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    手塚るみ子さんをホストに迎え、毎回ゲストから自分の分岐点となった局面を伺い、 創作の秘密を掘り下げていく対談企画・Crossroad。

    第三回目のゲストにお迎えしたのは、漫画家の松田奈緒子さん。現在『月刊!スピリッツ』誌上にて女性漫画編集者を主人公にした話題の作品『重版出来!』を連載されています。

    雑誌『コーラス』でデビュー以来、女性向け漫画を中心に発表し続けていた松田さんですが、近年青年誌へと発表の場を広げて以降、さらに多くの読者の目に触れる作品を執筆されています。

    松田さんの”自分の分岐点となった局面”とは?『重版出来!』の担当編集者、山内菜緒子さんも交えて、会話が始まりました。


    恋愛ものより「働く女の人」の少女漫画が好きだった

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    松田:この絵は、『はいからさんが通る』(大和和紀)を読んでいたときの絵です。私が小学校の四年生か五年生の頃ですね。当時は団地の五階に住んでいたんですけど、友だちが『はいからさんが通る』の単行本を貸してくれまして、母親が仕事から帰ってくるのが、だいたい夕方六時くらいなんですが、辺りが暗くなっても、漫画を読みふけって母親が帰ってきて「あんた、こんな暗いところで何しよってね」と言われて、我に帰ったりして(笑)。それで「どうして私はこの漫画の世界の中にいないんだろう…」と思っていました。 当時の出来事が、漫画家になろうと思ったきっかけになっている気がします。

    手塚:漫画っ子だったんですね。

    松田:今ならDVDとか観ていると思うんですけど、当時の長崎県(松田さんの出身地)にはレンタルDVDもないし、そもそもビデオデッキすらない。そんななかで楽しみといったら、友だちと遊ぶことと、TVを観ること、そして漫画を読むことぐらいだったんですよね。純粋に漫画で育ってきたことを考えると、幸福な子ども時代だったなと思っています。

    手塚:親御さんも、漫画読んでOKという感じだったんですか。

    松田:うちはもう超放任主義でした。何にも言われなかった。本自体がうちになかったんですけど、親と一緒に本屋さんへ行けば『なかよし』や『りぼん』とか、雑誌は買ってくれていたんですよね。だから漫画は何でも読ませてくれていました。

    手塚:大体の親は、「漫画ばっかり読んでないで、勉強しなさい」というか、「漫画も何でも好きに読んで、勝手に外で遊んでなさい」っていうかのどちらかだと思うんです。 ご両親も漫画は読んでいたんですか。

    松田:父親が『じゃりん子チエ』(はるき悦巳)を読んでいました。あとは、『ゴルゴ13』(さいとうたかを)とかかな。

    手塚:松田先生が一番印象に残っているのは、先ほどお話に出た『はいからさんが通る』なんですか?

    松田:“この漫画の世界の中に入りたい”と思ったのが、『はいからさんが通る』ですね。 後で気がついたんですけれど、私は「働く女の人」が好きみたいですね。『はいからさんが通る』も主人公の「紅緒さん」が働いていたんですね。 どうも自分が好きな少女漫画は“社会の中へ転がり出て働かなきゃならない”という境遇に放りこまれた少女たちが多くて、そういう傾向の作品がすごく好きでした。 『キャンディ・キャンディ』(水木杏子/いがらしゆみこ)も好きでしたが、あの作品も働いていますし。少女漫画の定番の「恋愛」とかはなぜか興味が持てずで(笑)

    手塚:「働く女の人が好き」、という意味では、松田先生が現在執筆中の作品(『重版出来!』)にもつながっている気がしますね。

    松田:そうなんですよ。自分が描いているものは、女性がみんな働いているんです。

    手塚:私は松田先生の漫画は『コーラス』で初めて読ませていただいたんです。 その作品の多くは、女性の活躍や自立を描かれている印象があったので、今のお話を聞いて「やっぱりそうだったんだ」と、すんなり納得しました。

    松田:自分ではずっと気がつかなくて、そういう話しをさせていただく機会があって、初めて気づきました。

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    漫画は“最後のプライド”だった

    手塚:漫画を描き始めたのも、この絵のときくらいですか。

    松田:紙に鉛筆で描いていたのは、小学校五、六年生の頃だったかな。

    手塚:その頃に漫画を読んで、以来、ずっと漫画家になりたいと思っていたんですか。

    松田:そうですね。“なりたい”というか、“なるもの”だと思っていました。歳を取ったらお婆ちゃんになるように、私は漫画家になるんだ、と。でもふつうは模写とかする思うんですが、私の場合は、ぜんぜん努力もせず、ただ漫画を読み、ノートに鉛筆でオリジナルの漫画を描いて、友だちに読ませたりしていたんです。 それから、中学二年生くらいだったかな…ペンで漫画を描いて、雑誌に投稿し始めたんです。

    手塚:友だちに漫画を描いている子はいたんですか。

    松田:いませんでした。私は友達に「似顔絵描いて」とか言われたりして、大人気でしたよ(笑) みんなから「なおちゃんは将来漫画家になるんだ」と言われてたんですが、志望した高校のデザイン科を受験したら、失敗したんです。それからは、みんな腫れ物に触るようになってしまって。「なおちゃんは漫画家になれないんだ…」という感じです。 自分でも、受験に落ちたことで、夢を否定されたような気がして。高校入学後は、友達もつくらず誰とも口をきかないで…そこから三年間、ひたすら小説を読んで、かなり暗い高校生活を過ごしました。漫画の投稿も続けていたんですが、ぜんぜん引っかからなかったですね。

    手塚:全部自分で抱え込んで、悶々としているわけですよね。周りに話してわかってくれる人はいたんですか。

    松田:私が行きたかった高校のデザイン科には、谷川史子さんがいらしていて。当時、谷川さんは学内の漫研で作品を描いてらして私も誘っていただいたんですが、参加しなかった。もし誰かが自分の漫画を否定したらと、どこかで怖かったんだとおもいます。 自分の実力を知るのが怖かった。当時の私にとっては、漫画が最後のプライドだったので。もしあれで、自分が漫画でもたいした人間ではないんだと思ってしまったら立ち直れなかったと思います。

    谷川さんはその後、高校在学中に漫画家デビューなさったんで、私が上京したあとも連絡をとって、いろいろアドバイスしていただいたりしていました。 谷川さんがいたので、漫画家になるという夢を捨てないでいられたというか、谷川さんのそばにいれば、「何とかなるんじゃないかな」みたいな気持ちがありました。

    手塚:唯一の救いみたいなものですね。松田先生はその後、一度OLになられてるんですよね。

    松田:東京に出たくて、寮がある会社を選んだんです。寮があれば親にお金のことで迷惑をかけないし、そこで一年八か月働いて、ひとり暮らしできるくらいお金を貯めまして、その時ちょうど木原敏江先生がアシスタントを探してらして、運良く拾っていただいて、そこから漫画の生活がスタートしました。 二十七歳のときに、デビューできて、自分の描きたいようにやっていたんですけれど、当時は周囲に対して「何で私の良さがわからないの?」 という風に、自分で努力を一切しないのに思っていました(笑)

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    サブ_ホーキング博士

    サブ_ジェーン

    サブ

    映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    第八回目にご紹介する映画は『博士と彼女のセオリー』。天才物理学者ホーキングの実話を元にしたヒューマン・ラブストーリー。ホーキングを演じるのは、『レ・ミゼラブル』のエディ・レッドメイン。今年度のアカデミー賞主演男優賞の最有力候補にあげられている注目の俳優。

    一方、妻ジェーンを演じるフェリシティ・ジョーンズ(『アメイジング・スパイダーマン2』)もアカデミー賞の有力候補だ。監督は、ビルの谷間を綱渡りする大道芸人にスポットを当てた『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したジェームズ・マーシュ。

    今年度のアカデミー賞最有力候補にあげられている話題作を観た巻来巧士の心ぴく度は?

    【STORY】
    ふたりの出会いは1963年。スティーヴンがケンブリッジ大学の大学院に在籍している時だった。彼は詩を学ぶジェーンの聡明さに、ジェーンは彼の夢見がちなグレーの瞳とユーモアのセンスに惹かれ、たちまち恋におちる。だが、直後にスティーヴンは運動ニューロン疾患と診断され、余命2年の宣告を受ける。それでも彼と共に生きると決めたジェーンは、力を合わせて病気と闘う道を選択する。

     そんなふたりの結婚生活は、残された時間を2年から5年に、5年から10年に、10年から20年に延ばすための絶え間ない努力の日々となる。ジェーンに励まされて研究に打ち込み、学者としてのステイタスを築いていくスティーヴン。心身両面で夫をサポートしながら、ふたりの生き甲斐となる子育てにも奮闘するジェーン。自分たちに与えられた時間がどれほど貴重なものかを知るふたりは、歳月を重ねるごとに増す試練に、強固な愛の力で立ち向かっていく。

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    第8回「功士の心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム」は『博士と彼女のセオリー』です。

    またまた、実話物です。今年のアカデミー賞受賞、候補作は特に多い気がします。本作は、理論物理学者で有名なスティーヴン・ホーキング博士の妻、ジェーンが書いた原作を基に作られた映画です。最も身近にいた夫人の原作なので、よくある偉人伝にはなっていません。もちろん、そんな映画は面白いわけありませんが、おそらく我が国で作ったらソノモノのつまらない映画になる事でしょう。

    この映画はその逆をいく映画です。天才ホーキング博士がALS(筋萎縮性側策硬化症)を患いながらも、研究成果により栄光を手に入れてゆく、なんて映画を見たい人もいると思いますが、良い意味で裏切られた結果、傑作と呼ぶに値する素晴らしい映画になっていました。ホーキング博士役のエディ・レッドメインがアカデミー主演男優賞受賞の、納得の演技を披露しています。妻、ジェーン役のフェリシティ・ジョーンズの女を匂わせる(?)演技も負けないぐらい素晴らしいです。主要な全ての俳優が、眼差しで語るという高度な演技合戦を見事にモノにしています。

    後半、ホーキング博士は、ALSの為に、身体を動かす事も喋ることも出来なくなってしまい、感情を表す時は微かな表情の変化になります。ホーキング博士役のエディ・レッドメインが奇跡的演技で表情に現すと、妻役のフェリシティ・ジョーンズがその表情を受けて、やはり微かな表情で答えます。そして妻が頼りにする、ジョナサン役のチャーリー・コックスとの熱い眼差しの交換。また、ホーキング博士と、身の回りを世話する女性との感情の交換。見事な演技の手本のような演出に溢れています。見なきゃ損だと言い切ってよいでしょう。

