カテゴリー: イベントレポート

  • 「オカオカハウス」をご存知だろうか。マンガ家であり、女社長でもある浜田ブリトニー先生が代々木上原に立ち上げたダイニングバーだ。そしてこのバーではなんと浜田先生自らが講師を努める「まんたま塾」というマンガの塾が開催されているらしい。

    バーで塾?一体どういうこと?という訳でMangaStyle編集部は「オカオカハウス」へ取材してみた。

    「オカオカハウス」は閑静な住宅街の中にある一見、普通の一軒家だった。だがよく見ると玄関にはマネキンが飾られており独特なムードが漂う…。

    勇気を出して足を踏み入れてみると…なんと壁一面にマンガのキャラクターイラストが!

    あ、天羽くん…!?

    あ、天羽くんやーーーー!!

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    ドーベルマン刑事に ブラックエンジェルズ!ド迫力!

    まつもと泉先生と藤原カムイ先生のイラストがならぶ!

    まつもと泉先生と藤原カムイ先生のイラストが並ぶ…奇跡のような光景だ

    壁中に描かれた馴染みあるマンガキャラクターを眺めていると、これだけで時間が経ってしまいそうだ。

    この日の「まんたま塾」はお昼12時から開講ということで、授業前にまんたま塾講師である浜田ブリトニー先生とのむらしんぼ先生にお話を訊くことができた。

    まんたま塾とは?

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    のむらしんぼ先生

    MangaStyle(以下M):「まんたま塾」とは一体どんな塾なのでしょうか?

    浜田ブリトニー先生(以下、浜田):「まんたま塾」は現役で活躍しているマンガ家さんが少人数に向けてマンガを教える教室です。マンガに触れたことがない人がすぐにできるようにあらかじめ教材も用意しています。

    M:なるほど。初心者向けということで生徒さんの年齢層も低めですか?

    浜田:今日もそうなんですけど子どもが多いですね。下は小学2年生くらいからかな?
    最初の授業の時は「自分のキャラクターを描いてみよう」っていうテーマで、私たちのことを描いてもいいし、キャラクターを描いてもOK。で、それぞれえびはら先生の「まいっちんぐ賞」、のむら先生の「つるセコ賞」、あと私の「パネエ賞」なんかを用意しました。2回目となる今日の授業では、途中の原稿を完成させようということでアシスタントの勉強をしよう、みたいなテーマです。あとこれはしんぼ先生が用意してくれた教材なんですが、吹き出しだけが抜かれていて、ここに好きなセリフを入れるようになっていますね。

    のむらしんぼ先生(以下、のむら):これ昔描いた原稿なんですが、自分でも忘れちゃってるんですよ (笑)。

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    M:実際に使用された原稿が教材に使われることは斬新ですね。

    浜田:すごいでしょ?で、授業は時間割がありまして、給食なんかもあります。

    M:(時間割を見て)ここの時間はニコニコ生放送って書いてますね。

    浜田:はい、授業の終わりに生徒さんも含めて作品講評という形で生放送をやってます。

    のむら:生徒さんもみんな一緒になって楽しんでくれるよね。

    浜田:そう!出たーいとか言って(笑)。

    のむら:そこが普通の塾だとか漫画学校と違うところだよね。やっぱりここはオカオカハウスっていうイベントスペースも兼ねてるので、いかに楽しんでもらうかっていうコンセプトだから。これでOK(笑)?

    浜田:いいこと言った!もうあとは酒を飲んで寝てください(笑)!

    一同:(笑)


    マンガ家になるために必要なこと

    M:この「まんたま塾」がきっかけでマンガ家を志す子もいると思うのですが、実際マンガ家になるためには何が必要だと思いますか?

    浜田:もう気合ですよね!

    のむら:気合(笑)。

    浜田:諦めない心とか。やる気っていうか勢いかな?

    のむら:今、塾長は気合って言ったけどね、もうちょっと深く言えば「魂」ですよね。

    浜田:そう、魂!マンガに魂を賭ける塾ですから。

    M:なるほど。お2人はマンガ家として週刊連載も経験されてきたと思いますが、実際になってみて大変だったことって何でしょう?

    のむら:私の場合、週刊雑誌での連載ってのはあまりなくて、月刊誌と隔月刊がメインで、あと北海道新聞では週刊で8ページ描いてましたけど、それでもちょっと気狂いそうでしたね。

    浜田:週刊連載は気狂うよ。あれやっちゃいけないよね?

    のむら:私は月刊誌の連載の合間をぬって週刊をやってたので、原稿をアシスタントに渡したら寝ないですぐデニーズとかに行って。次のネームやらないといけないから。

    浜田:原稿出した日にネームやるんだよね。

    のむら:だからファミレスの外の景色を見ながらため息ばっかりついてましたよ。

    浜田:分かる。病むよねー。私は今、WEBで週刊連載を2ページだけやってるんですけど、2ページでも過酷ですね。昔「パギャル!」の時は週刊で6ページやってて、その時の編集の人は藤子A不二雄先生とか浦沢直樹先生の担当で、私を世に出してくれたんだけど、新しい原稿を出したその日に次のネームを完成させるまで帰らせてくれなかったもん!

    のむら:あとギャグマンガだと一回ずつ完結させないといけないでしょ、毎回。全体で話を考えておいて今回は続くとかはいかないから。

    浜田:そう!しんどいです!

    M:マンガ家として生きていこうと決意したのはおいくつの時ですか?

    のむら:それこそ19くらいの時から目指してましたけど、年重ねるごとにね、これは才能だけじゃなくて運だなってよく分かりましたよね。

    浜田:そう、運が大きいよね。いい担当に会えるとかさあ。

    のむら:だから運を呼ぶ、運を育める才能っていうのかな。

    M:それは巡り合いだったりタイミングだったり?

    浜田:もう、たまたまこの漫画が今、ウチの雑誌で欲しかったみたいな。

    のむら:僕なんかがデビューした頃はマンガバブルでマンガが売れて売れてっていういい時代でしたから、僕の屁みたいなマンガでもいけましたけど(笑)

    M:いやいや何をおっしゃいますか!

    のむら:今はもう大変ですけどね、まあ好きでやってれば。

    M:タイミングが大切という話ですが、お2人は日頃から「今ならこういったテーマのマンガがいいんじゃないか」というようなアンテナを立てていらっしゃるんですか?

    浜田:売れてないマンガ家だと雑誌のね、犬ですよ(笑)。そういう意味では昔のマンガ家さんはいいですよね。どっちかっていうとこんなマンガ描きたい!っていう先生の意志の方が強かったでしょ?

    のむら:そこは人にもよるんでしょうけどね。今の子どもマンガはメディアミックスが当然でポケモンや妖怪ウォッチが人気ですが、20年近く前はコロコロもハゲ丸、おぼっちゃまくんってどっちかっていうとオリジナルが強い時代でしたから。だから新人でも編集の言いなりになる人もいれば、抵抗して1,2本オリジナルで当たればある程度自分の描きたいものを描けたってこともありますし。だけど自分の描きたいものばっかり描いてもね、当たんないのを10年も続けてると干されそうになりましたけど(笑)。

    浜田:今は雑誌が売れるものしか載せない時代だからね。

    のむら:ビジネスだからね。商売にならないと。だから企画出してもこれでどれくらいの利益が出版社に入るかっていうところで、今は販売が強いんだよね。

    M:ではマンガ家になってよかったということは何でしょう?

    浜田&のむら:…(しばらく沈黙)。アハハハ!

    のむら:よかったことかあ。

    浜田:先生はよかったんじゃないですか?アニメ化もされて。主題歌も私カラオケで歌うし。

    のむら:嫌々だったけど作詞もしてねえ。まあよかったんでしょうねえ。来年還暦だから全てはチャラみたいなね(笑)。でもファンがいてくれたり、自分の作品が本になったりすることはやっぱり嬉しいですよね。

    M:ありがとうございました。授業楽しみにしています。

    => いよいよまんたま塾開講!

