭和の中坊』との出会いを教えてください。

杉山 僕はコミックの発注の仕事をしているので、2006年の単行本発売の頃から読んでいました。登場人物が僕より10歳くらい上ですが、僕にも懐かしい部分がたくさんあって、エロへの関心や暴走っぷりはリアルだなと思いました。

金田 コミック担当になったのが最近で、それに合わせてこの作品を読みました。中学時代はちょうどこの双葉社があるところ、神楽坂あたりで過ごしたんですが、今でこそおしゃれなこの街も昔は雰囲気が違ったんですよね。裏道に入るといかがわしいものを売る自販機もあったり。そういうのを思い出しました。

末田 ポルノ映画館もあって、うめき声が聞こえると思ったらその映画館から漏れ出る声だったことがあります。「タダで喘ぎ声が聞ける!」と思って耳をあてて聞いたりしましたよ、神楽坂。

金田 ホント、そんな感じの街でしたよね。

長谷見 ずっとコミック担当をしていて、「漫画アクション」が復刊になった時に献本をいただいて『昭和の中坊』に出会いました。だから1話からずっとファンです。自分と重なる部分がすごくあって、コミック発売当時はすごく力を入れて売りました(笑) 登場人物それぞれに共感できる作品ですね。

印象に残っているエピソードはありますか?

金田 コバルト文庫の小説が買えないから再現しよう、というエピソードと、クラスメイトをネタにしてエロ小説を書くっていうのがもう……「オレ、見られてた!?」って思いました(笑)

末田 あの頃の男子中学生はみんなやってたんじゃないかな。

金田 絵が描ける人はイラストで、小説が書きたい人は小説で……やってましたよね。大学ノートに書き溜めて「これどこに保管すればいいんだ、捨てるに捨てられないし」みたいな。

末田 自販機本をせんべいが入ってた大ぶりの缶に入れて、穴を掘って埋めたりしてましたよ。

金田 僕の場合は、隠し場所はベッドマットの下という古典的な場所でした。

長谷見 定番じゃないですか、見つからないんですか?

金田 あの頃からオタクだったので、あやしいマンガは本棚の奥のほうに隠しておいて、自作の小説なんかはベッドマットの下。すると、母がマンガのほうを見つけて机の上に並べて「あんたはまたこんなの読んで……」と嘆いて。でも自作小説は見つかっていない。それで「しめしめ」となるんです。

杉山 頭脳戦ですね〜!

末田 ダミーを掴ませるわけですね。

11話、野川台中官能倶楽部より

11話、野川台中官能倶楽部より

長谷見 僕はバレンタインの話が好きですね。貰ったら嬉しいけど、同級生に茶化されるのは恥ずかしいっていう中坊の複雑な気持ちがすごくわかります。実際、僕が中学生の時も普段モテなさそうな男子がバレンタインにチョコを貰うとからかわれるんです。最後には泣きながら「別にオレはこんなモンいらねえんだよ!」といって捨てたりして。本当は嬉しかったんでしょうけどね。しかもそういうの、他の男子が先に見つけるんですよ。

杉山 可哀想すぎる。

末田 バレンタインって不思議な魔女狩りですよね。みんなソワソワして「チョコ、貰えるかな」なんてほんのり期待してるクセに、貰ってるヤツがいたら足を引っ張る。

杉山 普段からモテそうで、いかにもいっぱいもらってそうな男子は何も言われない。でもモテなさそうな男子が貰うと騒ぎになるんですよね。

長谷見 モテそうな男子は、最初からカーストが違うから。

末田 ライオンに対しては誰も牙をむかないんですよ。草食獣同士の戦いです。

金田 モテないサエない仲間だと思っていたのに裏切られた時、つまりチョコをもらった時に茶化されますね。

末田 中学3年生の時に初めて女子からチョコを貰ったんですが、新聞紙に包まれて茶封筒に入った明治の板チョコで。もう、何かの通達かなと思いましたよ! 別になんともなかったですけど。あとブスだったから。

杉山 なかなか手厳しい(笑) 作中でもブスへの扱いが厳しいですよね。

末田 シナリオの段階ではもっと酷いですよ。作画の吉本浩二先生の優しさで包まれてるから、最後はいい話になっているんです。打ち合わせでも「ちょっとキツすぎますよね」と言われるほど救いの無いシナリオを書いてました。

9話、二月の惨劇より

9話、二月の惨劇より

岩渕とモッチーだったら、どちらが好みですか?