    そして、この映画は天才の波乱万丈な半生を、女性の目線で赤裸々に語られている所が秀逸です。つまり、男性が大好きな名誉とか権威をテーマにせず、全ての人々の恋愛関係、夫婦関係に通じる普遍的な感情を描き切っているのです。だからこそ、全ての大人に共感を与える傑作に仕上っていました。

    ただし、大人限定です。この映画で描かれた繊細な男女関係を深く理解できるのは、やはり我が国では、残念ながら経験豊かな大人しかいないでしょうから(単純な思考しか出来ない、幼稚化した大人にもお薦めしません)。その証拠に、私の隣で見ていた女子高校生は「長くて眠くなった」など呟いていました。私が高校生の頃に見ても絶対に傑作だと思えるこの映画を見て、そんな事を呟いてしまうとは・・・。そんな感情が湧きあがって来る位に、よく出来た繊細なラブストーリーになっています。

    私は、中盤の身につまされる描写に心揺さぶられ、ラスト全てが許される演出に心の底から感動しました。感涙必死です。つまらない泣かせ映画などにはなっていません。どうしようもない人間の性(サガ)、だからこそ素晴らしい人間というモノを力強く描いています。

    観終わって、勇気が湧く素晴らしい傑作です。なるべく、予備知識なしに観てください。絶対に感動する事をお約束します。しかし、今年のアカデミー賞、受賞、候補作にはハズレがありません。素晴らしく深く人間を描いた傑作ばかりです。監督は、本国アメリカ人は言うに及ばず、イギリス人、メキシコ人、他、と多様です。このことがあらゆる価値観で人間を見つめる素晴らしく面白い映画が誕生する原動力になっているのでしょう。うらやましい限りです。それに引き換え、我が国の、テレビドラマファンに向けて作られたとしか思えない映画の数々は・・・。世界レベルの映画との距離は、かけ離れてゆくばかりです。

    1980年代までの素晴らしい邦画、世界の映画監督の手本になった邦画を取り戻してほしいと思います。日本と海外じゃ価値観が違うから仕方ないと言われる方が居るかもしれませんが、その意見はまったく違います。この「博士と彼女のセオリー」を観終わって最初に思ったのは、脚本家、山田太一の名作テレビドラマ「男達の旅路」でした。その切ない男女関係、繊細なストーリーに似通ったものを感じ、私が高校生の頃見たこの名作を思い出したのです。それ位、深い普遍的な人間ドラマが、多数我が国にも存在しました。時代性など関係なく、世界に共通する普遍的な名作が・・。そんな事まで思い起こさせてくれる、人間ドラマの傑作です。

    全ての大人(大人の思考で物事を考えられる若者)にお薦めの名作です。是非ご覧ください。『博士と彼女のセオリー』の心ぴく度95点です。

    『博士と彼女のセオリー』

    [CAST]
    エディ・レッドメイン(スティーヴン・ホーキング)
    フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ホーキング)
    チャーリー・コックス(ジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズ)
    エミリー・ワトソン(ベリル・ワイルド)
    サイモン・マクバーニー(フランク・ホーキング)
    デヴィッド・シューリス(デニス・シアマ)

    [STAFF]
    ジェームズ・マーシュ(監督)
    ティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー(製作)
    リサ・ブルース(製作)
    アンソニー・マクカーテン(製作・脚本)
    ジェーン・ホーキング(原作)

    [配給]
    東宝東和 

    [オフィシャルサイト]
    http://hakase.link/

    3月13日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

    ゾルゲ市蔵-プロフィール画像

    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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    手塚るみ子さんをホストに迎え、毎回ゲストから自分の分岐点となった局面を伺い、創作の秘密を掘り下げていく対談企画・Crossroad。

    第二回目のゲストにお迎えしたのは、漫画家の田中圭一さん。『ドクター秩父山』 、『昆虫物語ピースケの冒険』等の作品に加えて、手塚治虫タッチの絵柄で描かれた『田中圭一最低漫画全集 神罰』等、パロディ漫画家として多数の代表作を世に出されています。

    最近では『田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-』、『Gのサムライ』、『うつヌケ 〜うつトンネルを抜けた人たち〜 』等WEB上での作品発表も積極的に展開。その他、京都精華大学マンガ学科ギャグマンガコース特任准教授も務められているという、マルチな活動を続けられています。

    1994年、『COMIC CUE Vol.SIX』(イースト・プレス)手塚治虫リミックス号に手塚プロダクションの公認パロディ 『神は天にいまし 世はすべてことも ないわきゃあない』発表以来親交のあるという田中さんと手塚さん。

    田中さんの”自分の分岐点となった局面”となったイラストを元に、二人の対談が始まりました。


    劇画村塾がきっかけではない!?-

    手塚:今日はよろしくお願いします。 田中さんとかしこまった形でお話するのは、珍しいですね。いつもは飲みながらのお喋りで、しかも下ネタで盛り上がることが多いから。

    田中:下ネタ以外の話はしてない気がしますね。

    手塚:今日は占いで、おうし座は『口は災いのもとになり、関係が悪化する』と言われて、よりによって対談の日に…と思いました。ちょっと気をつけようと思います。

    田中:関係が悪化するんですね。世間的には完全に悪化している状態ですから、これ以上はないですよ。

    手塚:では、まず、なぜ漫画家になったか、そのきっかけからお伺いします。「自分の分岐点となった局面」を絵にしていただいてますが・・・

    田中: (『Crossroad』vol.1 ゲストの)浦沢直樹先生の次に描くということで、プレッシャーがかかりました。これが漫画家を目指したきっかけの絵です。

    田中圭一先生 クロスロード 3 24

    手塚:ご丁寧にありがとうございます。これはトイレを我慢している絵ですか?

    田中:違います(笑)。この絵は漫画家を目指そうと決意した場面です。 小学生の頃から、ノートに漫画とかは描いていて、憧れとして漫画家になりたいという思いはありました。それで、現実として、なれるかと考えると「まあ無理かな」とか、「ひょっとしたらなれるかも」といった感じで…。小さい頃から漫画家に絶対なりたいと思っていた人とは、違うタイプだと思います。

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    田中:やっぱりきっかけとなったのは、小池一夫先生の劇画村塾神戸校が開校して、そこに通うようになったことですね。 当時、東京の一期生の高橋留美子さんが、大ブレイクしている最中でした。そこで、高橋さんが生徒だった、また『子連れ狼』の原作者が教える塾というのはどんなものなのかと気になって。 門下生になるというより、どんな授業をしているのかという好奇心から受けはじめたんです。

    劇画村塾は最初に生徒を大人数、受け入れて、一年間教えて、二年目は三十人に絞って、その人たちがデビューできるまでの道筋を教えていくんです。要するに、一般教養と専門職といった感じですね。 だから一年目は漫画らしいものが描ければ入れるんです。僕は劇画村塾の一年目に、自分がどんな漫画を描くべきなのか迷いがあったんですよ。面白いこと言うのが好きなので、ギャグがいいかなと思ったんですが、紙に描いてみるとさっぱり面白くないんです。それでギャグなのかストーリーなのか迷っていたんです。

    ちょうどそんなとき、授業前に近所の本屋へ入って、泉昌之さんの『かっこいいスキヤキ』を見つけたんです。タイトルはちらほら耳にしていて、「最近みんなが話題にしているマンガってこれか」と思って読んでみたら、「こんなギャグマンガ見たことないや」と衝撃を受けました。 シリアスな劇画タッチで淡々と進むんですが、やっていることはとんでもなくバカなんですよ。 『かっこいいスキヤキ』は、シリアスな絵でバカなことをするというギャップがもの凄くて、これが自分の目指す方向なんだなと気がつきました。 「これは面白い」と思ったので、授業中も机の下で笑いをこらえながら、読んでいましたね。

    ですから、この絵(田中氏が漫画家を目指したときの場面の絵)は、小池先生が真剣に授業をしているときに、僕が漫画を読んでいる場面です。小池先生も気がついていたんだと思いますよ。「こいつ授業中、笑いこらえながら、何読んでやがるんだ」と思っていたでしょうね。

    手塚:劇画村塾がきっかけじゃないじゃないですか(笑)

    田中:でもそこで、課題を描いて、評価されてデビューするというルートができていたんですよ。 “料理人を目指そうと思ったら、たまたま実家がトンカツ屋だった”みたいな距離感。ちょうどこの漫画が好き、それで描きたいと思って描いたら、評価がよかった。 それで、小池さんの会社が出していた、『コミック劇画村塾』という雑誌に載って、デビューできたんです。仮に「こういうのがいいな」と思っても、その後、原稿を描いて、投稿持ち込みへ行くのはすごいエネルギーがいるじゃないですか。そこまでやるほどの情熱は僕にはなかったので、両方の合わせ技のタイミングだったんですね。

    手塚:最初は興味本位だとしても、劇画村塾に通うとしたら、結構長いスパンをとられるじゃないですか。どうして何年も通えたんでしょうか。大学を卒業してから、通われたんですよね。

    田中:大学に行きながら、塾には通っていましたね。月に一回第三金曜日に、社会人やりながら勉強している方もたくさんいたので、劇画村塾は遅い時間にスタートなんですよ。

    手塚:漫画のほうの道を選んで、大学の道をおろそかにすることなく、両立されていたんですよね。

    田中:そうですね。そういうと聞こえがいいですが、「絶対にプロになりたい」という情熱がなかったし、中途半端に真面目だったんです。大学の単位をとるため課題もしないと、と思いながら、一方で塾でも課題があるから、と描いていただけですね。


    サラリーマンとの両立

    4C9A41971手塚:就職活動はされたんですよね。 ギャグ漫画家としての自分の道が見えつつも、社会人としての田中さんもいて、それが両立したまま社会に出ていったという感じですか?