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    世田谷文学館で開催中の「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」が大盛況だ。岡崎京子さんは1980~90年代にかけての日本のカルチャー史を代表するマンガ家。『pink』『リバーズ・エッジ』『ヘルタースケルター』などで知られ、少女たちの時代への閉塞感やそれと向き合う姿を鋭いまなざしでリアルに描いた。活動の舞台はマンガ誌にとどまらず、週刊誌やファッション誌等でも多くの作品やイラストを発表。1996年の不慮の事故により現在活動休止中ながら、今なお、多くのファンから熱狂的に支持されている。

     岡崎さんが下北沢(世田谷区)出身ということで実現した本展は、岡崎さん初の大規模個展だ。世田谷文学館のスタッフの中にも愛読者が多く、ずっと企画をあたためてきたというその想いがダイレクトに伝わってくる。300点を超える原画や岡崎さんが寄稿した雑誌など、展示は見ごたえ十分。

    読みだしてしまうと原画の前から離れがたくなる

    読みだしてしまうと原画の前から離れがたくなる

    また本展ではワークショップやトークショーなどの関連企画も豊富に用意されており、いずれも大盛況。3月7日に行われた、マンガ家・今日マチ子さんによるギャラリートークにも朝から整理券を求める長蛇の列ができた。整理券を手にした幸運な30名と共に、筆者もギャラリートークに参加してきた。

    ギャラリートークに出演したのは、多方面で活躍中のマンガ家・今日マチ子さん。マンガだけにとどまらず、多彩な表現で様々な領域に活動の場を広げていく姿は岡崎さんのそれとも重なる。

    ギャラリートークは参加者全員で会場の作品を見て回りながら、展示のテーマごとに、世田谷文学館の庭山貴裕さんが今日さんに質問をする形で進行した。

    熱心に耳を傾ける参加者たち。男性参加者も多い

    熱心に耳を傾ける参加者たち。男性参加者も多い

    今日さんが、最初に出会った岡崎作品は『リバーズ・エッジ』。一番好きな作品でもあるらしく、今日さんは本展のために『リバーズ・エッジ2015』というタイトルでトリビュート作品も描き下ろしている。(展覧会公式カタログに収録)

    「当時中高生だった私は川のそばに住んでいて、川のそばに住んでいるということは別段本人にとっては意味がなかったのだけれど、これを読んでから川のそばに住んでいるということにものすごく意味を感じるようになりました。」と、今日さん。

    以来、引っ越しをするときに必ず川に近い場所を選ぶほど、今日さんにとって川は特別な場所となったようだ。

    「川って半分公共で半分プライベートの場というすごく不思議な空間」と今日さんがいうように、確かに今日さんの作品には川の情景が頻繁に登場する。

    きっと、その場のいた参加者の中にも同じように、川の風景を思い描いた人がいたはずだ。『リバーズ・エッジ』に出てくる川と、わたしたちそれぞれの原風景としての川は繋がっているのかもしれない。『リバーズ・エッジ』の展示は、黒を基調とした小部屋風の空間で構成されているので、ぜひ、暗い川岸に立っている気分で、作品と向き合ってみてほしい。

    空間全体で世界を表現している『リバーズ・エッジ』の展示

    空間全体で世界を表現している『リバーズ・エッジ』の展示

    次にご紹介するのが、バブルまっただ中の1980年代末が舞台の『くちびるから散弾銃』。内容は東京在住の女の子3人が恋やファッションをはじめとするあれこれをひたすらとりとめなく散弾銃のようにおしゃべりし続けるというもの。ドラマチックな展開があるわけでも、ハッキリ、ここ!と分かる盛り上がりやオチがあるわけでもない。それなのに、読者は登場人物と同じ会話の輪の中にいる感覚を持ち、「わかるわかる」とうなずきながらどんどん読み進めていける。日常を描くマンガ作品は多いが、他に似た作品が思い浮かばないような独特な作品だ。この作品はなぜこれほどに唯一無二なのだろうか?

    「こういう何気ない女子同士の会話を毎回面白く読み切れるものに収めるのは実はとても高度な技。真似しようとすると、だらっとしたつまらないものになってしまう。」(今日さん)

    これは同じ描き手ならではのコメントだろう。鋭い観察眼ですくいとられた時代の片鱗を、テンポのいいコマ割りと厳選された言葉で表現したこの作品。読み手が安心しておしゃべりの内容にだけに集中し、すいすい読み進めることができるのは、岡崎さんの高度な技ゆえのものだったのだ。

    この作品を筆者が初めて読んだのは作品が発表されてしばらく経った、90年代末頃だった。その時は、過ぎた時代の風俗や文化を懐かしみつつも、ちょっぴり恥ずかしいような気持で読んでいた。つまり、この作品には発表された当時の「わかるわかる」が、恥ずかしくなるくらい、ぎゅうぎゅうに詰まっていたのだ。

    そして、時がたち2015年の今、この作品を読むとこれまでとはまた違った「わかるわかる」を体験できることにお気づきの方もいるだろう。80年代末~90年代のファッションやカルチャーが再注目され、「おしゃれ」なものとして盛り上がりを見せている昨今、「あの時代」が詰まったこの作品は「最新の」ファッション・カルチャーカタログとしても、新鮮な気持ちでワクワクしながら読めるのだ。

    会場では原画が数多く展示されているので、「わかるわかる」とうなずきながら、作中のガールズトークに参加してみてはいかがだろうか。

    展示全体を見渡すことで、岡崎京子の作風の変遷が良く分かる

    展示全体を見渡すことで、岡崎京子の作風の変遷が良く分かる

    ギャラリートーク全体を通じて、今日さんの言葉の中で特に印象的だったのが、「(岡崎さんは)きちんとわたしたちの事を描いてくれている」という言葉だ。このほかにも何度か「わたしたち」という言葉を耳にした。

    岡崎さんの作品について語るとき、「わたし」ではなく「わたしたち」のほうがしっくりくる。「わたしたち」という言葉の中にはわたしと誰かの関係が含まれているのだと思う。その関係を含めたまるごと全部を、岡崎さんは「描く」ことで肯定してくれているのかもしれない。そして、「わたしたち」が主語となって、岡崎さんの作品の力は伝播していく。

    去る2月に本展の関連企画として「“90年代”ZINEをつくろう」というワークショップが開催された。参加者は思い思いの90年代グッズ(雑誌やCD、マンガなど)を持ち寄り、そのグッズにまつわる思い出を語り合いながら、そのグッズのカタログ風小冊子(ZINE)をその場で作成し完成品をそれぞれが持ちかえるというものだった。

    ZINEは1Fロビーで閲覧可能

    ZINEは1Fロビーで閲覧可能

    完成したZINEはまさしく「わたしたちの」ZINEだ。「わたしたちの」ZINEは、わたし「たち」になったことで、不思議と「わたしたち」に含まれない、他の人が介入する余地を生んでいる。ワークショップに参加していなくても、完成したZINEを見た人は「私だったら何をグッズとして持っていったかな?」と思っているかもしれない。

    このように岡崎さんの作品がつなぐものはこれからも拡張し続けていくのだと思うと、胸が熱くなる。

    原画を見ていると、いつの間にか作品の展開に心を奪われ、続きが気になってついついじっくり読み込んでしまう。岡崎さんがイラストやコラムを寄せている懐かしい雑誌の数々も隅々まで読みたくなってしまうものばかりなので、これから行かれる方は時間に余裕を持って行くことをおすすめする。

    展覧会の公式カタログは会場だけでなく、書店でも購入可能だ。ちなみに筆者は2冊購入し、1冊を遠方に住む大切な友人にプレゼントした。「わたしたち」の「あの頃」を起点にして、楽しいおしゃべりは今後もきっと、ずっと続いていく。

    [構成・執筆=岩崎由美(マンガナイト) ]

    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」が書籍化され注目を浴びる。4度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。戦争を描いた『cocoon』は劇団「マームとジプシー」によって舞台化。2014年には第18回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。2015年4月に最新刊『ニンフ』『吉野北高校図書委員会(1)』を刊行。

    juicyfruit.exblog.jp/


    ▼公式カタログ

    『岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ』

    [価格]2,300円+税

    http://www.heibonsha.co.jp/book/b193085.html

    ※売り切れの場合もございます

    ▼展覧会概要

    「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」

    http://www.setabun.or.jp/exhibition/exhibition.html

    [期間] 3月31日(火)まで

    [開館時間] 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)

    [会場] 世田谷文学館2階展示室

    [休館日]月曜日

    [料金] 一般=800(640)円 高校・大学生、65歳以上=600(480)円 小・中学生=300(240)円 障害者手帳をお持ちの方=400(320)円
    ※( )内は20名以上の団体料金

    「せたがやアーツカード」割引あり
    ※障害者手帳をお持ちの方の介添者(1名まで)は無料

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    「“愛”って… すごく不気味だね どこにでもゴロゴロしてて… それだけで何でも出来てしまえるなんて とても…気持ち悪くない?」

     なんとも胸に引っかかるセリフ。1970~80年代に活躍したマンガ家・三原順の作品「Sons」で、主人公の少年が放つ一言だ。5月31日まで米沢嘉博記念図書館で開催中の展覧会「没後20年展 三原順復活祭」のメインビジュアルには、このセリフが大きく描かれている。