杉山 モッチーですね。

金田 僕もモッチーかなあ。

長谷見 やっぱりモッチーですね。/td>

末田 なんでそこで豆タンクを切っちゃうんですか!? 豆タンクには人権が無いんですか!?(笑)

(一同) (笑)

岩渕、豆タンク、モッチー

岩渕、豆タンク、モッチー

杉山 でも、付き合うなら豆タンクが一番肩の力を抜いて付き合えていいですね。

長谷見
&金田
ですね〜。

杉山 ラクというか、身の丈に合っているというか。

末田 吉本先生の仕事場では、アシさんたちの間で「豆タンク可愛い〜」って大人気だったらしいんですよ、欲が無い!(笑)

杉山 中学でどの女性とお付き合いするか……と考えると、ランク的に自分とイコールか、二アリーイコールになると思うんです、そうするとやっぱり豆タンク。

長谷見 豆タンクとニゴシがデートする話、ああいうのが一番楽しいと思います。

杉山 あそこで自然体で、でもちょっと意識するくらいの女子が一番いい付き合いですよね、中学生だと。変に背伸びすると女子のほうが精神年齢高くて嫌われちゃったり、男が暴走したりして悲劇が起きるんだと思います。

金田 あの頃はみんな高嶺の花を取りに行って、そしてみんな玉砕していました。

杉山 ありますね。

金田 結局誰と付き合ってるの? と聞いたら結局年上の先輩とかで。「先輩かよ〜」ってみんな脱力。

杉山 もし今のマンガだったら、豆タンクは確実にメインヒロインだと思いますよ。

長谷見 最近のマンガのヒロインは親近感を大事にしているので、何でもできる女の子より欠点があったり親しみやすいほうがいい。そうなると杉山さんの言う通り、メインヒロインは豆タンクですね。

もしも中学生の時に、『昭和の中坊』を読んでいたらどうなっていたと思いますか?

杉山 もうちょっと身の丈に合った学生生活を送れたかもしれません。

長谷見 いや、「オレはこんなんじゃない!」かもしれないですよ(笑)

杉山 それもあるかもしれません。たぶん反面教師的に読んでいると思います。

末田 反面教師か、「オレはこんなんじゃない!」と思うか、バカにされてる気分になって読まないかのどれかですね。

金田 中坊は誰しも、自分のことスゴイと思ってますからね。

杉山 自分はスゴイと思うと同時に、周囲と自分を比較して気にする年齢でもあるんですよね。だからこの作品は中学生の課題図書になってもいいくらいの作品だと思う。「今読め! 高校生だと遅いぞ!」って。

金田 「これがお前らだ!」と突きつける感じで(笑)

末田 夏にキャンペーンしてる「●●文庫の100冊」にコッソリ混ぜてもらえないかな。

杉山 パンダのオビをつけて……ってバレますよ!(笑)

最後に、読者にメッセージをお願いします。

長谷見 『昭和の中坊』は今の40代より上の世代からすると本当に懐かしいお話です。携帯電話やネットなど環境は違っても現代の中学生にも楽しんでもらえる、オールジャンルの方にとって面白いマンガだと思います。僕も売り場を工夫してたくさんの方に手にとっていただけるよう頑張ります!

金田 基本的には中坊がエロを求めて暴走するお話なんですが、僕が推したいのはニゴシたちもつ熱量、友情の厚さです。仲間と一緒にバカをワイワイやる一方、友達が困っていたら真剣に一緒に向き合い手を差し伸べる。それがこのマンガの素晴らしいところで、僕らと同世代に懐かしんでもらうと同時に今の中学生にも読んでもらって大切なものを見いだしてもらえればと思います。

杉山 この2人がこんなにいいこと言っちゃったら僕もう何も残ってないですよ!(笑) 僕は『昭和の中坊』は中学生の課題図書にしてもいいくらいに思っています。どんな中学時代を送ればいいか指南書になるんじゃないかなくらいの。「昭和」とついているので敬遠してしまうかもしれませんが、今の中学生にも是非手に取ってもらいたいです。

末田 実は先日、住宅ローンが通りまして……中古住宅を買うことになりそうなので、たくさん売れて早くローンが返せればいいな(笑)  

長谷見 頑張って売ります!(笑)

今日はありがとうございました!


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