    田中:大学三年生のときに、曲がりなりにもデビューをして、四年のときには劇画調四コマを連載していたんですよ。大学卒業の頃には、その連載を六回か七回やっていて、毎回6ページくらい連載していたんです。漫画家になりたいという情熱が高ければ、その作品一本で、他の出版社を回ったりしていく道はありました。 でも、四年生で就職しなきゃという気持ちもありました。

    当時はバブルの時代でしたから、三流大学でもいい会社に入れたんですよね。でも、文系だったので企画開発職は無理だったし、まぁ、営業くらいしかやらせてもらえないだろうな、とは感じていました。 それなら、よくわからないものを売るくらいなら、好きなものを売りたいなと思って、プラモデルと玩具のメーカーを受けたんですね。それで二社ほど内定をもらえて、好きな方のメーカーに入社。

    漫画は中途半端に連載があって、ここでやめるのはおしいな、という気持ちもあるし、編集部からも、「月に6ページだから、当面は様子見で続けたら」と言われたので、「やります」と。流された感はありますが、大変だなと思いながらも続いて、今に至ります。

    手塚:漫画家には、漫画家になりたいと思って進んだ人と、なれるから漫画家になったという人がいるかと思うんです。 田中さんは後者だと思うのですが、仕事を捨てなかったというところが珍しいです。

    田中:漫画の仕事があるから、サラリーマンはつまらなかったらやめてやろうと思っていたんですが、仕事は楽しくて続けられました。 よくバブル期の営業マンは華やかに語られますが、当時の営業はとんでもなく高いノルマを課せられるんです。昨年度より三十パーセントアップという目標を、どの会社もクリアしていったからこそバブルになったともいえるのです。けれど、そこで下働きする私たちは、バブルではよい思いをしてないんですよ。大変でした。 でも、玩具は毎月いろいろな商品が出てきて、売り場でリカちゃんサイン会などの催事がありました。

    僕はアニメや漫画が好きだったので、「あの漫画がアニメ化して、その製品がうちから出るの?」みたいな、業界とのリンクもあったりして、それが楽しかったんです。 あとは体育会系の職場だったから厳しくもあるけど、明るい人が多くて、ガツガツ仕事して夜の飲み会とかでバカやって凄く楽しかったですね。 それに漫画も単行本で十万部くらい出ていたので、どちらの生活も捨てられなかったですね。表裏一体の充実感はありました。

    手塚:ずっと兼業でサラリーマンと漫画家をやってきて、仕事配分と精神的な配分はどうしていますか? 田中さんは真面目だから、どっちもがっつりやるとは思うのですが。

    田中:そうですね。玩具メーカーの日常って色々と破天荒なエピソードも多くて、そうしたものを土日の漫画作成のアイディアとして取り入れられる。つまり、常にネタがインプットができるので、ラッキーな状態でもあったんです。

    手塚:普通の人は、AというものをAとインプットするけれど、田中さんはギャグ漫画家だから、Aというものをインプットして、Aとは別の面白いものに変換してアウトプットすることができたと思うんですね。

    田中:僕は中学、高校と関西にいたので、いわゆるクラスの面白いやつを目指していたこともあるんです。そこでノリつっこみやボケとか笑いの基礎というものを学びましたね。 関東に比べると、関西は面白いやつがモテるんですよ。ルックスで負けていても、ギャグセンスで挽回できる。

    手塚:田中さんは関西の面白い男の子でも、体でバカやって受けるのではなく、頭をつかって話で笑わせる派な気がします。

    田中:どちらかというと、そうですね。運動神経はよくはなかったので、体で笑わせるより、話芸やちょっとした間の取り方とか、変なものを作って笑いとるのは大好きでしたね。それが漫画にそのまま繋がっていますね。


    影響を受けた漫画家

    手塚:子どものときから漫画を読んでいて、影響を受けた人はいましたか?

    田中:ギャグ漫画は好きで、中でもパロディとかサブカル系のものが好きでしたね。パロディがすごいと思ったのは、ラジオ番組で 『欽ちゃんのドンといってみよう!』のまとめ本があって、それに新聞のテレビ欄が見開きであったんです。それをよく見ると、隅々まで全部パロディになっていたんです。どこを見ても笑えて、パロディは面白いんだと思いました。

    サブカルチャー雑誌『ビックリハウス』とかの読者投稿コーナーとか立ち読みするようになったし、あとはアニメ雑誌で『月刊OUT』があって、あれはアニメを取り上げつつも、読者投稿がメインであったし、そこからゆうきまさみさんとかがデビューしたりしていていましたね。 もちろん、王道のギャグ漫画、低学年で赤塚不二夫さんの『天才バカボン』、高学年になってからは山上たつひこさんの『がきデカ』とかも好きでしたね。

    手塚:やっぱりストーリー漫画よりもギャグ漫画のほうが、好きだったのですか。

    田中:関西の風土があって、お笑いが好きだったのはあります。もちろんシリアスも好きで、自分が小学校、中学校のときに胸をときめかしたのは、手塚治虫先生だったり、松本零士先生だったんですよね。 手塚先生の絵を真似たいと思ったきっかけになる、自分の根っこにあるのは昭和の漫画の数々でしたから。 やっぱり小学校、中学校のときに、胸をときめかせた漫画というのは根深いものがありますね。

    手塚:当時は雑誌単位で読んでますよね。

    田中:あのときの漫画は、型破りのものも王道なものも同じ雑誌に載っていたし、コンテンツとして「これはやっちゃだめ、これはやっていい」というようなセオリーがブラッシュアップされる前の段階ですよね。面白ければなんでもぶち込んでしまえといった風潮がありました。あの頃の漫画をたくさん読んでいたというのは、幸運だったなと思います。

    手塚先生の漫画というのは、僕より上の世代の人が崇拝していて、むしろ一歩引いた距離で読んでいました。どっぷりとはまったのは『ブラック・ジャック』とか『三つ目がとおる』以降になります。小学校四、五年くらいですね。そこから、『火の鳥』などの作品を読んできました。 『火の鳥』は、雑誌サイズのまとめ本を読んでいましたね。あのスケールのすごさは桁が違うな、と思いました。みんなが手塚治虫を崇拝するゆえんかなと思いました。

    手塚:田中さんの口から『火の鳥』の話がでるのが、凄く違和感がありますね(笑)。 前回対談ゲストの浦沢直樹さんなら、ふんふんと聞くのに、田中さんが真面目な話してるのは、違和感がある。

    田中:江頭2:50が「黒澤映画のこんなところがよい」と真剣に話しているとか、そんなノリでしょ。

    手塚:なんとなく素直に聞けない(笑)。

    田中:当時ギャグ漫画とかお笑い番組とか好きでしたよ。『オレたちひょうきん族』は大学生くらいのときかな。笑いすぎて、画面が見られないくらいでしたね。

    手塚:ナンセンスなバラエティーが多かったですよね。脈絡がない。ある種パロディのようなものとか。

    田中:マンガでは赤塚不二夫先生の『レッツラゴン』なんか、とくに脈絡ないですよね。ロジックでは出てこない、感性で作られているものには憧れを感じますよね。 くしゃみすると上の棚からタライが落ちてくるというのは、一種のロジカルじゃないですか。でも『ひょうきん族』で、ビートたけしと明石家さんまが会話がかみ合わなくなって、わやくちゃなことを話しはじめるのは意味がないし、わけがわからない。 ロジックで作られたものは、感性で生み出したものに勝てないんですよね。

    手塚:田中さんもそんな感性にもとづく漫画を生み出したいと思っているんですよね。ただ田中さんの場合は下品とか下劣とか、そっち方面へ行くじゃないですか。そもそも何がきっかけでそっちへ行ったんですか?

    田中:二十代で、そういった下ネタ漫画を描いているのは問題ないと思うんですよ。相原コージさんや喜国雅彦さんも、そうしたものを描いていました。でも僕は、五十代になってもまだ描いている。これは頭を悩ませなければいけないところですよね。相原さんも喜国さんもそれなりの年の取り方をして、年相応の作品を描いているにも関わらず、僕は『Gのサムライ』のようなものを描いているわけですよ。何を間違えたっていう(笑)。

    手塚:絵は丁寧なのに、描く内容がひどい。そのギャップが田中さんの魅力だと思うのですが、真面目な話だったりしても、まったく逆のパロディにしてしまって、底辺まで落とすというのは小学生の男子レベルの考え方ですよね。

    田中:もしも江頭2:50が六十歳まで同じ芸風なら、もう、あきれて笑うしかないといった感じですよね。僕の頭には中学二年生の自分が住み着いているんです。オナニーだとか包茎だ、という話に熱くなるし、セックスの経験がない中で、実際はこうじゃないかという妄想だけで話をしている。もちろん実体験はしているのですが、頭の中では童貞なんですよ。

    手塚:女子から凄く蔑まれている年齢ですね。

    田中:さくらももこさんが、「中二男子ほど、バカな生き物はいないんだ」と言っていますからね。


    田中圭一が見るギャグ漫画の分岐点

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    手塚:原点はそこにあって、芸風は変わらずですが、デビューした頃からそうした芸風だったのですか?

    田中:当時はそこまで酷くなかったですけど、相原コージさんとかが『スピリッツ』の巻末の4コマで、「商業誌でこんなこと描いていいのか?」と思われるようなものを描いていたことがあって、「スピリッツに載っているんだし、こういうの描いてもアリなのね」と気がついたんです。 そういう意味で、アンモラルギャグにおける未開のジャングルをひとりで切り開いていったのが、相原さんだったんですね。あと喜国さんも同じ時期かな。

    手塚:『週刊スピリッツ』はセンセーショナルな雑誌でしたね。吉田戦車さんも『伝染るんです。』を連載されていましたよね。

    田中:戦車さんが、ギャグ漫画にとどめを刺したと思うんです。あれ以上、尖りようがなくなってしまった感はありましたね。 劇画村塾にいた頃は、「まったく意味がわからないギャグはやめなさい」という指導もあったと思うんですよ。僕は当時デビューして、単行本も出しつつある時代ではあったのですが、世の中的には『スピリッツ』の巻末に『伝染るんです。』が載ってしまうと、「意味がわからないギャグはダメです」とは言えないですよね。なにしろ、もの凄く面白かったから。

    手塚:あの当時はいろいろ斬新なものがありましたよね。

    田中:相原さんが連載する前は、原律子さんが衝撃的な作品を描かれていました。

    手塚:そうですね。女流漫画家さんがああいう下ネタギャグを描くというのはなかったですね。

    田中:あっけらかんとしているからよかったものの、女の人でここまで描くんだ、と思いましたね。 時代的には、吉田戦車さんが出てきて、よかったんです。あの人が、お下劣以外じゃないギャグでブレイクしたので、お下劣はせき止められたんですね。下ネタがエスカレートしていったら、大変なことになっていたかもしれないですよね。

    時代的にも遊人さんの『ANGEL』が有害コミックとなったじゃないですか、あの時代に吉田戦車さんがいたので、ギャグは下ネタのほうへ進まなかったんですよね。流れが不条理に進んでいったんです。だから、ギャグ漫画は当時、槍玉に挙げられなかったんですよ。

    手塚:吉田さんの影響は大きいんですね。

    田中:あの流れで、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』(うすた京介)や『ギャグ漫画日和』(増田こうすけ)とか、多くの不条理ギャグマンガが生まれたので、吉田さんがいなかったらひょっとしたら、ギャグ漫画はヤバい方向に進んで滅びていたかもしれない。下ネタの方へ行くだけ行ってしまって、結果『あずまんが大王』(あずまきよひこ)のようなほのぼの笑える系に主流をさらわれていた可能性はありますよね。

    手塚:当時『スピリッツ』は、いろいろな影響力を持つ作家の宝庫でしたよね。誰もが通勤電車で『スピリッツ』を読んでいました。

    田中:『スピリッツ』を好んで読んでいたのは、最先端のトレンドを追いかけていた人々で、おしゃれでトレンディな漫画がたくさん載っていたから、支持されていた。でもスマートフォンだとかガラケーだとかで情報をチェックするほうがトレンドの最先端だとなった瞬間、今まで読んでいた人が、雑誌を買わずにそっちへ行ってしまったので、『スピリッツ』も方向を変えざるを得なかったのかなと思いますね。個人的には。

    => 手塚治虫リスペクト-

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    m0000000773_sub2[1]映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    第七回目にご紹介する映画は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』。主演男優賞(ベネディクト・カンバーバッチ)、助演女優賞(キーラ・ナイトレイ)の他、作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞、美術賞、作曲賞のアカデミー賞(R)8部門ノミネート。その他にもトロント国際映画祭で観客賞受賞、第72回ゴールデン・グローブ賞に5部門ノミネートされるなど話題の新作映画です。

    果たして注目の作品を観た巻来巧士の心ぴく度は?