     同展は1995年に三原順が亡くなってから20年の節目に、代表作の原画や遺品を通して彼女の才能を再確認しようという展覧会だ。1988年生まれの筆者は、恥ずかしながら同展が企画されるまで三原順という作家を知らなかった。それでも告知のメインビジュアルを見て、素晴らしいと謳われがちな“愛”の暗い一面を言い当てた冒頭のセリフに、強い共感を覚えた。

     三原順とはどのような作家なのだろう。そして、今どうして三原順に触れるべきなのか。展示会場に足を運んで展示担当者に話をうかがいながら、その魅力に迫ってきた。

    米沢嘉博記念図書館外観

    米沢嘉博記念図書館外観

    会場内

    会場内

     

    同展では三原順のプロフィールや全著作物、没後のファンたちによる復興活動の年表、全会期あわせて原画約250点を展示。それぞれに添えられた解説を通して、三原順という人物や作品の特徴を深く知ることができる。会期は4つに分かれており、第1期(2月6日~3月2日)では出世作「はみだしっ子」シリーズとその主人公のひとり、グレアムについて、第2期(3月6日~4月6日)では同作のほかの主人公・アンジーと初期短編集について、というように、一部展示を入れ替えて異なるテーマを展開する。筆者が行ったときは第1期だった。

    三原順の代表作の1つ「はみだしっ子」

    三原順の代表作の1つ「はみだしっ子」

     

    「はみだしっ子」シリーズは1975~1981年にマンガ誌「花とゆめ」で連載。それぞれ親元を離れた4人の少年グレアム、アンジー、サーニン、マックスが、親ではなく本当の愛をくれる人をもとめて一緒に放浪生活を続け、成長していく物語だ。少女マンガ誌らしいコミカルな描写を交えながら、「人は肉親のように本来親しいはずの人間とであっても、どうしても相容れないことがある」という世界観が描かれ、熱狂的な読者を獲得した。

    「別冊花とゆめ」創刊号のカラー口絵

    はみだしっ子の主人公の1人・グレアム。こちらは「別冊花とゆめ」創刊号のカラー口絵

     

    会場に置かれたトランク(三原順の私物)には「はみだしっ子」の付録やプレゼントなど関連グッズがぎっしり詰まっていて、当時の読者たちから大きな人気を得ていたことがわかる。原画の中には「別冊花とゆめ」の創刊号(1977年)で飾ったというカラー口絵が。同誌では「グレアム大特集」のようにキャラ単独の特集が何度も組まれていたそうだ。

    三原順私物のトランクに詰め込まれた、「はみだしっ子」や「ルーとソロモン」グッズ

    三原順私物のトランクに詰め込まれた、「はみだしっ子」や「ルーとソロモン」グッズ

    壁に掲げられた原画と、「三原順・復活の流れ」をまとめた年表

    壁に掲げられた原画と、「三原順・復活の流れ」をまとめた年表

     

    三原作品がどれだけ人の心を掴むものなのかは、年表「三原順・復活の流れ」で知ることができる。彼女は「はみだしっ子」以降も数々の名作を生み出したが、亡くなる直前はほとんどの単行本が入手困難という状況。1995年に42歳で病没した直後は出版界でさほど大きく取り上げられることもなく、世の中から忘れ去られるかのような存在にあった。

     しかしファンが訃報を知るや、三原順の同人誌を作るなどして追悼し、20年にわたって「三原順・復活」とも言うべき活動を続けてきた。公式サイトの開設、全集の発売や復刊を求める署名運動、展示会の実施など。2000年代には「復刊ドットコム」(当時「ブッキング」)の復刊第1号「かくれちゃったの だぁれだ」を皮切りに続々と単行本が復刊され、2002年にはとうとう未収録作品などをまとめた新刊まで出版。2011年には既刊の単行本がすべて文庫化された。年表を通し、作品を世に遺そうとするファンの意志と、それが今回の展示会まで結びついているのを確認すると、三原順という作家の影響力に感嘆せずにはいられない。

    没後に刊行された三原順の関連書籍の数々。三原順特集を行った雑誌や追悼同人誌、新刊の豪華版など

    没後に刊行された三原順の関連書籍の数々。三原順特集を行った雑誌や追悼同人誌、新刊の豪華版など

     

    2015年には次々と電子書籍化も行われて気軽に読めるようになった三原作品には、今の社会問題に通じるような題材が度々登場する。その先鋭性について主催の米沢嘉博記念図書館のスタッフ・ヤマダトモコさんは、「どの作品を読んでも“今”を考えさせられる」と舌を巻く。

     例えば「はみだしっ子」の4人の少年は、現代でこそよく扱われるような家庭問題をそれぞれ抱えている。グレアムは父から高圧的な教育を受け、アンジーは母から育児放棄され、サーニンは母を亡くして失語症になり、マックスは酒乱の父親から虐待のうえ殺されかけたという過去を持つ。彼らを外からの目線ではなく、内側から描きながら、深刻な問題と向き合っている。

    「大人になった今読み返すとびっくりする発見がいっぱいあります。また子どものころは子どもたちの目線で読んでいたけど、今は登場人物の大人たちの立場もわかる。大人でも悪人でも、それぞれの価値観がしっかりと描かれていて驚きます」(ヤマダ)

    「はみだしっ子」後半で4人は裁判に挑むことになるが、そこでは当時まだ日本になかった陪審員制(裁判員制)が描かれる

    「はみだしっ子」後半で4人は裁判に挑むことになるが、そこでは当時まだ日本になかった陪審員制(裁判員制)が描かれる

     

    ほかにも「Die Energie 5.2☆11.8」(1982年)は原子力発電所の幹部職員が主人公。「原発問題というのは、原発に勤める人と反対する人、どちらの立場も考えた上で、折り合いを付けなくてはならないことを教えてくれる」(ヤマダ)とのこと。「ムーン・ライティング」(1984年)は、狼男の祖父に憧れていた美しい少年が、なぜか豚男になってしまう悲喜劇を描いた作品だが、「今見ると、ストーリーの伏線に、技術の進化に着いていけなくなるプログラマーの苦悩を描いていて驚いた」(ヤマダ)とも。IT社会の現代において共感する人は多そうだ。

    「こうした問題は、描こうとすると紋切り型な結末になりそう。なのに、三原さんは早くから扱っている上、折れずにまじめに向きあい、作品に落としこんでいます。三原作品を読んでいると、考えなければならない社会問題について三原さんと一緒に考えることができるはずです」(ヤマダ)

    作中に登場する「愚者の祭り」について、2ページにわたってびっしり研究メモがと書かれている三原順のノート。思慮の深さがうかがえる

    作中に登場する「愚者の祭り」について、2ページにわたってびっしり研究メモがと書かれている三原順のノート。思慮の深さがうかがえる

     

     今年3月13日には白泉社から20冊目となる文庫「三原作品集 LAST PIECE」、4月には河出書房新社から総特集本も発売される予定で、三原順の世界はますます復活しつつある。全作品に触れられる状況を作るまで20年尽力してきたファンの方々へ敬意を払いつつ、三原作品を通してあらゆる現代の問題について考えたい。会場の米沢嘉博記念図書館の閲覧室(1日300円)には、文庫版全巻を始め三原順の関連書籍が設置されている。展示と一緒に観るのもオススメだ。

    会場の感想ノート

    会場の感想ノート。平成生まれだという人が、母が持っている三原作品を子どものころから読んでいてファンであると、グレアムの似顔絵付きで感想を書き込んでいた

    [執筆=黒木貴啓(マンガナイト)]


    ▼展覧会情報
    「~没後20年展~ 三原順 復活祭」公式サイト
    http://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-miharajun.html

    ■会期 2015年2月6日(金)~5月31日(日)

    ◎第一期:2月6日(金)~3月2日(月)
     グレアムと「はみだしっ子」特集
    ◎第二期:3月6日(金)~4月6日(月)
     アンジーと初期短編特集
    ◎第三期:4月10日(金)~4月29日(水・祝)
     サーニンと「ルーとソロモン」「ムーン・ライティング」「Sons」
    ◎第四期:5月1日(金)~5月31日(日)
     マックスと「X Day」ほか後期作品特集

    ■ 営業時間 平日(月・金のみ)14:00~20:00、土・日・祝12:00~18:00
     休館日 火・水・木、年末年始、特別整理期間

    ■ 会場 米沢嘉博記念図書館 東京都千代田区猿楽町1-7-1

    ■ 入場料 無料

  • 麦わらの一味の世界を体験してみよう!

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    3月13日、東京タワー フットタウン内に大人気コミック『ONE PIECE』史上初となる大型テーマパーク、「東京ワンピースタワー」がオープンしました。『ONE PIECE』の世界がそのまま飛び出したかのような同施設では、ライブエンタテイメントやアトラクション、ゲーム、限定グッズが手に入るショップ、オリジナルメニューを楽しめるレストランなどさまざまなアミューズメントが用意されています。

    舞台は新世界に浮かぶ断崖絶壁の島「トンガリ島」。海賊に憧れる島民たちは麦わらの一味がこの島に向かっていることを知り、盛大に彼らを迎えた。感激したルフィらはこの島をナワバリにすると宣言し、島民と一緒になって遊び場を作った。麦わらの一味が去ったあともその功績を伝えるため、彼らの冒険を追体験できるアソビ装置を作ったのだった――。

    来場者はトンガリ島の島民になりきって、アソビ装置で存分に遊べるのです。
    さあ、麦わらの一味の世界を体験してみましょう!

    ルフィとチョッパー

    エントランスではルフィとチョッパーがお出迎え

    トンガリ港(ポート)へ続く洞窟

    3 Fいりぐちフロアの「出会いの洞窟」では、トンガリ港(ポート)へ続く洞窟を進みながら名シーンを振り返れます。近づくと音や光のギミックが動き出す

    好きなキャラ

    好きなキャラに触れるとフキダシが飛び出してきます

    トンガリ港では島民が迎えてくれるぞ〜! クルーのコスチュームは尾田栄一郎先生のデザイン

    トンガリ港では島民が迎えてくれるぞ〜! クルーのコスチュームは尾田栄一郎先生のデザイン

    酒場では全員集合

    酒場では全員集合。宴会中みたいです

    盛り上がってるゥ!!

    盛り上がってるゥ!!

    なりきりコーナー

    「なりきりコーナー」ではキャラクターになりきるグッズを販売。身につければテンションが上がること間違い無し

    4Fまんなかフロアへまいりま〜す

    4Fまんなかフロアへまいりま〜す

    ロビンの古代文字の謎を終え

    4Fでは「ロビンの古代文字の謎を終え」「ゾロの一刀両断」「ブルックのホラーハウス」など麦わらの一味のアソビ装置を楽しめます

    ナミのカジノハウス

    こちらは「ナミのカジノハウス」

    フランキーのコーラバー

    「フランキーのコーラバー」ではフランキーが大好きなコーラと、コーラにぴったりなスナックを用意しています。お姉さんたちもノリノリ!!

    フランキーのヘ・ン・タ・イボールコースター

    1回500円の「フランキーのヘ・ン・タ・イボールコースター」。ハズレなしでグッズが必ず手に入ります

    ウソップの目指せ狙撃王(そげキング)

    「ウソップの目指せ狙撃王(そげキング)」をバックに、島民の挨拶である「トンガリ〜!」をしてくれるお姉さん。こちらも元気良く「トンガリ〜!」で返しましょう

    チョッパーのサウザンド・サニー号体験

    「チョッパーのサウザンド・サニー号体験」は絶対に、絶対に見てくださいよ! サウザンド・サニー号の中に入れちゃうんですよ!

    キッチン

    キッチンへやってきた

    何かありそうな雰囲気……

    何かありそうな雰囲気……



     

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    (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
    (C)Amusequest Tokyo Tower LLP

    => ナミとロビン、女子2人のお部屋

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    3月3日、秋葉原の工作スタジオ『DMM.make AKIBA』にて、東京アニメアワードフェスティバル2015、アニメドールトロフィー制作発表が行われた。

    DMM.make AKIBA では、レーザーカッター、3Dプリンターなど、パソコンと連動する高度な工作機械や設備を一般に貸し出し、フィギュア、アクセサリー、スポーツ用品、スマートフォンケースなど、アイディア次第であらゆるモノが製作できるスタジオとして開放している。
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    3Dプリンターで作成された品々。

    3Dプリンターで作成された品々。

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    3Dプリンターで作成された、大河原邦男氏デザインのトロフィー。

    アニメドールとは、アニメアワードフェスティバルにて、アニメを変え、時代を変え、世界を変え、未来を変える力を持ったクリエイターや作品に授与される特別賞であり、スタジオジブリの高畑勲監督、アンパンマンに授与されてきた。

    会場には、トロフィーをデザインしたメカニックデザイナーの大河原邦男氏、DMM.makeプロデューサーの小笠原治氏、株式会社Cerevo代表の岩佐琢磨氏、トロフィー3Dデザインを担当した吉田晃永氏らが集まり、トロフィー制作秘話、アニメがモノ作りへもたらす影響力を、熱く語ってくれた。


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    大河原:「トロフィーは、金属、メッキ、白木など、異なる素材を組み合わせる難しい課題がありましたが、とてもチャレンジしがいがありました。日本橋にある麒麟の像の羽と、スチームパンクを連想するデザインが浮かび、『これしかない!』と決めてデザインしました。このデザインはアニメではありえないデザインですが、現物を見て大変満足しています。

    3Dプリンター等の最新技術によってアニメのロボットが現実になっていくのを見て、とても責任を感じますね(会場、爆笑)。
    とある大学のエンジニアが、「これは『ボトムズ』のAT(注:大河原氏がメカデザインを担当したアニメ作品『装甲騎兵ボトムズ』に登場するロボット)です!」と、自作のロボットを見せてくれたときは感激しました。今、多くの核家族や独居老人がペットを飼っていますが、そういった可愛いロボットがどんどん流行っていくのではないでしょうか。
    自分のデザインしたメカでは、ヤッターマンのような暖かみのあるデザインが好きで、そういったロボットが見てみたいですね。」

    吉田:「大河原先生のデザインを見て、実際に動かすことを想定して作りました。また、すべてのパーツに曲面をつけ、暖かみを感じさせるデザインになっています。3Dデータは、DMM.make AKIBAで作りました。

    このスタジオの設備なら、金型を使った造形ではなく、3Dプリンターを使った圧倒的な製作スピードが実現しました。あとは、やはりアイディアですね。」

    小笠原:「どんな人でもアイディア次第でモノ作りができる環境を整えたいと思っていました。音楽業界では、エイベックスなどがインディーズアーティストの作品を世に出すサポートを行っていますが、造形の業界では我々がインディーズクリエイターのサポートを行えたらと思っています。

    IOT(『Internet Of Things』。モノに通信機能を搭載すること)や、ハーフボーグ(人体に装着するサイボーグ装置)などを連想します。人間やモノが、それごとネットに繋がる可能性を拡げていきたいと思います。」

    岩佐:「日本のデザインは海外ではまだまだ評価が高いです。私の会社では”スピード”を最大の武器としていて、製作するスピードを最大限にアップさせ、どんどん新しい試みや挑戦を行って、デザイン性を向上させています。

    私は、”役に立たないロボット”が好きで、ロボットの究極である人間と同等の機能にはまだまだ追いつかないから、どこか欠けている部分があるロボットがあると、人間が『しょうがないな』と手助けして、人間とロボットの間が埋まっていくと思います。そういう点で、愛着の湧く外観デザインがとても重要だと思います。」

    【60歳を過ぎてから、モノ作りを楽しむ】

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    また、大河原氏はモノ作りに対する独自の熱い想いも語ってくれた。

    「私自身、実は絵を描くより、モノを作る方が好きなんです。
    アニメは、マーチャンダイジング(消費者に応える商品作り)のもと、大勢のスタッフの意見をまとめて作るので、私個人の意見を押し通すわけにはいかず、あまり自由がききません。作中ロボットのデザインをオモチャ会社へ提出するとき、『本当にこれは動くのか?』、『本当に変形や合体できるのか?』といった心配が起こります。メカデザインって、アーティストというより職人寄りで、何度も手直ししてOKをもらわなくてはいけない。過去に、担当さんがOKをくれたのですが社長の一言で変更になったこともあります(登壇者一同、「あるある」と頷き、会場爆笑)。
    そこで実際にロボットの模型を作って、社長の前で動かせて採用していただいたこともあります。それにはお金はもらわず、自宅で自主的に作りました。
    タツノコプロ入社後、美術の仕事に始まってガッチャマンのメカデザインを担当してから43年間、メカデザインという仕事を確立するため、多くの仕事をやってきました。
    60歳を過ぎてからは、仕事以外でやりたかったモノ作りを楽しんできましたね。
    自宅の作業場では、iPhone6の音を良くする木製スピーカーを作ったりしています。電子部品は使わずに、外装の構造だけで音を良くする仕様で。
    モノを作っているときってとても楽しくて、工具を使っていると、とても自由を感じます。ロボットに限らず、何でも作りたいです。
    DMM.make AKIBAさんでは、クリエイターが自由にモノ作りできる場所になってほしいですね。」