    【STORY】
    第二次世界大戦時、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号<エニグマ>。世界の運命は、解読不可能と言われた暗号に挑んだ、一人の天才数学者アラン・チューリングに託された。英国政府が50年以上隠し続けた、一人の天才の真実の物語。時代に翻弄された男の秘密と数奇な人生とは――?!

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    第7回「心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム」今回の映画は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』。ナチスドイツの暗号機エニグマに挑んだ、英国の天才数学者アラン・チューリングの実話を基にした映画です。

    エニグマの暗号解読に集められた天才たち、その中でも異能の輝きを放つ実在の主人公アランに、べネディクト・カンバーバッチが最高の演技で命を与えています。原題、イミテーション・ゲーム。それが、この物語の全てを現しています。自分の内に宿るもの(?)を偽物だと信じて疑わない天才数学者、主人公アラン。男女の愛が偽物でも、友情がそれに代わりえると断じる、クロスワードパズルの天才ジョン・クラーク女史。全てを偽物(嘘)だと断じる事から国防の最善の道を探し出す、MI6(英情報部)の実力者スチュアート・ミングス。その他の登場人物も嘘(偽物)を重ねながら、厳しい戦時下を生き抜こうと懸命にもがきます。その嘘(イミテーション)が、人間の生きる力を体現してゆく後半は特に素晴らしい盛り上がりを見せます。国家そのもの、英国自体が、戦後50年間もこの事実を国民に隠さなければならなかったという大きな偽り(イミテーション)にも帰結する脚本は、見事としか言いようがありません。

    その中で、一番ちっぽけな偽りを時代というものによって厳しく糾弾されたのが、主人公の(紛れもなく第2次世界大戦で多くの人の命を救った英雄)アラン・チューリングだったとは・・・。深すぎる人間の業、宿命を描き切ったそのストーリーに、何度溜息が出たか分かりません。戦争物の過酷さ、スパイ物の謎解きの面白さ、人間ドラマの繊細さ、その全てを見事に盛り込み、奇跡的傑作に仕上がっていました。時代に翻弄された、真の英雄、アランが後半、刑事に語る「・・・この話を聞けば、(自分が)機械か、人間かが、分かる・・・」その重すぎる言葉に身震いするほど、感動を覚えました。

    この物語が語るように、新しい時代を作ってきたのは、常に時代に愛されようとした異能者であり、しかし結局時代に愛されるのは、リアジュウである凡人だけだと言う事が良く分かります。結局、時代を先取るが故に天才たちは、常に現状に居心地の悪さを感じてしまうのです。それが、天才(異能者)の宿命だという事も饒舌に語られています。つまり、アランは異能者であるがゆえに(1400万という人を救った真の英雄で全ての人に尊敬されるべき人物なのに)、時代は、絶えず凡人には理解できない考え方をするという理由だけで、異能者を隠し除外し葬り、凡人が歴史を作った英雄だと偽り、凡人足る庶民の溜飲を下げてきたのだという事実をストレートに観客にぶつけているのです。同時に、どうしようもない人間の宿命というものの残酷さを観客に突きつけます。それにより、ラストの英雄アランの、哀しみ、切なさが、ダイレクトに私の心に突き刺さり、涙が溢れて仕方ありませんでした。名作です。必ずもう一度映画館で鑑賞しようと思います。

    アメリカ・イギリス映画界の底知れぬ実力を目の当たりにさせられる驚愕の完成度の映画です。果たして、25年前までは映画の先進国だった我が国が、こんな完成度の映画を今、作る事が出来るのか・・・答えは残念ながらNOだと言わざるを得ません。しかし、絶望する必要はありません。真摯にこの名作に学べばよいのですから。黒澤・小津・今村・深作が居ない今、この名作に学んで、今こそ本物の大人の鑑賞に足る名作を生みだす時が来たのだと思います。今こそが、そのタイム・リミットなのです。そうでないと、本当に世界に冠たる日本映画は消えうせてしまうと思います。

    そんな、映画の教科書足りえる、深くて、広くて、切ない、人間そのものを描いた名作映画です。是非ご覧ください。私的、今年暫定ナンバー1の映画です。全ての人に観てほしい、映画という芸術品です。

    功士的心ぴく度、限りなく100点に近い96点です。

    『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
    出演:ベネディクト・カンバーバッチ「SHERLOCK」『スター・トレック イントゥ・ダークネス』、キーラ・ナイトレイ『アンナ・カレーニナ』、マシュー・グード『イノセント・ガーデン』、マーク・ストロング『裏切りのサーカス』
    監督:モルテン・ティルドゥム  脚本:グラハム・ムーア   
    サウンドトラック:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
    配給:ギャガ (C) 2014 BBP IMITATION, LLC
    The Imitation Game/2014年/米英合作/115分/シネスコ/5.1chデジタル/カラー/字幕翻訳:松浦美奈
    オフィシャルサイト:Imitationgame.gaga.ne.jp

    3月13日(金) TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー

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    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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    ※『功士の心ぴく映画コラム』では皆様からの巻来先生に観て欲しい映画のリクエストをお問い合わせフォームとTWITTERから受付中。TWITTERでは #心ぴく をつけてつぶやいて下さい。

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    女子高生を主人公に、格闘技を通じて成長していく姿を描く漫画『ハナカク』。月刊コミックゼノンにて連載中の本作の最新巻第3巻が2月20日に発売、その記念として『ハナカク』作者の松井勝法先生と、吉本興業の芸人で人気上昇中の『御茶ノ水男子』のおもしろ佐藤さんの特別対談を実施。

    おもしろ佐藤さんは、『BLEACH』や『NARUTO』などのアニメを手掛けた経験がある元アニメーターであり、その後お笑い芸人になったという異色の経歴の持ち主です。漫画家「松井勝法」先生と、芸人「おもしろ佐藤」さんとの異業種の組み合わせ。『赤鮫が行く!!』特別対談のスタートです。


    おもしろ佐藤さん(以下、佐藤):はじめまして、吉本興業『御茶の水男子』の「おもしろ佐藤」です。

    松井勝法先生(以下、松井):はじめまして、漫画家の「松井勝法」です。

    佐藤:『ハナカク』は前から知ってまして、大好きな漫画だったんで、今回の対談めちゃくちゃ楽しみにしてたんです。

    松井:ありがとうございます、嬉しいですね。最新巻がちょうどできあがってきたんでどうぞ。(『ハナカク』3巻の発売日が2月20日、この対談は18日)

    佐藤:うわ~、発売前なのに!!ありがとうございます。

    松井:そんなに喜んでもらえるなんて(笑)こちらこそありがとうございます。

    佐藤:花夏とニナの関係性が2巻を読んでどうなってしまうんだろうってずっと気になってて。その関係性なんですけど、後輩に「竹花リベンジ」ってピン芸人がいるんです。『リベンジ(復讐)』って言葉が芸名に付いてるのかって話になるんですけど、彼はもともとイジメられっ子で強くならなきゃって言うことで柔道をはじめて頑張って練習して3年のときに県大会で決勝まで勝ち進んだんですよ。

    松井:はい

    佐藤:そしたら決勝の対戦相手がまさかの同じ柔道部の3年間練習でなにをやってもかなわない強いやつで、体が委縮しちゃって秒殺で負けちゃったんですよ。それで違う意味でリベンジするために芸人になるっていう。ちょっと違うかもですが花夏とニナもそういう戦いじゃないですか、だからもう早く3巻が読みたくて。(本をペラペラ見ながら)ニナはニナで何かあるんでしょうね!

    松井:ニナは”正論”を言ってるだけなんですよ。でも”正論”ってわかってることを言われるから嫌われるんです。

    佐藤:松井先生が”正論”って言うのに刺さりました。自分も「お前、本当に”正論”言うよな」って、よく言われるんですよ。じゃあ僕も嫌われていたのかな(笑)でも、とりあえずは…、う~ん3巻が気になりすぎて…。

    松井:良かったら今どうぞ(笑)読まれてからの方が3巻の話にも触れれますし。

    佐藤:いいんですか!!作品を作者先生の目の前で読むってのは緊張しますね。

    近藤:先生自身は目の前で読まれるのはどんな感じですか?

    松井:僕は嬉しいです。読んでくれてるのがもう嬉しいんですよ。

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    ~読み終わって~

    佐藤:はぁ~~~~、いや~~~、ヤバいですね!4巻が気になりすぎます。ネームでいいので毎回送ってもらえませんか(笑)僕ね、勝手に宣伝部長になりますよ。

    松井:ありがとうございます。頼もしいです。

    佐藤:3巻読んでみて、やっぱりニナいいですね。マイノリティ(社会的少数者)って煙たがれるし集団生活の上で損するものじゃないですか。芸人ってマイノリティが良かったり、マイノリティをありのままにって言ってるけど、表では仮面を持ってて、本当の自分を出したくても出せないところがあるんですよね。でも、ニナはマイノリティでも自分の価値観を突き通すみたいな。

    松井:周りの人間のことを何とも思ってなくて冷たい性格な感じですね。

    佐藤:言いかたが悪いですけど、松井先生はニナと似てるんじゃないかなと、松井先生は敵キャラに自分を投影してるんじゃないんですか?