    アニメーション業界において、メカデザインという職種を確立するため活躍した大河原氏は、モノ作りの喜びを知る生粋のクリエイターであった。

    【 東京アニメアワードフェスティバル2015開催概要 】
    ■会期:2015年3月19日(木)~ 3月23日(月)
    ■会場:TOHOシネマズ 日本橋
    ■主催:東京アニメアワードフェスティバル実行委員会/一般社団法人 日本動画協会
    ■共催:東京都
    ■後援:外務省、観光庁、経済産業省、文化庁、中央区、国際交流基金、日本政府観光局(JNTO)、日本貿易振興機構(ジェトロ)、イスラエル大使館、フランス大使館、カナダ大使館

    「東京アニメアワードフェスティバル」公式WEBサイト  http://animefestival.jp

    「DMM.make 」 http://make.dmm.com

    [執筆・穂坂 拓麻/撮影・木瀬谷カチエ]

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    国内外からマンガ、アニメーション、ゲーム、アート作品が集まる第18回メディア芸術祭が2015年2月4日から2月15日まで国立新美術館で開催され、多くの来場者で賑わいをみせ終了した。あまりの人気ぶりに開催中に入場規制がかかるほどだった。

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    アート部門審査委員会推薦作品「I was looking for Park Hyatt Tokyo 」 JorgenAXELVALL © Jorgen Axelvall

    応募作品は国内外から集まり、アートあり、アニメーションあり、マンガあり、ゲームありと多種多様。アニメーション先進国の日本で評価されたいといった野望を感じる海外アニメーション作品と、それを迎え撃つメイドインジャパンの図式といった妄想が勝手に膨らみ、さながら芸術の異種格闘技といった感じであった。

    いくつか気になった作品をピックアップして紹介してみよう。


    大賞に選ばれたのはgoogleが仕掛ける「ingress」だった。GPSと連動し、街中をリアルに移動しながら遊ぶゲームで世界中で多くのユーザーを熱狂させている。プロジェクターで壁に映し出された映像美と、大きなイメージオブジェが展示されていた。床には多くの人の落書きがあり、何か意味深な謎めいた暗号も見られた。

    大賞  「Ingress」

    エンターテインメント部門大賞「Ingress」 Google’s Niantic Labs (創業者:John HANKE) ©Google / Niantic Labs

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    「Ingress」 展示の様子

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    「Ingress」展示の様子

    体験したい人で行列になっていた先には、優秀賞に選ばれた「3RD」があった。三角の被り物にスマホのモニターが取り付けられている。被り物内のモニターには天井から自分自身を映し出した映像が流れており、第三者の目線を見ながら歩き回るという体験アトラクションとなっている。

    優秀賞 「3RD」

    エンターテインメント部門優秀賞「3RD」 Hedwig HEINSMAN / Niki SMIT / Simon van der LINDEN ©Monobanda PLAY / DUS architects

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    「3RD」 展示の様子

    「のらもじ発見プロジェクト」にも多くの人が集まっていた。実在するお店の看板などに描かれた文字を「のらもじ」と定義し、実際に使われている文字を参考に五十音の文字を新たに制作し、フォントとして販売をしている。キーボードを打つことで映し出された店の看板が打ち込んだ文字に変換されるというアート作品になっていた。

    優秀賞 のらもじ発見プロジェクト

    エンターテインメント部門優秀賞「のらもじ発見プロジェクト」 下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也 © 2014 Noramoji Project

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    「のらもじ発見プロジェクト」 展示の様子

    「センシング・ストリームズー不可視、不可聴」は坂本龍一、真鍋大度の作品。普段、目にすることができない電磁波を映像化。場所や周波数を専用コントローラーで変更することができ、電磁波が8種類のビジュアルパターンで表現されていた。

    優秀賞 「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」

    アート部門優秀賞「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」 坂本 龍一/真鍋 大度 © SAKAMOTO Ryuichi / MANABE Daito

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    「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」 展示の様子

    アニメーション部門の大賞はロシアの作家の作品「The Wound」が選ばれた。「クレヨンしんちゃん」、「ジョバンニの島」といった日本のアニメーションのほか、アルゼンチンやフランスの作品も優秀賞に選ばれ、グローバルな作品の顔ぶれになっていた。

    大賞「The Wound」

    アニメーション部門大賞「The Wound」 Anna BUDANOVA ©Ural-Cinema

    優秀賞 「ジョバンニの島」

    アニメーション部門優秀賞「ジョバンニの島」 西久保 瑞穂 ©2014 JAME

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    「ジョバンニの島」 展示の様子

    優秀賞 「映画クレヨンしんちゃん「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」}」

    アニメーション部門優秀賞「映画クレヨンしんちゃん「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」」 高橋 渉 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014

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    「映画クレヨンしんちゃん「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」」 展示の様子

    新人賞 「たまこラブストーリー」

    アニメーション部門新人賞「たまこラブストーリー」 山田 尚子 ©Kyoto Animation/Usagiyama Shopping Street

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    「たまこラブストーリー」 展示の様子

    マンガ部門の大賞は近藤 ようこ(原作:津原 泰水)の「五色の舟」が選ばれ、原画が大きく飾られていた。太平洋戦争末期を時代背景に、見世物小屋の一座として糊口をしのぐ異形の者たちの姿を描いた作品は多くの人に衝撃を与えていた。

    大賞「五色の舟」

    マンガ部門大賞「五色の舟」 近藤 ようこ/原作:津原 泰水 ©Youko Kondo/Yasumi Tsuhara 2014

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    「五色の舟」 展示の様子

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    「五色の舟」 展示の様子

    優秀賞「アオイホノオ」

    マンガ部門優秀賞「アオイホノオ」 島本 和彦 ©Kazuhiko Shimamoto/SHOGAKUKAN

    「アオイホノオ」 展示の様子

    「アオイホノオ」 展示の様子

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    「アオイホノオ」 展示の様子

    新人賞「愛を喰らえ!!」

    マンガ部門新人賞「愛を喰らえ!!」 ルネッサンス吉田 ©Renaissance Yoshida 2013

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    「愛を喰らえ!!」 展示の様子

    新人賞「どぶがわ」

    マンガ部門新人賞「どぶがわ」 池辺 葵 © AOI IKEBE

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    「どぶがわ」 展示の様子

    新人賞「ちーちゃんはちょっと足りない」

    マンガ部門新人賞「ちーちゃんはちょっと足りない」 阿部 共実 ©T.ABE2014

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    「ちーちゃんはちょっと足りない」 展示の様子

    優秀賞「春風のスネグラチカ」

    マンガ部門優秀賞「春風のスネグラチカ」 沙村 広明 ©Hiroaki Samura 2014

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    「春風のスネグラチカ」 展示の様子

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    「春風のスネグラチカ」 展示の様子

    優秀賞「羊の木」

    マンガ部門優秀賞「羊の木」 いがらし みきお/原作:山上 たつひこ ©IGARASHI Mikio, YAMAGAMI Tatsuhiko/KODANSHA

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    マンガ部門優秀賞「チャイニーズ・ライフ」
    李 昆武/フィリップ・オティエ/訳:野嶋 剛 Une vie chinoise – T1-2 2009, T3 2011
    © Kana(DARGAUD-LOMBARD s.a.), by P.Ôtié, LiKunwu www.mangakana.com All rightsreserved Published in Japan by arrangement with Mediatoon Licensing, through le Bureau des Copyrights Français.

    優秀賞には、マンガ家デビューを志す熱血マンガの島本 和彦の「アオイホノオ」ほか、「チャイニーズ・ライフ」「羊の木」「春風のスネグラチカ」が選ばれた。

    会場で販売していた受賞作品集は、期間限定で3月10日(火)まで公式ウェブサイトでご購入可能。
    詳細は、文化庁メディア芸術祭公式ホームページから。http://j-mediaarts.jp

    [執筆・眞形 隆之/撮影 ・木瀬谷カチエ]

  • 大今良時原画展


    東京・青山のギャラリー「GoFa」で、2月7日、「-聲の形-完結記念展 大今良時原画展」が始まった。大今良時氏の『聲の形』(講談社)の完結を記念したもので、3月8日の終了までに累計約130の原画が展示される。

    会期は2つに分かれ、『聲の形』の原画が入れ替わる予定だ。大今氏が作画を担当した『マルドゥック・スクランブル』(原作:冲方丁)の原画と合わせてみることで、マンガ表現の可能性を実感できる空間になっている。

    原画展には多くの人が詰めかけている

    原画展には多くの人が詰めかけている


    『聲の形』は聴覚の障害によっていじめを受けるようになった少女・西宮硝子と、そのいじめの中心にいた事で周囲に切り捨てられ孤独になってしまう少年・石田将也、2人の関係を中心に、人間の抱える孤独感や生きづらさを描く物語。読み切り作品として「別冊少年マガジン」などに掲載されて反響を呼び、連載が決まった。
    大今良時原画展

    冒頭エピソードなど印象的なシーンの原画が並ぶ

    読者に深く考えさせる重いテーマだが、全体的にやわらかく、描き直しの少ない迷いが見られない線で描かれていることで、うまく作品世界全体のバランスが取れているように感じられる。

    当初はそのテーマや物語展開が注目されたものの、原画展で改めて絵に注目すると、絵とその表現方法の完成度も高いことがわかる。絵と文字だけで構成され、音のないマンガというメディアは、音のない世界に住むろう者を描くのに向いているのではないか、とすら思わされた。

    大今良時原画展

    主人公、石田将也の意識外にあることを示すバツ印が外れたシーン。トーンと黒塗りを組み合わせて髪の毛を表現していることがわかりやすいのも原画ならでは。


    例えば、途中から石田以外のキャラクターの顔の上に貼り付けられることになるバツ印。物語のほとんどは石田の視点で進むため、彼の意識に入っているのかそうでないかはこのバツ印で表現される。

    ちょっとしたことがきっかけでこのバツ印がはがれたり、また貼り付けられたりするときの、擬音語も含めた表現は、読者が石田に感情移入しやすくしているように思える。(そして一度も顔にバツ印がつくことのない、ヒロイン、西宮硝子は常に石田の世界にいたことになるのだろうか?)