    松井:ニナだけじゃなくて、ぜんぶ僕の中にあるものです。ニナは嫌なヤツとしてキャラを作ってるので、読んだ人にはとうぜん嫌な奴と思うはずなんですが、僕の中にもあるものだから「嫌なヤツ」って言われるとちょっと複雑な感じになります(笑)でも、芸人さんもそうじゃないですか?どっか引いてる自分がいないとうまく立ち回れないし、天然じゃできないと思うんですよ。この人のどこが面白いんだろうって客観的に見れる人が笑わせれると思うんです。そういう部分を僕は漫画の中で『ニナ』だからと割り切って描けるんです。

    佐藤:僕ら芸人のネタもそうですけど良い意味で頭おかしい人の集まりで、ネタを作るのもそうなんです。楽しんでもらえるネタを考えて作るんですけど、その中にどんだけ自分が気持ち良くなれる要素も組み込めるかというのもあるんです。

    松井:ひとつやり方として、自分の一番言いたいことは本筋に置かないってのがありますよね。歌を聴いてても思うんですけど、1番から言いたいことを言っちゃうのは上手くないなと。本当に言いたいことは2番から。

    佐藤:そうそう、そうなんですよ!高橋優さんの『誰もいない台所』と言うのが秀逸でして、夢を追いかけてた男とずっと連れ添ってた女と別れてしまう話なんですけども、1番はもう言い訳の繰り返しなんですよ。2番ではじめて実はこういうことをずっと思ってたんだっていう本音を語るんです。夢を追いかけてた男全員に刺さって2番でみんな泣くんです。

    松井:日常生活のどこにでもある景色から入っていくみたいなのがいいんですよね。

    佐藤:あと思うんですけど、僕はガキの頃にやってた◯◯ゴッコの延長でネタ作ってるので、本人たちが楽しまないとはじまらないなと。やっぱり真剣にやるから面白いじゃないですか。僕ら30超えたおっさんがですよ、ウンコを踏んだネタを死ぬ気でやってるからこそ楽しさが伝わると思うんです。

    松井:どっか照れがあったらやらない方がいいですもんね。

    佐藤:昔からやってるプロデューサーさんが「いま芸人をどうやって売れさせるかがわからない」って言うんです。時代が変わりすぎて、みんながチャンネル持つ時代で『ニコニコ動画』『YouTube』『Ustream』とか、素人が売れる時代になってしまって、それに対してプロの芸人がどう対応できるかが勝負なんですけど。

    松井:昔って録画もできないし、「あの人がおもしろいよ」とか「あの歌手がいいよ」って聞いたら、その人が出る時間にテレビの前で待機しなきゃだったのに、今は「あれ面白いよ」って聞いたらネットですぐに見れちゃうんですよね。だから飽きられるのが早い。それってめちゃくちゃキツくないですか?

    佐藤:この人、本当に面白いなって思ってもらわないと残れないと思います。

    松井:ですね。やっぱりキャラクターが愛されるかどうかですよね。漫画も今は無料で読める時代で、でもその上で単行本を買ってくれるのってやっぱり「キャラクター」を好きになってもらう時だなと。改めてキャラクターが大事だなと思いました。

    佐藤:僕は「『スラムダンク』読んでないやつは人生損してる」と思ってるんですけど、これを言わせられてる時点で「井上雄彦」先生の勝ちですもんね。

    松井:それを言うなら、僕、もっと損してますよ(笑)スラムダンク終わったあとにも読みきり描いてたじゃないですか、その時に井上先生の所にヘルプでアシスタントに行かないかって打診があったんですけど、結局行かなくて…。

    佐藤:えっ、そんなチャンスをなぜ!。

    松井:確か当時仲間内でやってたバンドの練習がその日だからみたいな理由で(苦笑)なんちゅう理由で断っとんねんって(笑)一回でもその場の雰囲気を味わうだけでも全然違ったのに…後悔してます。

    佐藤:先生、良いエピソードを持ってるじゃないですか(笑)キャラクターで言うなら僕は『ハナカク』の中では「鉾田」さん推しです。主役も大事だと思うんですけど、脇役も大事だと思うんです。3巻の最後で鉾田さんが泣きながら良いセリフ言うじゃないですか、あれグッときました!

    松井:キャラに涙流させるのって難しいんです。絵なので涙描けばそれでいいんですけど、やっぱり本当にここで泣く!っていう時じゃないと描けないですね。

    佐藤:またスラムダンクの話になっちゃうんですけど、春子さんが小暮くんの3ポイントシュート決めた時に泣くのが本当さだと思うんですよね、いままで全部見てきてるから。

    松井:読者とリンクするんですよね。

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    佐藤:ぜんぜん話変わるんですけど、また格闘技ブームが来ると思うんです。

    松井:来ますか?

    佐藤:アイドルブームが終わって、今プロレスが来てるんですけど、(アイドル)→(プロレス)→(格闘技)→(お笑い)ってずーっとループしてるんですよ。

    松井:確かにそうかもですね。ジャンプも『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』みたいな王道が来た後、少し影のある『るろうに剣心』が始まって、また『ワンピース』とか王道が来て、そのあとまた影のある漫画とかってループしてますからね。

    佐藤:だから『ハナカク』くると思うんですよ。小説を読むことができなくて漫画をずっと読んできた僕が言うので間違いないです。

    松井:じゃあ、アニメ化したら声をお願いします(笑)

    佐藤:マジでやりたいです。お願いします!!これからも宣伝部長として頑張ります!今日は楽しかったです、ありがとうございました。

    松井:ありがとうございます。今日は楽しかったです。お互い頑張っていきましょう!これからもよろしくお願いします。

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    元アニメーターのおもしろ佐藤さんに「ハナカク」のイラストを描いていただく事に。

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    おもしろ佐藤さん執筆の主人公・安藤花夏。

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    [月刊コミックゼノン] 
    http://www.comic-zenon.jp

    漫画配信サービス『まんが王国』(http://k-manga.jp)にて「ハナカク」電子版も近日配信予定。

    ・松井勝法Twitter @MATSUKAKU
    ・御茶ノ水男子 おもしろ佐藤 @fugashiou

    [執筆・撮影/近藤哲也]

  • 劇場ポスター
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    映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    第六回目にご紹介する映画は『アメリカン・スナイパー』。本年度アカデミー賞6部門ノミネート(作品賞・主演男優賞含む)、あの『アバター』を超えて2015年最高のオープニング成績を記録、全米興行ランキング3週連続NO.1を獲得、クリント・イーストウッド監督作品史上最大ヒットにして最高傑作。伝説のスナイパーの半生を描く衝撃の実話の映画化作品です。

    日本公開2日間(2/21&2/22)では、3億3200万円を突破し週末興行ランキング1位獲得。注目の作品を観た巻来巧士の心ぴく度は?

    【STORY】
    舞台は9.11以降のイラク戦争。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊を果たしたクリスが命じられた任務は「どんなに過酷な状況でも仲間を必ず守ること」。その狙撃の精度で多くの仲間を救ったクリスは “レジェンド”の異名を轟かせるほどになる。しかし、彼の腕前は敵の知るところとなり、“悪魔”と恐れられ、その首には18万ドルの賞金を掛けられ、反乱兵たちの標的となってしまう。一方、クリスの無事を願い続ける家族。平穏な家族との生活と想像を絶する極限状況の戦地…過酷なイラク遠征は4回。愛する家族を国に残し、終わりのない戦争は幾度となく、彼を戦場に向かわせ、度重なる戦地への遠征は、クリスの心を序々に蝕んでいくのだった…。息つく暇もない極限の緊迫感で誰もの心を打ち抜く、伝説的スナイパーの半生を描いた衝撃の実話。世界を震わせる真実のドラマが幕を開ける――。

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    第6回「功士の心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム」は巨匠クリント・イーストウッド監督作『アメリカン・スナイパー』です!イラク戦争で160人の敵を撃ち殺したネイビー・シールズのスナイパー、クリス・カイルの自伝を基に作られた映画です。

    いきなりイラク人の母子をライフルで狙う場面から始まります。素晴らしく緊張感に満ちた演出で、瞬時に心をわし掴みにされました。そこから、なぜクリスがこの場にいる事になったのか?経緯が語られてゆきます。その後、再びイラクの場面に戻ってからの、怒濤の戦闘シーンの連続。作戦の合間に本土に帰還し、また戦場に舞い戻り、人間を狙撃し続けるカイル。この繰り返しの演出は、戦場を日常として捉えなければ生きてゆけない兵士の精神状態に、観客を共感させてゆきます。そして徐々に観客も、カイルが戦場にいる場面より、アメリカ本土に帰って、家族と共に休息している風景に不安を感じるようになってゆくのです。

    こんな演出なので、フラットな状態で本作品を鑑賞できれば大丈夫ですが、ある種の思い込みで見る観客(通常のミリタリーアクションでカタルシスを得たいと思った観客の方など・・)は、居心地が悪くなってゆくのは当然の事。つまり、イーストウッド監督は、PTSD(神経外傷後ストレス障害)の症例を丁寧に描く事によって、戦争の現実全体を描こうとしているのですから。

    戦争の本質、マッチョイズムと正義という御題目が平然と語られ始めた時に戦争(人殺し)が正当化(国家としても個人としても)されるのだという事を・・。その結果、精神が崩壊した兵士が帰還し、アメリカ本土そのものが不安定になるという事実をも突きつけます。しかし、そんな状態のアメリカだからこそ、現在、本作のような深く人間を見つめる素晴らしい映画が量産され始めているという皮肉な現実があります。まるで、ベトナム戦争の傷から、人の生き様を深く見つめるアメリカン・ニューシネマが生まれたように。そういう意味でも、この映画は、まさにアメリカン・ニューシネマの落とし子、いや、そのものだと言って過言ではありません。

    アメリカン・ニューシネマは、60~70年代、明らかにベトナム戦争の影響下で発生してきた、新しい映画の波でした。そこに、描かれたテーマは、戦い(戦争)に正義も悪もない、どんな状況であるにせよ他人の命を奪ったものは、それなりの代償を払う事になる。簡単にいえば全てそういう内容でした。どの作品も皆スッキリしません。それは当然です。アメリカン・ニューシネマは、カタルシスを描くよりも社会(問題)を描く事に力点を置いた作品群なのですから。その波を、幼いころから受け続けた私は、その目線の映画が大好物になりました。アクション映画は、ヒーロー物より社会派物(「ローリングサンダー」「ドッグソルジャー」etc.)やノワール物(「グッドフェローズ」「スカーフェイス」etc.)。そういう意味でも、この「アメリカン・スナイパー」は涎が出るほど好きな作品です。

    主人公カイルは、敵を殺すたびに少しずつ精神が崩壊していきます。それをなんとか止める為に罪悪感を消そうと、敵を「野蛮人」と決めつけます。決めつけないと彼らを殺している自分を正当化できないからです。それは、どの時代の戦争でも起こっていた真実です。敵を人と見ない事により、人を殺すことに専念することが出来る。それが、戦争の実態だとこの映画は語ります。そんなカイルの目線で描かれている為に、敵兵にはキャラクターがほとんど与えられていません。

    戦争PTSDのほとんどの患者は、戦場では正気に戻り、平和な故郷で錯乱する傾向にあります。戦場では味方、敵、そのどちらかにハッキリと色分けされた関係が、単純な世界なのですが、平和な故郷では、味方、敵と色分けできるのは少数で、ほとんどが赤の他人です。その全てが、油断していると後ろから刺してくるかもしれない敵に思えてくるのです。

    後半の戦場のシーン、西部劇「リオ・ブラボー」を想像させる要塞攻防戦の描写に我々は心躍ります。事実カイルの心は躍っているのです。大戦闘シーンの中、敵スナイパーとの一騎打ちは、まさにアクション映画の真骨頂です。その後、故郷に帰った後の主人公の色あせ具合の徹底した描写。監督が狙った落差演出は見事に成功しています!観客のため息、その虚無感こそ監督が観客に体験させたかった戦争そのものなのですから。もしも続編が作られることになればアメリカン・ニューシネマの名作(「ソルジャーボーイ」「ローリングサンダー」「タクシードライバー」etc.)のようなストーリーになるのは明らかです(決して、セガール映画のようにはなりません)。全てPISDを描いた映画です。

    主人公カイルが、いずれそれらの映画の主人公達と同じ運命を辿る事になるであろうと思えてしまう事が、この映画が、社会派戦争映画の傑作であるという事を示しています。撮影中に、ある悲劇が起こってしまい、脚本の修正が成されたという事もあり、ラストのシーンが長過ぎたという指摘は納得する所もあるのですが、それでも直、今見るべき映画だという事には変わりありません。なにせ、その悲劇そのものが戦争PTSDによるものですから・・。事実として、戦場を経験した兵士の4人に一人は、重度なPTSDを発症しているといわれています。軽度な患者はどれだけいるのか想像もつきません。それが戦争の現実なのです。この映画を見て、物足りなさを感じた人、つまらないと感じた人は、もう一度、どこに、なぜそう感じたか、再考してみてください。そこが戦争の恐ろしさ、虚しさ、そして楽しさ(愚かしさ)を描いている場面なのですから。

    ラストのエンドロールはその事を、観客に提示している素晴らしい演出です。皆さん是非ご覧ください。いまでこそ日本人全てが見るべき映画だと思います。超お薦めの、反戦映画の傑作です。

    『アメリカン・スナイパー』の心ぴく度、85点です!

    『アメリカン・スナイパー』
    出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラージェイク・マクドーマン、ルーク・グライムス、ナヴィド・ネガーバン、キーア・オドネル
    監督:クリント・イーストウッド  脚本:ジェイソン・ホール
    プロデューサー:クリント・イーストウッド、ロバート・ロレンツ、アンドリュー・ラザー、ブラッドリー・クーパー、ピーター・モーガン
    原作:「ネイビー・シールズ 最強の狙撃手」クリス・カイル、スコット・マクイーウェン、ジム・デフェリス著(原書房刊)
    2014年 アメリカ映画/2015年 日本公開作品/原題:AMERICAN SNIPER/映倫区分:R15+/配給:ワーナー・ブラザース映画
    © 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

    『アメリカン・スナイパー』大ヒット上映中!
    オフィシャルサイト: http://www.americansniper.jp

    ゾルゲ市蔵-プロフィール画像

    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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  • Crossroad 画像[1]

    手塚るみ子さんをホストに迎え、毎回ゲストから自分の分岐点となった局面を伺い、創作の秘密を掘り下げていく対談企画・Crossroad。

    一回目のゲストは『YAWARA!』、『パイナップルARMY』(原作・工藤かずや)、『MASTERキートン』(脚本・勝鹿北星 長崎尚志)、『20世紀少年』、『BILLY BAT』(ストーリー共同制作・長崎尚志)など数々の代表作を持つ漫画家、浦沢直樹さん。

    1999年に『MONSTER』、2005年に『PLUTO』(原作・手塚治虫 監修・手塚眞 長崎尚志プロデュース) で過去二度に渡って手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。手塚るみ子さんのリクエストで今回の対談が実現しました。

    幼年期に手塚治虫から多大な影響を受けたという浦沢さん。多数の作品を生み出し続けている創作現場へとお話を伺うために訪問しました。

    仕事場に一歩足を踏み入れると、壁一面に配された本棚に目を奪われます。所狭しと並んだ書籍の中には手塚漫画が置かれた一角も。漫画のページを捲りながら二人の対談が始りました。

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    -漫画家のライフスタイル-

    手塚:すごい蔵書ですね。私は雑誌掲載時には父の作品をあまり読んでなくて、単行本になってから読んでました。

    浦沢:僕らの時代、単行本は主流じゃなかったんですよね。

    手塚:この間、手塚治虫の元チーフアシスタントの福元一義さんがテレビに出られていまして、それが『1位じゃなくっていいじゃない』というテレビ東京の番組だったんですけど、福元さんも漫画家を目指して、一度は漫画家になったのに、最終的にアシスタントで終えてしまった時に「自分の作品よりも、手塚先生の作品が1つでも多く世に出たほうが良いから」ということを言ってくださったんですよ。

    浦沢:漫画家になるのとアシスタントになるというのとは、別の資質なんですよね。さらに売れっ子漫画家になるというのはまた別で、全部資質が違うんですよ。だから、例えばテレビ界でいえば、AD(アシスタントディレクター)という役割がその人の資質にとっても合う人がいる。うまい食べ物を買ってきてというと、本当にうまい食べ物を買ってきてくれる。それとは別に社長の資質がある人もいる。位の上下ではなくて、資質としてその仕事にその人があっているのかというものがあって、社長の資質がある人がADをやったらきっと下手だと思うんですよ。社長として活躍出来たとしても、その人はADの役割には向いてないんですよ。

    手塚:そうかもしれないですね。

    浦沢:漫画家の資質の人、アシスタントの資質の人というものはありますから、そこの仕事にぴったりはまるかということなんですね。手塚先生の漫画を支えた人とか、黒澤明の美術を支えた人とか、たくさんそういう人がいるじゃないですか、そういう人がいたからこそ作品は出来あがるので。

    手塚:そうですね。うちの父は誰のフォローも出来ないタイプだと思いますね。周りが一生懸命に支えて、ひとりの人間としてやっていけたんだろうなと思います。だから、福元さんがいなかったら、作品の量産するペースとかが違っていたんだと思います。あの方がいたからこそ、これだけのタイトルが残せたんだと思います。そのなかで、3タイトルくらい私のわがままで父の時間を取ってしまって描けなかったものもあるんですけど(笑)。

    浦沢:僕はデビューの頃からずっと仕事の受注やギャラ交渉も全部自分でやっています。周囲から驚かれるのですが、僕はなんとなくやってきちゃった。

    手塚:最近は漫画家先生もマネージャーをつけてることが多いですよね。あと意外だったのは、浦沢先生はご家庭を仕事よりも優先されているんですよね。

    浦沢:うちの家庭は「漫画は二番目」という決まりがあって、漫画が生活の一番じゃなくて、家庭が一番です。仕事中でもインターホンが鳴って「ご飯よ」と呼ばれると、どんなに乗って仕事をしていても筆をおかないといけないんですよ。それは30年間の決まりなんです。「まずご飯を作った人のことを考える」と妻が言うんですよ。なるほど言うとおりだなと。

    手塚:それはご結婚されて、生活の中で作っていかれたんですか。

    浦沢:妻は僕が漫画家になる前の学生時代から知っているので「仕事でヒーヒ―言っているのは、あなたらしくない」と(笑)。健康管理は完全に妻に任せています。

    手塚:そうですね。仕事をこなすためにも健康管理も、時間の管理も睡眠もというのは、奥様が一番気遣う役割になるんでしょう。

    浦沢:週刊連載の作業は短距離走で駆け抜けるかんじだと思います。やっぱりある量が出てこないとムーブメントは作れない産業なので、多少無理をしてでも量を作らないといけないんでしょうけどね。

    手塚:ご家庭のことを優先した場合、睡眠や仕事などライフスタイルはどう配分されているんですか?

    浦沢:この十年はかなり仕事を絞ってますよ。身体を壊してドクターストップかかった時もあったので。今は淡々と月に24ページを二話分で48ページは描きますけど、それ以上はなるべく描かないようにしています。

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    手塚:それ以外には、イベントや取材といったこともされてますよね。

    浦沢:『浦沢直樹の漫勉』というTV番組をNHKで企画したり、音楽を作ったり漫画以外の動きがとれる時間が多少出来ますね。

    手塚:プロデューサーも出来る方だとみなさんに知られているんですね。『漫勉』は次の放送もあるんですか?

    浦沢:そうですね。一応そのつもりです。『漫勉』企画の発端は、一般的に漫画制作の過程が知られていなくて、毎回外に出る度に「漫画家とは」から説明する状況がいつまで続くんだろうという事を漫画家さん達と仲間内で話題にしていたんですよ。大友克洋さんも「なんとかアーカイブしないといけないんじゃないの?」 と言っていたし、始まりはそんなかんじですね。

    手塚:漫画家の先生方みなさんが思っていらっしゃたんですね。私も父親が漫画家でありながら、漫画家の仕事場のことを知らなかったので、どうやって漫画が出来あがってくるのだろうと興味を持って観ていました。

    浦沢:毎週簡単に印刷物で手元に届いてしまうと、読者はその価値がわからなくなるんじゃないかと思ってました。漫画家の皆さんが超絶技法で毎週地獄のようなスケジュールでみなさんにお届けしているというのは一般の方は想像する事すら出来ないんですよね。そこに深い断絶の溝が出来てしまっているから、まずそこは埋めないといけないと思いました。一筆一筆描いているんだというのを見せたいと思って番組をやったら僕らが思っている以上の反応があったんです。そこそこ知らないだろうなと思っていたら、番組が終わった後の何万という反響のツイートがあってみんな吃驚したといっていました。「ほらぁ、やっぱりみんな知らないんだよ」と(笑)。

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    手塚:私は父親が漫画家でも分からないことありましたからね。

    浦沢:超絶技法と一般の生活に差がありすぎるんですよ。想像を絶し過ぎてしまって。ひとつの絵を描くのに誰手も一般の人はマゴマゴしてしまっているのに、あっという間にドラマがついて演技がついてきれいな絵がどんどん出てくるんですよ。そのあまりの違いを想像出来ないんですよね。

    手塚:描くペースというのは技術としてまず分からないですね。すでに描かれた原稿は、家の中で転がっていたので、見ていたんですけれど、実際に描いてる速さを実感することはなかったですね。


    -浦沢作品の創作秘話-

    -仕事机には作業中の貴重な原稿やネームが・・-

    -仕事机には作業中の貴重な原稿やネームが・・-

    編集部: 浦沢さんのネームは凄く細かく描かれているんですね。通常のネームは丸チョンで描いてるイメージです。

    浦沢:デッサンも構図も演技も出来あがっているでしょう。こういう技術があるので大量に早いスピードでものが出せるんです。頭に構図が浮かんだらすぐに頭に浮かんだものを一瞬で描く。えーと・・・、とならないんですよ。これはネームなので、完全に白い紙にドラマと構図を作っていく段階ですが、凄いスピードで描くんです。

    編集部: コマ割りなども直さないのでしょうか?