    また、モノクロの雑誌掲載を想定し、黒一色で描かれた原画。しかしその黒も、ボールペンやサインペンを使い分けているようで、同じ黒でも少し色味が違うのだ。このテクニックを具体的に知りたい方は、会場で上映している動画が参考になる。入場特典のイラストペーパーを描くところを撮影したもので、ペンを持ち替えて線を描いたり色を塗ったりしていることがわかる。

    大今氏の描き方をじっくり見ることのできる映像は貴重な機会_R

    大今氏の描き方をじっくり見ることのできる映像は貴重な機会_R


    =>「マルドゥック・スクランブル」の原画から見る魅力
  • 「御堂筋ぃ!」「真波くん!」「巻ちゃん」「青八木ー!」「今泉くんー!」  会場に集まった131人の『弱虫ペダル』ファンが、作者の渡辺航先生に生で描いて欲しいキャラクターを次々と叫んでいく。どのファンの声にも応えたくて苦悩する渡辺先生。意を決して「じゃあ御堂筋描きます!」と発表、会場全体から上がる黄色い声。熱気がインターハイ会場のゴール地点レベルだ。

    手嶋の名セリフ「ティーブレイク!」で乾杯する会場

    手嶋の名セリフ「ティーブレイク!」で乾杯する会場

    『弱虫ペダル』の渡辺先生の公式トークイベント「渡辺航のペダルナイト2~ザ・ペダル新年会!」が、1月19日に東京カルチャーカルチャー(東京都江東区)で開催された。渡辺先生のファンサービス精神の高さから“神イベント”と称された「ペダルナイト」が、熱望に応えて約1年ぶりに復活。前売りチケットは即完売、来場者131人(うち女性129人)には台湾からやって来たファンもいたことからも、イベントへの期待値の大きさがうがかえる。

    右から渡辺先生、司会のカルチャーカルチャー店長・横山シンスケさん

    右から渡辺先生、司会のカルチャーカルチャー店長・横山シンスケさん

    ファンの弱ペダ愛もさることながら、参加してみてわかったのは渡辺先生自身が非常に愛にあふれたマンガ家であるということ。自転車への愛、作品への愛、ファンへの愛……これらが先生のトーク、ライブペインティングなどあらゆる企画を通してひしひしと伝わってくる2時間半だった。明かされた作品の裏話の数々とともに、イベントの様子を紹介しよう。アニメでまだ登場していないシーンにも触れるので、コミックスを読んでいない方々はご注意を。

    会場に集まった131人の弱ペダファン

    会場に集まった131人の弱ペダファン

    トーク中はイベント限定メニューも食べられる。右は巻島の異名「ビークスパイダー」にちなんだ「スパイダートースト」

    トーク中はイベント限定メニューも食べられる。右は巻島の異名「ビークスパイダー」にちなんだ「スパイダートースト」

    ■「練習時間がなくなったらヤバイ」 並々ならぬ自転車愛

     イベントが始まると、渡辺先生は自前のロードバイク・コルナゴC60に乗って笑顔で登場。服装も総北高校の黄色いジャージを着ているなど、のっけから弱ペダワールド全開の先生にお客さんから歓声とフラッシュが浴びせられる。

    先生、チャリで来たー!!!

    先生、チャリで来たー!!!

    渡辺先生は週刊連載を抱えた多忙な日々を送りながらも、サイクリングの練習は決して欠かさないほど自転車好きだという。

    「編集さんにいつも言っているのが、ぼくは自転車を練習する時間が無くなったらもうやばいんで、そこだけは確保してくれといっているんです。毎週カラー描いてくれとも言われるんですけど、ちょっとセーブして……! って話をしてますね」(渡辺)

     その自転車熱の高さはプライベート写真の公開でますます明らかに。サングラスの先生が日本各地でサイクリングしている写真が20~30枚ほど大画面に映し出されていく。先生の地元・長崎のメガネ橋、御嶽山の麓のゴツゴツした山道、愛媛と広島を結ぶサイクリング専用ロード「しまなみ海道」。夏に長崎へ帰省したときは神戸から5日間かけて680キロ走ったそうだ。とにかく走ることへの情熱がはんぱない。

    自転車のプライベート写真を公開する先生。自撮りするときはこの角度が多い

    自転車のプライベート写真を公開する先生。自撮りするときはこの角度が多い

    あるロードレースの写真。奥に見える山に小さな茶色い線が走っていて、「あれもコースなんです」と先生が説明すると会場がどよめく。レースで走りながらあんな遠くまでコースが続いていることがわかっていたら、普通ならば気が滅入りそうだ。

    「走りながらずっと遠くの道を見て、今からあそこへ向かうのかぁって気持ちになるのが好きなんです。あの尾根が終われば下り道になると思っていたら、実はまだ上り道が続いていた、とか。行く前は無理なんじゃないかと思うけど、いざ終わってしまえば『行けば行けるんだな』って達成感に変わる。『オレ生きている』と感じるんです」(渡辺)

     まるで箱根学園のクライマー・真波山岳のような発言。弱虫ペダルのどんな逆境でもキャラクターたちが勝利をあきらめない熱い展開は、渡辺先生の自転車への愛にも直結しているようだ。

    渡辺先生。イベント後半は、箱根学園のジャージに衣装をチェンジ

    渡辺先生。イベント後半は、箱根学園のジャージに衣装をチェンジ

    ■「古賀が勝手に拳を突き上げた」 作家としてのキャラクターへの愛

     総北高校で部員のサポート役に徹していた古賀公貴が、実はかなりの実力者だったことが明らかになる合宿編(坂道2年生時)。1年生のころインターハイのレギュラーだったことを古賀が証明するため、ジャージを脱いで、あらかじめ着ていたインターハイ時のジャージをバッと披露するシーンがかっこよすぎると会場は盛り上がる。司会の横山シンスケさん(東京カルチャーカルチャー店長)にとっては「弱ペダ史上一番」の場面とのこと。

    古賀のジャージ披露シーン

    古賀のジャージ披露シーン

    「こんなシーン誰も想定してなかったですよ。ジャージ on ジャージですからね! そしてみんなに見せつけたあとに『これが一番わかりやすいだろうと思ってな……』とか言うんですよ! 新開の『バキューン』は新開のキャラに書かされたって前のイベントで言っていたように、この古賀のセリフも書かされた感じですか?」(横山)

    「キャラクターに書かされた感じがありますね。古賀はすごくビュンビュン走ってくれるんですよ。肩で風切ったり、手嶋とのスプリント勝負で勝手に拳突き上げたり」(渡辺)

     合宿編でインターハイ出場をかけた戦いに敗れてしまう古賀。しかし「キャラが立ちすぎてたので、描いててインターハイで走らせたいと思ってしまった」と渡辺先生はいう。作家の意向にゆさぶりをかけてくる古賀もすごいが、それほどキャラクターというものと客観的に向き合っている渡辺先生の作家性にも驚かされる。

    葦木場のホクロについても「だんだんハート型になってますよね(苦笑)」と自覚があったことを暴露

    葦木場のホクロについても「だんだんハート型になってますよね(苦笑)」と自覚があったことを暴露

      『弱虫ペダル』のキャラは設定も非常に深い。イベントでは作中で言及されていない裏設定が先生の口から次々と飛び出した。

      「箱根学園の荒北靖友が乗っているBianchiの自転車は、高校1年生のとき福富寿一が乗っていたのをもらい受けたものだった」「最初の合宿で手嶋と青八木が着けている“必勝グローブ”は、2人で1組のグローブを買って片一方ずつはめている」などなど。キャラ同士の絆を深めるエピソードが飛び出すたび、参加者たちも大いに盛り上がる。

      作品の難問を解く企画「ペダル検定」の答え合わせで、総北のインターハイ出場メンバー(坂道2年生時)が並んでいるカラー見開きがスクリーンに映し出された。みんな同じ黄色いジャージを着ているように見える。

    総北のインターハイ出場メンバーのカラー見開き

    総北のインターハイ出場メンバーのカラー見開き

    「実は鏑木くんだけジャージの色を明るく塗っているんですよ。(1年生だから)新しいジャージなんで、同じ黄色でもわざわざ塗り替えてあります」と渡辺先生は告白。細かすぎる……! このように読者が気づかないような細部でもこだわってしまう情熱が、対話できてしまえるほどキャラ1人1人を活き活きさせるのかもしれない。読者が弱ペダキャラに熱狂してしまうのも大きくうなずける。

     弱ペダのスピンオフシリーズ『SPARE BIKE』に次は誰を出すかという話になった。「巻数が行けば荒北をやる可能性もあると思います。田所とか、金城さんとか……」と言う先生に、「必ず金城は『金城さん』って敬語になりますよね(笑)」と横山さんがツッコむ。「年上感半端ないんです。敬語になります」と照れ笑いする先生。自ら生み出したキャラに謙遜してしまう作家性、すごすぎる。

    ■全員への握手からキモッキモッポーズまで 旺盛すぎるファン愛

     極めつけはファンサービスだ。  渡辺先生がその場でリクエストを受けてライブペインティングした色紙の数は8枚。手嶋を描いたら空けておいたスペースに青八木を添え、巻島を描いたら東堂を加えてと、リクエストキャラの隣に関係の深いキャラを、何の前フリもなしに描き足していく。黒田&泉田、古賀&杉本など、ペアが作られるたびに歓声と拍手が起こる会場――先生、熟知しすぎです。

    御堂筋をライブペインティングする先生。どのキャラも50秒くらいと、描くのがめちゃくちゃ速い

    御堂筋をライブペインティングする先生。どのキャラも50秒くらいと、描くのがめちゃくちゃ速い

    黒田の隣に泉田を描き始めた先生。泉田は目から、手嶋は前髪からと、描き始めるところがキャラによって違うのも見どころだった

    黒田の隣に泉田を描き始めた先生。泉田は目から、手嶋は前髪からと、描き始めるところがキャラによって違うのも見どころだった

    一番歓声が起こった古賀&杉元、補給チーム

    一番歓声が起こった古賀&杉元、補給チーム 

    帰りにも参加者131人へ、自筆サイン入りポストカードを1枚1枚手渡し。笑顔で握手して一二言交わす。19歳女性も「イベントに参加して先生の人柄が好きになりました」、30代女性も「すごく気さくで笑顔も素敵でさらにファンになりました」と語るなど、イベント初参加だったお客さんは先生にますます惹かれていた。

    参加者一人一人に握手する先生

    参加者一人一人に握手する先生

    さらには「バキューン」や「キモッキモッ」ポーズを披露するファンサービスも!

    さらには「バキューン」や「キモッキモッ」ポーズを披露するファンサービスも!

     最後はカメラを向けるファンたちに対し、人差し指を突き出して新開の「バキューン」、さらには両腕をL字に構えて御堂筋の「キモッキモッ」と、作中の名ポーズを連発。こちらの期待をいい意味で裏切り続けた挙句、「今日はありがとうございました!」と丁寧におじぎしてくれる先生に、参加者たちも惜しみない拍手を捧げた。退場の際もみんなに笑ってハイタッチをしていく。畏敬の念や親しみを感じられずにはいられない。

     自転車への愛、作品への愛、ファンへの愛、いずれも並々ならぬものがあった渡辺先生。『弱虫ペダル』の熱量の高さにうなずき、そして先生ごと作品を一層好きになってしまうファンイベントだった。早くも第3回目の開催が待ち遠しい……!

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    [執筆=黒木貴啓(マンガナイト)]

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    2月6日(金)13:00 ~2015年2月26日(木)まで、下北沢「yonpo」にて、新井英樹さん原作『SCATTER』6巻刊行を記念して原画展が本日6日より開催。『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』など、圧倒的な筆致で描かれる新井作品は多くのファンから熱狂的な支持を得ています。最新作『SCATTER』の貴重な原画展示の様子をレポートします!

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    yonpoは漫画家のイラストを使用したTシャツを多く販売する店舗。朝倉世界一さん、カネコアツシさん、鬼頭莫宏さん、ダーティー・松本さん、寺田克也さん、三宅乱丈さん、羽生生純さんなど多くの作品を取り扱っている。

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    新井英樹さんの貴重なサイン本も販売。

    新井英樹さんの貴重なサイン本も販売。

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    yonpoの店主の玉井さんにこの度の原画展についてお伺いしました。

    Q ・今回新井英樹さんの原画展を開催するにあたってのきっかけを教えて下さい。

    玉井: 『SCATTER』が好きで、今回6巻が出たのをきっかけに原画展をしたいと思いました。新井さんの原画を見てみたいと思っていたので良いきっかけになりました。

    Q  新井作品の魅力はどこでしょうか?

    玉井: 残虐な暴力描写があったかと思えば、人の心に訴えるようなグッとくるシーンがあったり、先が読めない展開に魅力を感じます。『SCATTER』はこれまでの作品の中でも縛られることなく好きに描いてるような所も魅力的です。

    Q  yonpoでは多くの漫画家Tシャツが発売されていますが、セレクトのポイントはどこでしょう?

    玉井: 自分が好きな漫画家さんのものを作っています。作ってる漫画家さんの作品に魅力があるので自ずと、好きな人が集まるんだと思います。最新の発売したものはカネコアツシさんの作品『BAMBi』のTシャツや、去年話題になった『あれよ星屑』の山田参助さんのTシャツもあります。

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    新井英樹さんの「SCATTER」サイン本は残りわずかですが購入可能との事。
    他にも、ポストカード4種と、2月13日(金)から『ザ・ワールド・イズ・マイン』Tシャツが店舗にて販売。ファン垂涎のアイテム、是非この機会にチェック!

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    『ザ・ワールド・イズ・マイン』2月13日(金)から店舗で発売。yonpoWEBサイトでは現在予約受付中。

    『ザ・ワールド・イズ・マイン』2月13日(金)から店舗で発売。yonpoWEBサイトでは現在予約受付中。

    [yonpo]
    住所:東京都世田谷区北沢2-12-2 ミナナミコーポ105
    電話:070-5576-3680
    営業時間
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     [執筆・撮影 木瀬谷カチエ]

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    MangaStyle掲載の立花さんへのインタビューをパネルにして展示していただいてます。

    MangaStyle2014年11月掲載の立花さんへのインタビューをパネル展示していただいてます。

    2015年1月26日 〜 2月7日に銀座・ヴァニラ画廊にて開催中の写真展『女装の軌跡と幸福論』。女装写真家であり女装コーディネーターとしても活躍中の立花奈央子さんの最初期の作品から最新のプロジェクトまでを展示する写真展です。

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    MangaStyle編集部は昨年11月に個展開催情報と共に立花さんにロングインタビューを慣行。これまで1000人に及ぶ女装写真を撮影してきたという立花さんが思う女装論を語っていただきました。

    インタビューから2ヶ月後の2015年1月にいよいよ本写真展が開催、31日には、ゲストに加茂碧唯さん(アイドルグループ「恥じらいレスキュー」メンバー)、レディビアードさん(ヒゲ女装パフォーマー)宮田徹也さん(美術評論家)を迎え立花さんとのクロストークイベントが行われました。

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    宮田: 女装というテーマに至った経緯を聞かせていただけますか?