    浦沢:凄いスピードで描いたネームをゆっくりと原稿用紙に描き直す段になって、これ逆かな、とか描き直すと何かおかしくなってしまうんです。だから逆にネームの通りの構図にするために設定とか変えてしまうこともあります。読みやすいとか、ちゃんと感情が流れているというのは、熟考しないで勘だけで描いているからでしょうね。

    手塚:それは長年培ってきたなかで、出来あがっていったんですか。

    浦沢:5才頃から描いていた経験ですね。1965年頃『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」を読んでいたあの頃から、ずっと培って来たので。頭の中にすでに漫画があって、それをかき集めて作るんです。よく将棋に例えるんですが何手先みたいにと考えるんです。

    手塚:そういういった時に食事で呼ばれてしまったらどうするんですか?

    浦沢:それはもちろん、食事ですよ(笑)。一度止めてもう一回見ると別のアイディアだったりここにミスがあるとか気づくんですよ。こんなにスピードが速いと、逆に流れていってしまうので、立ち止まる方が良い場合もあります。僕は5ページざっと描いたら、すっとやめて、また見直して描いたりしますね。ここはリズムおかしいなと思ったらここで一コマ足すとか。

    手塚:ネームの前にプロットなど書かれた上でネームにおこすんでしょうか?

    浦沢:プロットはただのメモ書きですね。打ち合わせの時にワーッ!と書いたような文字を見ると、何かいてあるか分からないんですけどね。なんだっけこれみたいな(笑)

    長崎尚志さんとの打ち合わせの時は、今の『BILLY BAT』の場合だと一話分24ページなんですけど、こんな内容とか話をしながら頭の中でページ配分をしていて「今18ページくらいだから、あとワンエピソード入りますよ」という感じです。

    手塚:思ったよりページ数が余ってしまった場合は、例えば絵を大きくしたりして全体的にページ調整をされているんですか?

    浦沢:そういう事はあまりないですね。僕は絵を大きくするとかあんまりしないんです。そういう場合は他のエピソードを入れてますね。コマの大きさというのは、演出なので、ページ数が余ったからといって変えていたら演出ではなくなってしまいますので。あとは、長くなってしまった時はネームをハサミで切るんですよ。それをテープで止めて、繋ぎ合わせるんですね。

    手塚:コマや絵の大きさによって、読むテンポが変わってしまいますよね。

    浦沢: 僕は見開きはほぼ使わないですね。見開きはその作品の最大のクライマックスなので、軽く扱ってしまうと、見開きのデフレが始まってしまうんですよ。見開きが最大の画面なので、ここぞという時のために取っておくんですね。

    手塚:原稿はGペンで描かれているんでしょうか?

    浦沢:最近は日本字ペンなんですよ。カブラペンよりも細い線が出るかな。カブラペンとGペンの間なんですよね。『MONSTER』は丸ペン一本を使っていたんですけど、丸ペンは年齢が若くないと使いこなせないかも。大友さんも『AKIRA』の時ずっと丸ペンで、古くなった順に1号2号3号とつけて、線の太さを変えていたみたいですよ。

    手塚:年取って使えなくなるというのは、自分が変わるんですか?

    浦沢:変わるんですね。丸ペンはパワーを必要とする感じがします。細い線から、太い線まで緩急つけるのに、相当体力を使うんですよ。それで過去に身体を壊したので、それから丸ペンを使うのをやめたんですよ。1日10数時間描いていて、鎖骨から肋骨にかけて相当固まってしまって、左肩が脱臼みたいな状態になっちゃったんですね。鎖骨や肋骨は柔軟性が大事なので、それが硬直してガッチガチになっているところに無理して描いていたら、朝起きた時に左肩が付いてこないんですよ。悶絶して、ちょっと痛みで描けませんと編集部に伝えたら「わかりました。今の原稿仕上げたら倒れてください」と言われました(笑)。

    手塚:残酷ですね・・。

    浦沢:結局病院で痛み止め打って原稿を仕上げました。手塚先生に比べたら半分にも満たないんですが、月6回〆切りというのを20年間こなして、月130ページくらい描いていたんですよ。それでいつか身体を壊すなと思っていたんですが・・。でもその程度のことで自分に身体の危険信号が来たんだからラッキーだなと思いました。とにかく仕事すると結局身体に歪みが出るので、週一回トレーナーに診てもらっています。

    昔の手塚先生のドキュメンタリー映像を見ると、全然前のめりにならない姿勢で描いていますよね。

    手塚:TVの取材だとカッコつけるから、普段からそうだったのか分からないですけど、寝床でねっころがって書いている時は、かなり目を絵に近づけて描いていましたね。

    => -TV『漫勉』制作のこだわり-

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    映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    第五回目にご紹介する映画は『フォックスキャッチャー』。監督は、これまで『カポーティ』(05)『マネーボール』(11)で実在の人物と事件を丹念に描いてきたベネット・ミラー。2014 年カンヌ国際映画祭で見事監督賞を受賞し、先日発表されたアカデミー賞最大の前哨戦と言われる第72回ゴールデン・グローブ賞においては作品・主演男優・助演男優の3部門にノミネート。本作同様に実話を基にした作品がひしめく中、ついに発表された第87回アカデミー賞では主要4部門(監督、主演男優、助演男優、脚本)を含む全5部門にノミネートされました。世界中が注目する第87回アカデミー賞授賞式は日本時間 2 月 23 日(月)米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催されます。
    アカデミー賞も注目の作品を観た巻来巧士の心ぴく度は?

    【STORY】
    レスリングのオリンピック金メダリストでありながら経済的に苦しい生活を送るマーク。ある日、デュポン財閥御曹司ジョン・デュポンからソウル・オリンピック金メダル獲得を目指したレスリングチーム“フォックスキャッチャー”の結成に誘われる。名声、孤独、隠された欠乏感を埋め合うように惹き付け合うマークとデュポンだったが2人関係は徐々にその風向きを変えていく。さらにマークの兄、金メダリストのデイヴがチームに参加することで三者は誰もが予測しなかった結末へと駆り立てられていく。

    心ぴく 219

    第5回「心ぴく(心臓ぴくぴく)映画コラム」は『フォックスキャッチャー』。
    1996年、アメリカ3大財閥の1つと言われるデュポン家の御曹司が、後援していたレスリングの金メダリストを射殺したという実話の映画化です。

    見ている間、終始襲ってくる居心地の悪さを感じていました。それは、普遍的な男の弱さを、鋭い演出で突きつけられてくる居心地の悪さでした。筋肉で武装しているレスリング五輪金メダリストの兄弟。弟マークは、極貧だった幼少期の生活に戻るかもしれないという不安と闘いながら、無心で練習を続けています。平常心では打ち消せない、金メダルを取るという偉業でしか消す事が出来ない、ある意味底なしの弱さを持っているからともいえます。その、必死に打ち込んでいる姿、つまり、もがく苦しむ様がリアルに映し出されます。その弱さに共感するために、居心地が悪くなるのです。

    兄、デイブにその弱さは一見、見えません。しかし家族に良い生活を与えてやる為に、大富豪デュポン家専属のレスリングコーチを引き受け、その後すぐにデュポンから不穏な空気を感じ取っても、資金面などの豊富なその場所から動こうとしない、ある意味、犬と化した弱さが見て取れます。そして、デュポン自身も弱さが服を着て歩いているような存在です。ただ、母に認めてもらいたいだけの幼児みたいに、レスリング施設を作り上げ、金メダリスト選手を金で掻き集め、一定の成果を出すものの、振り向いてくれない母を見て、絶望してしまうのです。屋敷の中や周にいる屈強なボディ―ガードや警官達も、この脆弱な大富豪に尻尾を振る犬のように、弱く頼りない。そんな男の弱さのオンパレードの居心地の悪さは、相当なものがありました。

    この主要三人の生き方、考え方、そして弱さに共感できない男はいないはずですから、居心地が悪く、終始緊張感に満ちているのです。そこまで男の本質を描いた映画なので、見たくない自分を見せられて拒否反応を持ち、まったく受け入れられない人がいるかもしれません。近年、我が国の映画も言論も、辛い真実と向き合うよりも自分に都合が良い妄想に逃げる方が楽、という事を通り越して正しい、というような文化になっているからです。そのような観客が増えた今、素の自分と向き合うようなこの映画は鬼門かもしれません。だからこそ、是非見てください、人間の多面性を理解し、愚かな大きな声に惑わされない為にも・・

    「カポーティ」「マネーボール」という硬質な傑作を連発しているベネット・ミラー監督だけに、人間の光と闇を描いた期待に違わぬ傑作になっていました。音楽を極力排除した静質な画面ゆえに、俳優達の眉の動き1つまでも、ダイレクトにこちらに伝わってくるような、緊張感に満ちた空気が全体を支配しています。

    メダリスト兄弟を演じるチャニング・テイタムとマーク・ラファロが見事です。弟役のチャニング・テイタムは、まるで求道者のようにレスリングに打ち込む姿を、ほとんどの場面を無口に、そして不満そうに演じた表情の演技は素晴らしいです。兄役のラファロも、温かく弟を支えようとする愛情にあふれた演技が絶品でした。兄弟の練習風景も、息ずかいとマットの擦れる音、二人の表情に焦点が合わされ、誤魔化す事が出来ない演技合戦を見せられ、幸福な緊張感に包まれます。そして、デュポン役のスティーブ・カレル。まさか、あのコメディー映画の傑作「40歳の童貞男」の主人公が、特殊メイクでまったく別の個性となって演じているとは!鑑賞している間、まったく気付きませんでした。登場した瞬間、孤独に満ちた大富豪の不吉なオーラが画面全体を支配する名演は迫力に満ちたものでした。

    男ばかりの中で、もっとも暗いオーラを発散しているのがデュポンの母親を演じているヴァネッサ・レッドグレイヴです。絶えず息子を全否定している老婆の演技は、本当に恐ろしいものがありました。この映画の人間関係は下手なホラー映画より怖い!ラストの、突然の悲劇のシーンに至るまでの静かな緊張感とその後の虚無感。劇的に盛り上げないだけに、現実と地続きの怖さが溢れています。