    立花: 私は子供の頃から派手な衣装やお化粧に凄く憧れがありました。そういうものってゲイカルチャーにおけるドラァグクイーンがまさにそれにあたる存在で、強い憧れを持っていました。
    18歳で就職してすぐに新宿二丁目で遊び始めたんです。ゴールデン街でバイトを始めた時に出来た繋がりの中に凄く素敵な女装の方がいらっしゃったんです。いつも自分が思う自由なファッションをしていて、本人も凄く上品で格好良いなと思っていました。その頃の女装というのは今ほど綺麗なメイクではなく、極端な衣装やメイクが多くて女装=変態趣味というイメージが強かったんです。確かにそういう見え方はあるんですけど、やりたい事をやれないという風潮をみていてなんか悔しいと思ったんです。でもそういう事って言葉にしても中々変わらないから、じゃあ私が実際にメイクして綺麗な女装の人を増やしていったら世の中の見る目も変わるかなと思ったんです。

    当時mixiとかで女装してみたい人の募集して、実際に会って片っ端からメイクしていったんですが、そうしたらものすごく喜ばれて、今までやる人が居なかったんだなって気がついて後に仕事にするようになりました。

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    立花: 何か物事を変えようとする時に、理論武装して言葉を一杯使ってしまいがちで、セクシャルマイノリティのジェンダー論を戦わせている人達って一所懸命に難しい言葉を使って自分達の居場所を勝ち取ろうとしているんですけど、言葉の正しさだけでは何も伝わらなくて、人間は価値観が違う人が沢山いるし、分からない人は分からない。でも人としてきちんとしていたら必ず味方は少なからず現れてくれると思っているんですね。
    こういう風にいろいろなものを創って出すというのは色々な人達がいて、それぞれの形で生きてますよというのを見せるのが一番私にとっては良いやり方なのかなと思ったんです。

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    立花: 展示の中で一つだけ人が映ってない写真があります。この写真は私の友人の実家の写真なんですけれども、この子はもうこの世には居なくて、写真はお母さんの許可をもらって撮影しました。この部屋に住んでいた子は生まれつき心が女の子で、結局性転換までするところまでいったんですね。性転換はしたんですけど、それが人生のゴールみたいになっちゃってたんです。トランスジェンダー界隈の人達はいかに女性になるかという事を目標にしがちで、そこから先どうやって生きるかという軸を立てられていないケースが結構多いんです。残念ながら彼女もそういうかんじで、女にはなったけれども、この先どうするかというと自分を認めてくれる存在として、男性に全部自分を委ねちゃったんですよ。そうすると男性に受け入れられなかった時に自分の全てが否定されてしまったような気になって、上手くいかなかったのは自分が男だったせいだって考えたりするようになるんです。
    確かにそれは一つの原因だったかもしれないけれども、でも自分の心の持ち方次第でいかような生き方も選べるんだと思います。今会場に展示されている写真というのは、生き方の一つして私なりの答えではあるんです。

    彼女は一番の理解者であるお母さんがいつも傍にいたんですけど、結局自分を肯定出来ずにこの世に別れを告げる事を選んでしまいました。お母さんは「男でも女でもいいから生きていてほしかった」とずっと後悔しているので、本当に切なくて。生きるのが辛いからと言って死んだら駄目で、他の人に何を言われたからってそれで自分の可能性を狭めてしまうことは無いと思います。自分の芯さえあれば何でもやりたい事はやれると思っています。

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    第2部にはゲストの加茂碧唯(あおにゃん)さんとレディビアードさんが登場。

    立花: あおにゃんとの出会いは「ゆりだんし」の時にモデルをやってもらったのが最初で、ツイッターにすげー可愛い子がいると思ってナンパしたのが始まりでしたね。頼んでみたらものすごいモデルの才能のある子でそれ以降もお仕事を頼むようになりました。今回の写真展のカパー写真のモデルも務めていただいたりとお世話になってます。

    加茂: お声掛け戴いて有難うございます。

    立花: ビアちゃんの方はアメリカ人で俳優をやっている友人の紹介を受けて知り合いました。ビアちゃんは周りの人が楽しくなるから女装するんだよね。

    ビア: ハイ、みんなの楽しい、元気のかんじ、いつも私のフォーカスデスネ。ワタシ男性のかんじアル、もし女装したらみんなに面白いデスネ。

    立花: 男性性があってギャップがある方が面白みが増すからこのスタイルなんだよね。だから髭とツインテールは大事。

    ビア: 凄い大事。トレーニングも凄い大事。

    立花: あおにゃんはどうやったら女装になるんだと思う?

    加茂: 自分の場合は心に女性の服を着るかんじなんですよね。今回の写真展のカバー写真みたいに何も着てなくても、女性性を表現出来たらと思ってます。

    宮田: 初めてあの写真を見た時はおっぱいがあるように見えました。

    立花: ビアちゃんは撮影の時に可愛いポーズをして撮影されるときとかは何を考えてるの?

    ビア: 可愛いのポーズの時は、一番大事なポイントはスマイルで凄いエクストリーム必要ネ。ハッピーのコミュニケーションの事ネ。お客様と連絡の事が一番大事デス。

    立花: 愛嬌は大事ですね。どんなに顔が散らかっててもいつもニコニコしていたら周りも嬉しくなるし、可愛いなって思われたりするんで。私は女の子がおいしいご飯を食べてる時とか好きなんですけど笑。

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    立花: ビアちゃんは本物のアイドルだと思うんですよ。アイドルってお客さんを幸せにする事、元気にする事が仕事なんですよね。可愛いだけではなくて、自分のライブをみてもらった人に幸せになって帰ってもらうとか。ビアちゃんはやってる事がまさしくアイドルでしかもプロ意識が非常に強いんですよ、お客様の事を考えて楽しい感じ、幸せな感じをあげたいといつも考えてるから。

    ビア: that’s right、一番大事。

    立花: 女装としてはアウトサイダーだけども(笑)、アイドルとしてはまさに王道を行ってるんだと思います。

    あおにゃんは”男の娘”として王道だよね。”男”の”娘”と書いて”男の娘”。一般的には女の子にしか見えない男の子、でも本人は男という定義がありまして、それでいくとあおにゃんは男としての要素を残しつつ、女にしか見えないという要素も持ち合わせていて時代のアイコンにふさわしいのではないかと思います。

    こういうシンボル的に活躍できるモデルさんに共通しているのは、フォーカスが自分自身ではなく他の人の事を考えているんですね。どうやって自分を見せていくかという客観的な事をいつも考える事が出来るから、メッセージとして伝える時に非常に写真が強くなる。
    よくモデルとして使って下さいという人がいるんだけど、そういう人は可愛い自分の写真だけ使って欲しいみたいな事があったりして、作品にはあまり使えない事が多いんですが、この二人はいつも全部私に任せてくれてます。
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    会場の立花さんの作品には展覧会の表題「幸福論」のとおりに、女装した人達の幸せそうな姿が映し出されているのが印象的でした。
    女装という世界の物珍しさだけではない生き方の一つが映し出されています。写真展は今週7日(土)まで、銀座ヴァニラ画廊にて開催中。

    加茂碧唯さんは今後女性アイドルグループ「恥じらいレスキュー」唯一の男性メンバーとして参加しメジャーデューも決定。レディビアードさんは現在発売中の週刊プレイボーイにグラビアページが掲載とのこと。時代のアイコンともいえる女装を代表する二人の活躍も是非チェックされて下さい。


    立花奈央子(たちばな なおこ)

    女装コーディネーター、フォトグラファー、メイクリスト。 株式会社オパルス代表取締役。
    「フォトスタジオ大羊堂」を経営し、テレビ・雑誌等でも女装のスペシャリストとして活躍。 女装撮影や女装講座講師を行う中で、これまで手がけた男性は ジャニーズ所属のトップアイドルから70歳のベテランまで、のべ1000人を超える。
    より多くの人が性別に関する固定観念から脱し それぞれの自由と幸せを見出す契機とするために、 女装者の写真を撮り続けている。

    立花奈央子展「女装の軌跡と幸福論」
    開期:2015年 1月26日[月]~2月07日[土]
    会場:ヴァニラ画廊 新画廊 展示室 A
    住所:東京都 中央区銀座八丁目10番7号 東成ビル地下2F
    http://www.vanilla-gallery.com/archives/2015/20150126a.html

    時間:月~木曜12:00~19:00、金曜12:00~20:00、土、日曜12:00~17:00
    料金:500円

    ★刊行物

    2010年9月 「コスプレイヤーのための2.5次元フォトレタッチガイド」(株)アスペクト

    2011年12月 男の娘写真集「TRAP」(株)ミリオン出版

    2013年7月 女装男子写真集「ゆりだんし」(株)マイウェイ出版

    2014年5月 ヒゲ女装アイドルLadyBeard写真集「Sing,Dance,DESTROY!!」

    ★展示

    2009年3月 東京・新宿にて個展「彩色絢美」

    2010,11,12,13,14 東京・渋谷にて合同展「ポートレート専科2010」

    2011年12月17日~2012年1月15日 東京・原宿にて個展「七彩鑽石」

    2013年9月24日~10月6日 台湾・台北 littleMOCA にて個展「巡回展in台北 百合男子」

    作品サイト → http://crossdressjapan.com

    フォトスタジオ大羊堂:http://taiyodo.in

    立花奈央子 Twitter:@taiyodo_boss 

    碧唯くんTwitter:@ao_nyan_nyan

    Ladybeard Twitter:@Ladybeard_Japan


    [執筆・撮影 木瀬谷カチエ]
    ※会場写真の一部は立花さんからお借りしました。