    この数年、邦画は犯罪を基にした実話の映画化が全くありません。当然、こんな硬質で素晴らしい演出の映画はありません。そんな硬質な映画をまったく見た事がなく、過剰な演出(テレビドラマのような)の映画を見慣れている人たちには、かなり違和感がある映画になっているかもしれませんが、これが世界レベルの演出だと受け入れて貰えれば楽しめると思います。そんな、実話映画の傑作です。お薦めです。

    『フォックスキヤッチャ―』の心ぴく度90点です。



    『フォックスキャッチャー』
    監督: ベネット・ミラー 『マネーボール』、『カポーティ』
    脚本:E・マックス・フライ、ダン・ファターマン
    出演:スティーヴ・カレル『リトル・ミス・サンシャイン』、チャニング・テイタム『マジック・マイク』、マーク・ラファロ『アベンジャーズ』、シエナ・ミラー『ファクトリー・ガール』
    2014年/アメリカ/135分/カラー/英語/アメリカン・ビスタ/5.1ch PG-12
    提供:KADOKAWA、ロングライド 配給:ロングライド 宣伝:クラシック
    © MMXIV FAIR HILL LLC-ALL RIGHTS RESERVED.
    HP:www.foxcatcher-movie.jp

    2015年2月14日より、新宿ピカデリーほか全国公開中

    ※巻来巧士『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』ゲストトーク開催、渋谷アップリンク http://manga-style.jp/news/detail/2015021901

    ゾルゲ市蔵-プロフィール画像

    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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    ※『功士の心ぴく映画コラム』では皆様からの巻来先生に観て欲しい映画のリクエストをお問い合わせフォームとTWITTERから受付中。TWITTERでは #心ぴく をつけてつぶやいて下さい。

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    メイン

    映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    連載四回目は『メカニック』『エクスペンダブルズ2』をメガヒットに導いたアクションスター、ジェイソン・ステイサムと、サイモン・ウェスト監督コンビの最新作『WILD CARD/ワイルドカード』。ジョーカー(切り札)が切られた瞬間から息もつかせぬスリリングな展開で、驚愕のクライマックスまでノンストップで突っ走るハイグレード・クライムアクション。話題の最新映画を観た巻来功士の心ぴく度は?

    【ストーリー】 凄腕用心棒VSラスベガス最凶マフィア
    ラスベガスの裏社会で用心棒を生業とする元エリート兵士のニック(ジェイソン・ステイサム)。ある日、何者かに酷い暴行を受け瀕死の重傷を負った元恋人から、正体を突き止めて復讐してほしいとの依頼が舞い込む。ラスベガスの表も裏社会も熟知しているニックは、すぐさま犯人を見つけ出し、瞬く間に依頼を完遂させる。しかし、犯人の背後には、強大な権力でラスベガスを掌握する凶悪マフィアの存在が…窮地に追い込まれたニックの命を懸けた戦いが今始まる―!

    ワイルドカード
    第4回「功士の心ぴく(心臓ぴくぴく)映画コラム」は誰が何と言おうと、紛れもないハードボイルド映画の傑作『WILD CARD/ワイルドカード』です! ジェイソン・ステイサム主演、サイモン・ウェスト監督が。とうとう自己ベストの映画を作り上げてしましました。 上映時間90分!まるで、上質の短編ハードボイルド小説を読み終えたような至福の時間を味わえる作品です。

    主人公は元軍人で、ラスベガスの用心棒ニック。快楽都市ラスベガスとステイサムの相性が抜群です。普通にマフィアが生活し、コールガールが跋扈してもまったく違和感が無い街。そこで、些細なことからトラブルに巻き込まれる用心棒ニック、まさにアメリカンハードボイルドの定石を踏んだ見事な展開です。 私が苦手な、アクションシーンばかりの映画「トランスポ~」のような漫画的展開はほとんどなく、心に傷を持つ凄腕の主人公が、厄介事に巻き込まれ、自分の将来に悶々としながら、ギャンブルにのめり込み、マフィアと一戦交える様はまさに、男!どうしようもない男のサガそのものを描いて共感必死でした。 私が大好きなノワール(暗黒街映画、ギャング映画)感も、全編を覆っていて、出てくる女性が綺麗でタフでカッコいい、女性にも必見の一本だと思います。
     
    なぜ、これまでアクション映画を作り続けてきたステイサム、ウェストコンビが本格的ハードボイルド映画を完成する事が出来たのかと不思議でしたが、脚本家の名前を見て納得しました。名作「明日に向かって撃て」「大統領の陰謀」の脚本家ウィリアム・ゴールドマンの久々の新作だったのです。 だから、というか余談ですが、私が大好きなハードボイルド映画「800万の死にざま」の主人公マット・スカダーが、アルコール依存症という人間臭い弱点を持っていて、それが物語の支柱に成り、より深い人間ドラマを形成していたように、本作のステイサムにも~依存症というものが取り憑き、それに悩むという深い人間性をも描く事に成功していて、私の心(心ぴく)にまで直撃したのだと思います。

    そして、まるで天使(?)のように主人公の周りを浮遊するような若者の存在感、それが元でのラストの凄絶でリアルな殺し合い!素晴らしい演出です。何から何まで見事です。上映館は少ないですが、多くの人達に観て貰いたい、近年にないハードボイルド映画の傑作です。
     
    私の大好きなステイサム映画「ロックストック~」「バンクジョブ」「アドレナリン1・2」の中でもトップクラスで大好きな映画になりました。いわゆるアクション俳優ステイサムのファンよりも、本格ハードボイルドファン。ノワールファン。女性ファンに観て貰いたい傑作です。この主人公ニックが活躍する続編を絶対見たい!脚本はもちろんウィリアム・ゴールドマンで!そう願った超お薦め作です。是非ご覧ください!!

     『ワイルドカード』の心ぴく度90点です!いや、私的には、もっと高いかもしれません!

    出演:ジェイソン・ステイサム、ソフィア・ベルガラ、スタンリー・トゥッチ

    監督:サイモン・ウエスト

    原作・脚本:ウィリアム・ゴールドマン

    アクション監督:コリー・ユン

    プロデューサー:スティーヴ・チャスマン

    PG12
    2014年/アメリカ映画/92分/シネマスコープ/5.1ch/
    原題:WILD CARD/配給:クロックワークス 
    © 2014 SJ Heat Holdings, LLC All Rights Reserved  

    公式サイト wildcard-movie.com

    2015年1月31日(土)新宿バルト9 ほか全国ロードショー!

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    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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    映画好きで知られる漫画家・巻来功士。
    巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士の心ぴく映画コラム』です。

    連載第三回目の作品は、「チャーリーとチョコレート工場」、「アリス・イン・ワンダーランド」などファンタジーの傑作を世に送り出し、大ヒットを成し遂げてきたティム・バートン監督の最新作「ビックアイズ」。世界的ヒットメーカーにして不世出のアーティスト、ティム・バートン監督待望の最新作は、アート界を揺るがしたゴースト・ペインターの実話!絵画や造形などアートでも独特の才能を発揮し、唯一無二の世界観でファンを魅了し続けるバートン監督、待望の最新作を観た巻来功士の心ぴく度は?

    【ストーリー】
    内気で口下手なマーガレット・キーン。彼女の描く悲しげな大きな瞳の子供たちの絵は、1960年代に世界中で大ブームを巻き起こした。──ただし、夫のウォルターの絵として──
    富と名声。両方を手にしたふたり。しかし、マーガレットは真実を公表し闘うと決心する。なぜ彼女は、夫の言いなりになったのか?なぜ彼女は、全てを捨てると決めたのか?アート界を揺るがす大スキャンダルの行方は──?

    ビックアイズ

    「第3回 功士の心ぴく(心臓ぴくぴく)映画コラム」は、ティム・バートン監督最新作『ビッグ・アイズ』です。
    なんと、ティム・バートン映画には珍しい実録物です。 しかし、過去に一本だけある実録物「エド・ウッド」(主演ジョニー・デップ)を成功させている監督だけに、その手腕は確かで、とても楽しめました。 主演の2人、エイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツが見事です。 とくに、夫ウォルター役のクリストフ・ヴァルツ(「イングロリアス・バスターズ」「おとなのけんか」)の演技は相変わらず素晴らしく、登場した瞬間に物語全てをさらってゆくほど。

    ストーリーは、50年代~60年代米ポップカルチャーの世界のみならず、全世界で大ブレイクした画家のウォルター・キーン。しかし、その絵全てを描いていたのは、妻のマーガレット・キーンだった。という衝撃の事実を描いたものです。1950年代のアメリカ女性が、レディー・ファーストとうい美辞麗句の元、良い妻、良い母として家庭に縛り付けられていた状況がよくわかる映画にもなっていて、大変興味深く見る事が出来ました。 物語は、そこからの解放を謳っていてとても感動的です。
    ただ1つ欲を言わせてもらえば、夫ウォルターにもう少し人間性を与えて欲しかった。 なぜ、饒舌で、魅力的で、ズル賢い、こんな男が生まれてしまったのか?その内面に、もう少し突っ込んだら、法廷シーンの素晴らしい演技が、ただのギャグとしてしか機能しないという残念なことにはならなかったと思うのですが・・。

    ティム・バートンの初期~中期の名作「エド・ウッド」は元より「ビートル・ジュース」「シザーハンズ」「バットマン」「バットマン リターンズ」「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」etc.は全て、異端の哀しみというものがテーマになっていました。だから、心に深く残ったのだと思います。しかし、本作はどうかといえば、その部分が多少弱いと感じました。やはり、より深い映画にする為には夫のウォルターの内面描写が必要不可欠だったと思います。そうすれば、現代版「アマデウス」(天才VS凡人を描いた名作)の域に到達する事ができたのではないかと、と勝手に夢想してしまうのですが・・・。 しかし、とても面白い映画には間違いありません。106分間ダレルことなく、楽しめました。女性の方々や絵画に興味がある人、それに面白い映画を見たいと思っている全ての人々にお薦めの映画です。  

    「ビッグ・アイズ」の心ぴく度、80です。

    監督:ティム・バートン
    音楽:ダニー・エルフマン 『チャーリーとチョコレート工場』、『アリス・イン・ワンダーランド』
    美術:リック・ハインリクス『フランケン・ウィニー』、『ダーク・シャドウ』
    衣裳:コリーン・アトウッド『アリス・イン・ワンダーランド』、『シザー・ハンズ』
    出演:マーガレット:エイミー・アダムス『アメリカン・ハッスル』、『ザ・マスター』 ウォルター:クリフトフ・ヴァルツ『ジャンゴ 繋がれざる者』、『イングロリアス・バスターズ』

    オフィシャルサイト:http://bigeyes.gaga.ne.jp

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    【巻来功士]

    1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させて現在鋭意執筆中。


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